手紙と婚約
茶番を終えて人が少ない喫茶スペースでのんびりしていると一人の女性が良いですか?と話しかけてきた
同性の私でも可愛らしいと思える彼女のために行った茶番である。さっさと婚約発表でもしたら良いのにと茶番を起こした婚約者のヘタレ具合を思う
「どうやって彼と交流したのですか?」不安そうにしているのをみてああ。これが守ってやりたいと思える態度なのか。勉強になるが、私には到底無理だなと思いつつ長くなりますがと昔話をさせてもらった
生まれ落ちたと同時に相性など諸々を考慮して婚約者候補を選出するシステムあり近場に婚約者候補がいる人たちは顔合わせをして好感度をあげるためや人と成りを知るために交流をお深めてることが一般的である
私の周囲でも兄妹・友人がそういう風に顔合わせして仲良くなっている人間をみて自分だけそういうことをしたことがないと気がついて両親にいってみたら微妙な顔をされた。
遠方にいる人なんだろうと思って役場で婚約者候補を教えてくれるところで聞いてみると
「お一人いますが、そのかたは結構優秀な方みたいですね。貴女以外にもあまたの婚約者候補がいますから」と言われた。有能な男性ってどんな風なのかしら?という好奇心と兄妹・友人たちのようにしてみたいという憧れを原動力に辺境の地と言われている地元から王都に住んでいるという一人だけの婚約者候補に手紙を書くことにした
行動をすることによって婚約が増えたり減ったりするのは常識である。そう言うことを繰り返し成人になったときに残った婚約者候補の中から好感度が高い人間と正式に婚約して結婚するのである。私が手紙を書いたことで彼との蜘蛛の糸のような細い。絹糸の様に弱い縁がプチっと切れてなくなるかも知れないという可能性もあったにはあった
そう言った後に一呼吸を置いてお茶を飲んでいると驚いた顔をししながらも
「怖くはなかったのですか?」と聞かれた
「怖いとかそんな感情なかったな。興味本位というかなんというか。突発的になにかをし始めるのは昔からだし。そのときは後先考えないのが私だから。で、始めましての人との手紙の書き方という本を読んでから自己紹介を書いた手紙を送ったんだよ。まあ、数多いる婚約者候補のなかで手紙を書いている人もいるだろうし面倒だと思ったらそのまま捨てられても良い。なにもしないでいるよりはよいかな的な行動ですよ。それから返事もなかったけれども拒否の手紙がなかった事を良いことに月1回手紙を書かせてもらっていたの。友達の事とか式のうつろいとかイベントのこととか色々とね。多分手紙を書くという行為で物事を受け止めることセルフカウンセリングをいていたんだと思う。そんな手紙を1年送らせてもらって反応がないことで踏ん切りがついたからありがとうございますの手紙を送って交流は終了していたんだけどね」と言えばはあ?という顔をしている
「ですが、先程」
「ええ。趣味と実益を兼ねて宝石加工の技術を学びにこちらに来たんですよ。つい最近。で、ダンジョンと加工技術を取得するための授業と資格の講座を受けていたら突然アポイントを都って来たんですよ。遠い昔に踏ん切りをつけた相手なんで名前を言われて親しげに話しかけられても全然思い出せなかったんですけどね最初」笑いながら話す私に驚いているが
「そういう特性なんですよ。一旦興味を踏ん切りをつけて離れた人や物事のことはすっかり脳みそに残っていないんですよね。そうじゃないと容量が少ないので」と言えばなんとも言えない顔をしている
「で、ちょっと話を聞いていて思い出したんですよ。唯一の婚約者候補だっていうことを。で、手伝ってくれないか?と言われたんですよね。数多いる婚約者候補のなかで悪質な人間を排除したいと。好感度ナンバーワンの子を悪意にさらしたくないからと頭を下げられたら。その男粋を評価して参加させてもらっただけで、彼とちゃんとした会話何てそのときがはじめてだし顔を会わせたのだって今日で2度目なんですよ私」と言えば
「でも。あんなに優しく扱っている彼を見たのは」といっているので
「ああ。それは私が難聴だからですよ。低い音と小さな音。不明瞭な音は認識できないので。はっきりわかりやすく尚且つ唇を読みやすいように配慮してくれただけだと思いますよ」説明すれば驚いている
「それに。互いに思いやって相手の色を身に付けている仲を引き裂いてまで手に入れたいと思うような感情を彼には持っていませんし。持っていてもそんな風に仲を裂いた相手に愛されるような人間だと思っていませんからね」と言えば驚いた顔をしているのだがなんでだろう?
「え?だって彼のカフスボタンと貴女のネックレスは対のものでしょ?それに互いを表す色で仕立てられているのだからそう思うのは当たり前だと思うんですけど。間違っていましたか?
というか、人にそんなもの作らせておいて送る人間にそういう風に説明しないのもへたれだと評価されても致し方がないと思いますが」と彼女の後ろの位置にある入り口から静かに近寄ってくる婚約者候補に言えば
「うるさい」と照れたように言われた
「そうですか。まあ、ごちそうさまでした。私の方に特攻をかけてきた人間はハムラビ法典掛け2。で対応させてもらいます。それに学びたい技法も取得したい資格もすべて取得できましたからそろそろ実家に戻る予定なので。貴方達とこうやって顔を会わせるのも今日ぐらいでしょうから。では、お幸せに」と喫茶から出て家路につく
面倒だなと思ったが、かわいい女性と唯一の婚約者候補がくっついて幸せになったら結婚式の引き出物かなんかに私の作品を使ってくれるかも知れないし。そもそもあんな有能な男性と私が釣り合う筈もないから良いやと清々しい思いで荷物をまとめる
王都に出てきて良いものも悪いものも見れたし勉強もできた。それらは自分の血肉となって人生の糧になるだろうと思いながら故郷に帰るための転送陣を利用する為に受け付けをする
「どこへ」と声を掛けてきたのは婚約者候補の側に控えていた人で従者だと紹介されていた人だ
「なにか用ですか?」と問いかければ
「ええ」とまっすぐ私の方をみて
「私の婚約者となってくれませんか?」と聞かれたので驚いた
「はあ?何を言って私の婚約者候補は彼が唯一だと聞いています。からかうのも大概にしてくれませんか?それとも貴方の妹さんが彼と正式な婚約を結ぶために手伝った私をあわれだとお思いで?」と言えば
「いえ。貴方が彼に手紙を送ってきたのを彼と共に読ませていただきました。人の上にたつものの心構えとか失敗からまなんだ教訓とかそういうのがサラッとのせられていた手紙に驚きましたよ。本当に。それに、彼に行動に言葉に示さないと心は伝わらないと書いてくれた貴方には感謝します。それととりとめないように書かれた雑学とか本当に為になったものが私には多かった。そんな手紙を送る貴方に興味を引かれましてね。色々と手紙にちりばめられた貴方の情報を集めてどんな女性かと考えるのは楽しかった」
「それに。貴女は知らないかも知れませんが、何度か貴方の故郷に彼らと一緒に遊びに行ったことがあったんですよ。クルージングや花見。祭り等ね。手紙に書いていた通りきれいな春で楽しい夏。心踊る祭りでした。そうやって貴方の手紙を楽しみにしながら貴方への思いが積み重なっていった私は滑稽ですか?」と言われて驚く以外ない
「でも」
「貴女はいっていましたよね。婚約者は行動で増えたり減ったりすると」
「ええ。でも普通は減るのが一般的だと」
「普通はそうですが。希に私のように増える人間もいます。それに茶番に付き合ってくれた貴方の人と成りを近くでみて側にいてほしいと持ったんですよ。だから」と言われても私はそういう風に彼を見ていなかったからなんとも言えない
「困惑している様子ですね。一方的に貴方に恋した私はおろかなのかも知れませんが。これから一緒にいて私という人間と交流してから判断してもらっても良いですか?」ついてくる気満々の質問ではある
「それは良いとして。一応世間的には彼の婚約者候補となっていますけれど?」
「ええ。ですから身を守るための護衛として派遣された人間として側に控えさせてもらいます。茶番でゴタゴタするのも半年くらいでしょうし。ばかな考えをして手を出してくる人間もいるかも知れませんし。私に守らせてください」と懇願された
ここまで懇願されて断るのもあれかと思って同行を許可した男連れで帰ってきた私に驚いた両親にざっくばらんに説明をして納得してもらった。ちなみに父には詳しく護衛としてきたことと婚約者候補であると彼が説明していたとは後から知ったのだが
部落に男連れで帰ってきたのと一緒に王都でちょっと人助けをしたら護衛としてつけられたという話が一晩で流れたので、翌日の朝の礼拝に彼をつれて言っても誰もなにも言わなかった
というか。王都まで言って面倒ごとに巻き込まれた私にまた突拍子もない事をしでかしたんだろうというのが、周りからの評価だ
王都で作ったアクセサリーを売り処分してから独り暮らしのための部屋を借りて引っ越しを行う
実家では兄が結婚したばかりなので小姑がいるのはという配慮と独り暮らしをしてみたいという希望からそうなった
彼は隣の部屋を借りてすむことになった。
私はアクセサリーを作成するのとダンジョンに潜るのでお金の心配はないのだが、彼は?と思うと
「一緒にダンジョンに潜らせてください。貴方が加工作業中は事務の仕事を斡旋して貰うつもりですから大丈夫」と言われた。実際部屋を借りるときに知り合いのおじさんに紹介して紹介状を書いてもらったのを彼には渡していたので、仕事は問題ないのだろうと思うことにした
後日確認したらちゃんと派遣に登録されていたし実績を積んでいたので大丈夫だったのでホットしたのは秘密である
一緒にダンジョンに潜るよになり色々と話をしたりイベントを手伝ってもらっているなかで彼の事をいい人だと思うようになったし
側にいて安心できるよになっていた。その事は言葉で示したり甘えを出していたと思っていたが、彼には伝わらなかったようだ
「思っていたというのは傲慢だったのかしら?」と一人で探索するようになって呟く。報われないと思うようになったのかこちらに合わなかったのか知らないが彼との距離は広がるばかりである
「まあ。伝わっていなかったというのは私の精進が甘かったということだろう」と以前好きだといっていた料理を手紙と共につけて隣の玄関のノブにぶら下げておいた
いまだに襲ってくる人間も罠を仕掛けてくる人間も多数いるが、それはそれで撃退プラスハムラビ法典掛け2で対応する。周りからはちょっと引かれたが、身を守るためだし割りきっている
攻撃してくる半数は兄嫁関係だと気がついたので其を含めて色々と頑張ってみた
疲れたーとぼんやりしている所に久しぶりに彼がやって来て隣に座ってきたのはダンジョンのなかできれいな風景が見られる場所である
ちょっと危険なところで誰も近寄らないのでぼんやりしたいときにはこもっている秘密の場所であるが何故だろうと思いながらも隣に寄りかかると頭を撫でてくれる
「お疲れ」と一言。そのあと何も言わずに側にいてぼんやりしている私に寄り添ってくれる彼にいとおしいと思うし指を絡めながら繋がれている手に嫌な感じはしない
撫でられているのが頭からほほに移動してももっとさわってほしいと思うようには彼のことが好きなのだと認識した
ボソッと愛していると呟くと
「やっとその言葉が聞けた」と嬉しそうな声が聞こえる
「甘えてくるし頼られているとはわかるが。愛していると言われたのははじめてだ」と膝の上に座らされてぎゅっと抱き締められた
「最近忙しそうだったけれど」ときけば
「あのへたれがやっとプロポーズしてな。色々やっていたのと周りの掃除をな」と私を包み込むように抱き締めながらいっている
「やっとか。あのへたれ」といえば笑いながら
「やっとなんだよ」と彼と私のなかで婚約者候補の彼はへたれで通る。
「最近ハエが少なくなったと思ったら掃除してくれたんだ。ありがと」と言えば
「護衛だと公表していたが、俺がお前を扱う様は婚約者に準じている行為だとわかるのに横恋慕してくる人間が多いこと多いこと。なんだろうなあれ」
「田舎だから少しでも有能な人間をと思う人も多いのでは?私にはよくわからんが。それに見目もよいだろ君は」と言えば
「そうだろうか?兄貴とかの方が良いと思うが」
「基準のレベルが違いすぎると思う」と全身を預けながら話している私に満足げである。そのまま立ち上がり横抱きにして外へと運ばれる。静寂なダンジョンから小うるさい現実に戻されて不満げな私をみて母が近寄ってくる
「崩落したと聞いて心配したんだから。他の人は帰ってくるのにあんたは未だだし」と叱られた
「崩落したけど。なんとかなったし。救助が必要な人間は転送したんだけどそこで体力がつきたから動けるまでのんびりしていたの。で、彼が来てくれたから連れてきて貰った」と言えば
「もう少し早く出てくればよかったのですが。爆睡していまして」と言えばあきれた顔をしながら納得している母。
「もう。危ないから奥までいかないようにと言っているでしょ」と良いながらもホットした顔をしている。体力がそれほどないので奥まで潜らない。浅いそうで宝石を採取している私が崩落に巻き込まれるのはあり得ないことである。人為的な崩落であるが、其を引き起こした人間をどうにかするのはダンジョンを有する集落の人間が決めることである
「温泉に入って帰りますか」と下ろしてもらい母に抱きつけば「そうね。そうしましょう」と同意してくれる。後ろからは当たり前のように彼が付き添ってくれてふらつく体を支えてくれている。様子を見るために温泉施設に1泊して翌日に帰る。
翌日には彼との婚約を正式に発表するように母に忠告されてプロポーズをしてみたら逆だろうと頭を抱えられが受け入れてくれた
「つうことで。正式に婚約したから」と父と兄に言えば頷かれ
「こんな子ですがよろしくお願いします」と逆に親が頭を下げている。どういう評価なんだろうと思いつつ
「挨拶しにいかねばならんね」と言えば
「それは俺の台詞なんだが。まあ、時間を作るか。あちらも妹の件でごたついているだろうし」
「じゃ。祭りあとで良いかしら?それとも精霊祭りの時が良いかしら?」と先祖の精霊が戻ってくる時期が良いかときけば
「そうだな。はや方が良いだろうし」ということで精霊祭りの時に挨拶にいくことになった。今後の話し合いをしていたら婿に入ると言われたので驚くと
「俺は3男だから婿入りしても問題ないからな」と言われた。ちなみに母が其を聞いて
「内孫が出来る」とすでに兄の孫がいるのにも関わらず喜んでいたのが印象的だった