「魔王討伐、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女。パパは人間の勇者。だからわたしはねこみみ勇者。
勇者たるもの、魔王の一匹や二匹退治して見せなくてはなりません。
必殺技もいくつか身に着けたことですし、そろそろ冒険のたびにでるのも悪くないかとちょっと思いました。天気もいいですし、魔王退治日和というやつなのです。にぅ。
「魔王倒しにいってくるのです!」とママに言ったら、「晩ご飯までには帰ってくるにゃー」と言われてしまいました。
大冒険のつもりでしたが、日帰りになりそうです。
魔王はこの近所に居るでしょうか。以前ママたちが倒したから今は居ないという話でしたが、ゴキブリ並みにしぶといらしいので、このあたりにもまだニ、三匹いるかもしれません。
まあ、なにはともあれ。とりあえず探してみることにしましょう。
弟魔女をお供に連れて行こうと思ったら、残念ながらどこかに遊びに出かけていました。
姉の役に立たないとは、使えない弟です。ですが困りました。これでは”にゃばん・すとらっしゅ”が使えません。
必殺技とかいいつつお前はただ棒を振りまわしてるだけじゃねーか、と、どこかからツッこまれた気がしますが無視します。無視ったら無視なのです。にぅ。
しょうがないので、ねこみみの間に妖精さんを乗せてお庭に出ました。いざとなったら妖精さんをぶつけて逃げましょう。
――さて、魔王はどこにいるのでしょう。
むむ。なんだか、この大きな石の下とかが怪しい気がします。
伝説の木の棒を石と地面の間に差し込んで、えいって力をこめたらごろんって大きな石が転がりました。
しゃがみこんでのぞきこむと、石の下にはゲジゲジしたのや虫がいっぱいです。わしゃわしゃ動いています。
……あ、大きなムカデがいました。
噛まれるとあぶないので、うらみはないですがわたしの経験値になってもらいましょう。
わしゃわしゃ、っとわたしの足に忍び寄ってきた大きなムカデを、えい、と伝説の木の棒でぷちってしました。
(うぎゃわー、まさか、この魔王が復活半ばにしてこんなところでやられるとわー)
お墓はちゃんと作ってあげますので、成仏してください。にぅ。
……今、変な声が聞こえた気がしましたが、まぁ、たぶん気のせいです。
結局その後、橋の下や崩れかけた廃墟などを見て回りましたが、残念ながら(あるいは幸いなことに?)魔王は見つかりませんでした。意外とレアなようです。
まあ、平和なのはよいことです。
また今度、お弁当でも持って、弟魔女と聖女ちゃんといっしょに魔王を探しに行くことしましょう。にぅにぅ。
切り良く十話目でいったん一区切りデス。だいたいネタが尽きましたので、以降は当初の宣言どおり不定期になります。月に1、2話書けるといいな……くらいで。