「酒場で情報収集、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女。パパは人間の勇者。だからわたしはねこみみ勇者なのです。
この間は、魔王を探しにいきましたが結局見つかりませんでした。
そこでぴきーんとひらめいたのです。じょうほうを手に入れるなら、酒場に行くのです。
物語ではたいがいそういうことになっています。それがせおりーというやつなのです。にぅ。
酒場のドアを開け、「こんにちわです!」と元気よく声を上げたら、がらんとしたホールの中、カウンターの中にいたおじさんがお皿を洗いながら、困った顔で「どしたんだい、お嬢ちゃん」といいました。
「魔王を探してるのです。おじちゃんしらないです?」
と聞いたら、困った顔をさらにくしゃりとしかませて、おじちゃんが肩をすくめました。そうして、カウンターに座っていたもうひとりのおじちゃんの方を見ました。
真昼間っからカウンターで飲んだくれているおじちゃん。かなりダメ人間です。にぅ。
「おい、なんだいちびねこさん、勇者ごっこかぁ」
ダメおじちゃんがお酒臭い息を吐いて、フォークに刺したソーセージにかぶりつきながら言いました。
「わたしはねこみみ勇者なのです!」
って胸を張ったら、ダメおじちゃんが肩をゆすって大笑いです。
「ガハハ! じゃあ、おじちゃんが魔王をやってやろうかなぁ」
言いながら、ファークに刺したソーセージをわたしの目の前に突きつけてきました。
「勇者よー! 魔王の軍門にくだれば、このソーセージをくれてやろう、ってなぁ! ハ、ハ!」
すごくおいしそうなソーセージでした。
「むう。バカにしちゃいけないのです。もぐもぐ。悪い魔王の言いなりにはならないのです。ごっくん」
伝説の木の棒を抜いてダメおじちゃんに突きつけると。
「……いや、お前食ったろ? 魔王の誘いに乗るとか、お前さん勇者失格なー?」
真顔で言われてしまいました。
ソーセージがおいしそすぎるのがいけないのです。わたしは悪くありません。
……ソーセージおいしかったです。ご馳走様でした、にぅにぅ。