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Dark・Zone  作者: 桜龍
■第1章 ―始まりの鐘 編―■
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■No.4 無人島に


 烏伽も少し、状況を理解できたことがある。



 『一つ、高校の生徒以外、いない。』



 「隣の大学の方も軽く見てみたけど、大学生どころか職員すらいないみたい。あんた、誰か会った?」


 「いや、学校内で生きてるやつに会ったのはお前らだけだよ。あ…っと」


 「なに?」


 「さっき…いや、なんでもない。中では誰にも会ってない…」



 『二つ、ロッカーの中に入っていたのは『プレゼント』らしい。』



 「私のロッカーに入っていたのはこれです。」


 黎瑠が自分の鞄の中から出したのは小さなビデオカメラ。


 「……なんでカメラなんか?」


 「たぶん、以前学校全体でとったアンケートの、最後の問に答えた物が入ってたみたいで…ほら、学校生活についてってアンケートの…」


 「あぁ『無人島に何か一つもっていけるなら』?」


 烏伽も覚えていた。学校のアンケートの最後にあった異質な問い。


 「そうです。私、あれに〝ビデオカメラ〟って書きました。そしたらこれが…」


 「じゃ、あの女は〝サバイバルナイフ〟って書いたの?」


 「そうよ。文句ある?」


 「俺、なんて書いたか忘れたけど〝刀〟なんて書いてないよ?」


 「実現不可かロッカーに入らないサイズだと武器になるみたいです。クラスの子も何人か武器でした。銃が入ってたのは杉浦さんだけだったみたいですけど」


 「ボクはねー〝おっきいkurousaのぬいぐるみ〟って書いてたんだけど、でっかすぎて入らなかったみたい。だから手榴弾?みたいなのが入ってね、あかりちゃんが、危ないからって、持っててくれてるの」


 「ってことは、あいつ今『歩く凶器』じゃねぇか?!」


 「烏伽うるさい」

 

 

 『三つ、死体が無くなる。』



 「ないわよー。烏伽」


 昇降口。あかりたちは烏伽が見た飛び降り?現場を確かめるために1階まで降りてきていた。


 「こっちじゃなくて、もっと、花壇の方だったぞ!」


 下駄箱の影からビクビクと場所の指示だけ飛ばす烏伽。淳と黎瑠もそれに習って下駄箱の隅から外の様子を伺っている。


 外に出てきているのはあかりと徹也だけ。


 「場所は分かる。…だがブツがない」


 徹也は熱されたアスファルトの上に残された黒い水溜りの前に立っていた。


 あかりがしゃがんでそこを指で触れる。手についたそれは指をこすり合わせるとポロポロと剥がれ落ちた。


 「よく触れるな」


 徹也の言葉にあかりは睨み返すだけで何も言わずに立ち上がった。

 水溜りの中央はまだ少し赤と、こびり付いた肉片が残る。


 「誰かが持ってった…」


 徹也が独り言のようにつぶやく。


 「はんっ。あんたのその考えの方が猟奇的ね。警察も来てくれないってのに、誰が死体を片付けてくれんのよ?それより…」


 あかりが昇降口のすぐ隣にある花壇の方へ向かう。


 大きく抉れた、まるでクレーター。


 「これ、なにが落ちてきたんだと思う?」


 「さぁな…宮本の方が解るんじゃないの?」


 またあかりは睨み返すだけだった。



 「あれ…おかしいな…」


 烏伽は死体がないことを確認して、それでもその現場には決して近づこうとせず、廊下を少し進んで立ち止まった。


 「今度はなに?」


 熱い中、わざわざ屋根のない場所に出てきたあかりが不機嫌そうに訊ねる。


 「や、ここ…血溜まりがあったはずなのに…」


 昇降口から入って右手、職員室へ向かう方向。さっき烏伽が校舎へ入って来た時、確かに見た赤い海。


 「あ、そうか、掃除されたのか…」


 独り言で合点がついた烏伽にあかりが「なんなのよ?」と問い詰める。


 烏伽は先ほどここにおびただしい量の血の海が広がっていたこと、学校にいるはずのない掃除ロボットがいたことを話した。


 「掃除…もしかして、烏伽さんが見た飛び降り死体もお掃除ロボが片付けてくれたのかもしれませんね」


 「黎瑠ちゃん…可愛い顔してそんなエグイこと言うんだね…」


 「え、エグかったですかっ?!ごめんなさい…」


 「掃除、大いに結構じゃない。この暑い中、死体が放置されてちゃ腐って大変だもの」


 「そういう問題か?まず死人が出てることが問題だろ」


 「自分が死ななければ問題ないわ」



 『四つ、外部との連絡手段が遮断されている。』



 「携帯もダメ。ネットすら繋がらない。職員室入ってみたけど、全然。陸の孤島ってところね」


 「陸の孤島?学校から出りゃいいじゃん」


 「…あんた、今まで一人でどこで何してたの?」


 生徒昇降口を避けて、校舎西側の一階、渡り廊下から外へ出た。

 渡り廊下の屋根から出ても、そばに立つ巨大な楠木が日陰を作ってくれている。茶黒い土の地面の上にそのまま出る。5人共、校舎内を歩き回っていたのに靴のままだった。烏伽は上履きに履き替えるのを忘れた訳だが、あかりたちはわざと靴を履いたまま教室へ帰ってきたらしい。


 「靴のまま校舎を歩くって、先生いなくてもドキドキしたね」


 「変な感じだよね」


 淳と黎瑠がそう言いながら笑っていた。


 校舎の前には幅3メーター程の歩道。その脇にある階段でグラウンドに下りられるようになってる。

 ここからはグラウンドと、その向こうにある正門まで見渡せる……階段脇の木々の隙間から見えるグラウンドが眩しい。眩しさの先に、正門があるはずだった。


 「…………」


 烏伽は言葉を失う。


 「学校の外周は全部あの状態。今思えば、ボールネットの向こうに馬鹿でかいコンクリの壁作ったのも、このためだったのかもね」


 正門は高い鉄の板で覆われ、その上に鉄条網まである。

 周囲も同じように高い塀が築かれ容易に越えられそうもない。


 烏伽が学校へ入った時、正門の方は見なかった。


 「気付かなかった…」





 『五つ。外へ出られない。』





 「あ、でも俺、正門通らずに学校入ったんだけど…」


 「は?どういうこと?」


 あがりが理解できずに思わず聞き返す。


 「あぁ、クラブ棟の端…向こうも元から塀が高いけど、その下に穴があってくぐれるんだ。で、通学路に繋がってて…」


 「ちょ、ちょっと待ってください。烏伽さん、朝から校内に居たんじゃないんですか?」


 「いや、俺ついさっきまで外にいたけど…」


 黎瑠がぽかんと口を開けて、あかりがいつにもまして眉を吊り上げる。


 「なんでそんな大事なこと黙ってたの」


 「別に黙ってたわけじゃ…出れなくなってるなんて思わなかったし」


 「ちっ」


 あかりの舌打ち。


 「…なんにしたって、とりあえず行ってみたらいいじゃん」


 今まで押し黙っていた徹也が口を開く。


 「そうね。ちゃんと案内しなさいよ、烏伽」


 「…おう」


 何で俺、責められてるんだろう…。


 烏伽は力なく返事した。










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