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ダンジョン攻略、その五

 ダンジョン第三十五階層:「謎解きの間」

 クリア条件:「スフィンクスが出す八つの問いに全て答えるか、スフィンクスを倒すこと」


「おいおい、マジかよ」

 三十五階層の中央で眠っている魔物を見て、ヴィーの顔が引き攣る。ヴィーだけではない。「シン」のメンバー全員がそこにいるものに圧倒されていた。

 スフィンクス。

 ライオンの体に人間の頭を持つ魔物。目撃例が極めて少なく、存在そのものが疑問視されていた。そのスフィンクスが今、プライ達の目の前にいる。

 スフィンクスの強さがどれほどのものであるのかは、専門家の間でも議論が分かれている。

 ドラゴンに匹敵するという意見もあれば、それほどの戦闘能力はないのではないか?と言う意見もある。

 実際にスフィンクスを見たプライ達は、確信する。スフィンクスの強さはドラゴンにも匹敵すると。

「クリア条件の『スフィンクスを倒す』っていうのは、やめた方がいいな」

 ヴィーの意見に全員が賛同する。ここで、スフィンクスと戦えば誰かが死ぬ可能性が高い。そうでなくとも体力、魔力を大幅に消費することになる。魔力を回復させる薬も持ってはいるが、ここに来るまでに予定より多く使ってしまった。これ以上、薬を減らすわけにはいかない。

「『スフィンクスが出す問いに全て答える』しかないな」

 プライ達は慎重にスフィンクスに近づく。ある程度近づいた所でスフィンクスの目がカッと見開いた。スフィンクスはゆっくりと立ち上がる。立ち上がったスフィンクスは、天井に頭がぶつかりそうになる程大きかった。

(でかい、そしてこの魔力の量!)

 スフィンクスの体からあふれ出る魔力の量が、眠っている時の倍以上放出されている。改めて、スフィンクスと戦うことは無謀だと思い知る。

 スフィンクスの目がジロリと動き、プライ達を見下ろした。

「誰ぞ?」

 スフィンクスの口が動いたかと思うと、低い声でそう言った。プライ達は驚きの声を上げる。言葉の発音が、まるで人間のように綺麗だったからだ。

「誰ぞ?」

 プライ達が黙っていると、再びスフィンクスが同じ問いをしてきた。プライは思い切って聞き返す。

「どういう意味だ?」

 プライがスフィンクスに問いの意味を求めた。スフィンクスはギギギと目を動かすと、プライに視線を固定する。

「我が問いに答えるのは、誰ぞ?」

 スフィンクスの言葉にプライ達は、はっとした。

「問いには、全員が答えられるんじゃないのか?」

「否、我が問いに挑戦できるものは一人だけである」

(くっ!)

 プライは焦った。全員で応えられるのならば、誰かが答えを知っていればいい。だが、一人だけしか答えられないとなると……。

「その一人が問題に全て答えられたら、此処を通してくれるんだな?」

「いかにも、その通りである」

「じゃあ、その一人が間違えたら?」

 スフィンクスは、あっさりと答える。

「全員、我が腹に収まってもらう」

 つまり、問題に間違えた時点で強制的にスフィンクスとの戦闘になるわけだ。

(どうする?誰に答えさせる?)

 プライが悩んでいると、スフィングスが叫ぶ。

「我が問いに答える者は、おらぬか?おらぬのなら全員、我が腹に収まってもらおう!」

 スフィンクスの体から、膨大な魔力が溢れた。何か巨大な魔法を使おうとしている。

「待て!」

 プライはスフィンクスを止める。そして、あるメンバーの肩に手を置いた。

「アリス、頼めるか?」

 肩に手を置かれたアリスはビクっとなる。

 スフィンクスの出す問題は全部で八問。問題は、なぞなぞから解剖学など様々だ。その全てに答えられる者など、「シン」のメンバーの中ではアリスしかいない。

 アリスは、他の仲間を見る。皆が首を縦に振った。異論がある者など誰もいない。

「……分かりました」

 アリスは力強く頷くと、スフィンクスの前に立つ。

「私が答えます!」

 アリスが宣言すると、スフィンクスはニヤリと笑った。

「では勇敢なる者よ、我が問いに答えるがよい!」


「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。これは何か?」

「『人間』です」

「正解。では次だ」


「あぎょうさん、さぎょうごいかに?」

「『うそ』です」

「正解。では次の問いだ」


「狗子に還って仏性有りや無しや?」

「『無』です」

「正解。では次だ」


「ライオンの群れのことをなんと呼ぶか?」

「『プライド』です」

「正解。では次だ」


「人間の頭蓋骨を構成する骨の名称を全て答えよ」

「『後頭骨、前頭骨、篩骨、蝶形骨、側頭骨、頭頂骨、鋤骨、下鼻甲介、涙骨、鼻骨、頬骨、上顎骨、口蓋骨、下顎骨』です」

「正解。では次だ」


「円周率を100ケタ、答えよ」

「『3.1415926535 8979323846 2643383279 5028841971 6939937510 5820974944 5923078164 0628620899 8628034825 3421170679」です』

「正解。では次だ」


「およそ1:1.618。この比率をなんというか?」

「『黄金比』です」

「正解」


「やるな、では最後の問題だ!」

 スフィンクスの目が光る。さらに多くの魔力がスフィンクスからあふれ出た。 


「ふたつ文字 牛の角文字 直ぐな文字 歪み文字 とぞ君は覚ゆる」

「『こいしく』です!」

 アリスは間髪入れず答える。スフィンクスはしばしの沈黙の後、口を開いた。






「……正解だ」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴと次の階層への扉が開く。

「賢者とその仲間達よ、通るがよい!」

 スフィンクスは、プライ達がこの階層に来た時と同じように寝そべると、目を閉じてグウグウと寝息を立て始めた。


「「おおおおおおお!」」

 プライ達は、アリスに駆け寄ると頭を撫でたり、肩を叩いたりする。

「すげえな、アリス!」

「本当に凄いよ!」

「うむ、ワシなど二つしか分からなかった!」

「俺なんて一つも分からなかったぜ!」

「俺も!」

 仲間がそれぞれ、アリスの検討を称える。アリスは、はっとした様子で仲間を見た。緊張していたのだろう。ようやく、仲間達が自分を湛えていることに気付いたようだ。なので、皆が自分に言ったことも耳に入っていなかったのだろう。

 アリスは皆に、ニコリと笑うと嬉しそうに言った。


「割と簡単な問題ばかりで良かったです!」


 ダンジョン攻略メンバー「シン」。第三十五階層クリア。



「我が問いに答えるのは、誰ぞ?」

 スフィンクスがティラノサウルスとナノに問う。

「問いとは?」

 強烈な魔力を感じ、ナノは緊張する。

(強い!)

 あふれ出る魔力。体内の魔力は相当な量だろう。

(もしや、マルスに匹敵する強さではないのか?)

 魔力だけではない、スフィンクスの大きさはティラノサウルスを上回っている。不安渦巻くナノに、スフィンクスはギギギと視線を合わせると質問に答えた。

「これより、我が八つの問いを出す。それに全て答えられたら、此処を通してやろう」

「もし、答えられなかったら?」

「我が腹に収まってもらう」

「……なるほど」

 状況を把握したナノは、チラリと主を見る。ティラノサウルスはスフィンクスをじっと見ていた。

(マルスは当然答えることが出来ない。此処は私が……)

「私がや……」

「グオ」

 ナノが答え終わるよりも早く、ティラノサウルスが鳴いた。欠伸のような鳴き声だった。スフィンクスの目がギギギとティラノサウルスに向けられる。スフィンクスはニヤリと笑った。

「では勇敢なる者よ、我が問いに答えるがよい!」

 スフィンクスはティラノサウルスの鳴き声を『自分が答える』と言う意味だと解釈してしまった。ナノは慌てて止める。

「待ってください!私が答えます!」

「ならぬ、一度決まった答える者を途中で変えることは出来ぬ」

「そんな……」

「では、ゆくぞ!」

 スフィンクスはティラノサウルスに問いを投げかける。


「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。これは何か?」

「……グオ」


 ティラノサウルスが再び、欠伸のような声を漏らした。ナノの「あっ」と言う声が階層に響く。

「……ガッガガアガガガガガ」

 スフィンクスの顔がどんどん険しくなっていく。その顔は最早人間の顔をしていない。完全に獣の顔になっていた。


「愚か者がああああああああああああああああ!」


 怒りにまみれたスフィンクスが叫ぶ。

「愚鈍なる者よ!我が腹に収まるがよい!」

 スフィンクスは牙だらけの口を大きく開くと、ティラノサウルスに襲い掛かった。



「ぐ……ぐ、ぐど……ん、ななな、もの……わが……はら……」

 胴体から離れたスフィンクスの頭がティラノサウルスに咥えられている。

「ぺっ」

 ティラノサウルスは咥えた頭を離した。頭がボトリと地面に落ちる。ティラノサウルスは地面に落ちた頭をグシャと踏み潰した。

 スフィンクスの頭が潰されると、ゴゴゴゴゴゴと次の階層の扉が開いた。

(す、凄い!)

 圧倒的な力、異常な力を目にしてナノは目を輝かせる。ティラノサウルスは再び大きな欠伸をして、こう思った。


『あんまり、強くなかったな』


「大型獣脚類ティラノサウルス及びエルフ族ナノ」、第三十五階層クリア。



「もう少しだな」

 いつも明るいヴィーだが、その声は硬い。彼だけではない。他のメンバーも緊張している。次の階層をクリアすれば、ダンジョンの八割をクリアしたことになるからだ。ゴールが近づくにつれ、ダンジョン攻略という前人未到の偉業の重圧が重くのしかかる。 

 ヴィーの言葉にプライは、笑いながら答えた

「そうだな、もう少しだ」

 プライも皆と同じように緊張している。だが、リーダーが緊張していれば、それが皆にも伝わってしまう。それを避けるため、プライはわざと明るく振舞った。

 皆の緊張がわずかに緩んのを見て、プライは少し安心する。

「さぁ、次は四十階層だ!」


 ダンジョン第四十階層:「予言の間」

 クリア条件:「クダンを倒すこと」


「アリス、クダンってなんだ?」

 聞いたことのない魔物の名前にトニーは首を捻る。

「私もそこまで詳しくないのですが……東の国に生息する魔物の名前です」

「強いのか?」

「いいえ、力はそこまで強くないとされています。ただ……」

「ただ?」

 アリスは少し言い淀み、質問に答えた。

「未来を予言するとか……」

「未来?」

 ヴィーが信じられないと声を上げる。他の皆も同様の反応だ。無理もない。未来を予知するということはいわば時間を飛び越え、未来の情報を得るということだ。

 今日まで、様々な魔法が開発されてきたが過去に跳んだり、未来に行ったりといった時間の流れに逆らう魔法は未だ存在しない。それは、魔法使いでなくとも常識として皆が知っている。

「私も信じられませんが、でも実際にクダンが未来を予知したという言い伝えは数多くあります」

「ただの言い伝えだろ?本当かどうか……」

「それは、そうですが……しかし、四十階層を守っている魔物です。油断しない方がいいと思います」

 アリスの言葉にプライも頷く。

「アリスの言う通りだ。クダンが本当に未来を予知するのかどうかは分からないが、油断しない方がいい」 

 プライ達は四十階層の扉の前に立つ。この先に未来を予知するという魔物がいる。

「開けるぞ」

 大声で叫ぶと、プライは扉を勢いよく開けた


 四十階層にいたのは、魔物が一体だけだった。魔物は階層の中心に四本足で立っている。プライ達は魔物に向けて、それぞれの武器を構えた。

(ん?)

 魔物を見た瞬間、プライは違和感を覚える。それは他の皆も同じだった。

「あれが『クダン』か?」

「なんだか、フラフラしてるぞ?」

 トニーの言う通り、フラフラとよろめいていた。体はやせ細っており、とても弱っているように見える。

「気を付けろ。もしかしたら、演技かもしれない」

 知恵のある魔物の中には弱ったり、死んだ振りをしたりして獲物を油断させる者がいる。もしかしたら、クダンが弱っているように見えるのも演技かもしれない。

「ラスト、撃て」

 クダンからは少し距離が離れているがラストの腕ならば余裕で命中させられる。未知なる魔物と戦う時は、まず離れた場所から攻撃するのがセオリーだ。

「了解!」

 ラストは弓をゆっくりと引き、クダンに狙いを定める。その時、四十階層に声が響いた。


「聞け、七人の罪人よ!」


 クダンが突然喋り出した。驚いたラストは思わず攻撃を止める

「こいつも人間の言葉を話せるのか!」

「未来を予言するのなら当然、話せるとは思っていましたが……」

「驚いた。スフィンクスと同じ位、綺麗な発音だぞ」

 驚愕するプライ達。彼らを無視してクダンは言葉を続けた。


「『地下に潜りし七人の罪人、決して上に戻れず。一人は己に負け、一人は仲間を恨み眠る。一人は悲しみに凍り、一人は憎しみに燃え、一人は罪悪感に潰され、一人は孤独の闇に飲まれる。そして罪人のリーダーは未来永劫後悔に苦しむ』」

 

 クダンは、そこまで話すと突然笑い出した。

「くけ、くけけけけけけけくえけけけけけけけけけけけけけけ!」

 今度は、不気味な笑い声が階層中に響く。

「今のは、どういう意味だ?」

 プライはクダンに問いかける。言葉を話せるのなら、スフィンクスの時のようにコミュニケーションが取れるのではないかと思ったのだ。だが、クダンは何も答えずただ笑い続ける。

「どうする?攻撃するか?」

 スロウがプライに尋ねる。プライは迷いながらもスロウを制止した。

「いや、もうちょっと様子を見てみよう。まだ、何か……」


「けけけけけっけけ……け……けけ……け……ガフッ!!」

 笑い続けていたクダンが突然血を吐き、その場に倒れた。


「何だ!?」

 クダンが血を吐いて倒れたのを見て、プライ達は慌ててクダンに近づく。アリスは警戒しながら、ゆっくりとクダン触れた。数秒の間アリスはクダンに触れていたが、やがて手をどけると、首を横に振った。


「死んでいます」


 アリスがクダンの死を確認するのとほぼ同時に、ゴゴゴゴゴゴゴゴと次の階層への扉が開いた。


「どういうことだ?」

 せっかく次の扉が開いたというのに、誰も入ろうとしなかった。皆、クダンの死体を取り囲むように立っている。

「死因は何だ?」

「おそらく、衰弱だと思います」

「衰弱死……」

 四十階層を守るべき魔物が戦いもせずに死んだ。これはどういうことなのだろうか?

「元々、死にかけていたとか?」

「死にかけている魔物に四十階層を守らせるか?」

「私もそう思います。何か意味があるとしか……それに先程、クダンが言っていたことも気になります」

 クダンはさっき、『七人の罪人』と言っていた。おそらく、これは「シン」のメンバー全員のことを指していると考えて、間違いないだろう。仮にクダンの言葉が予言だとしたら、これから「シン」の身に起こることを予知したことになる。

『負ける。眠る。凍る。燃える。潰される。沈む。苦しむ』

 どれも決して、良い言葉とは思えない。皆がクダンの言葉の意味を考えていると、トニーが口を開いた。

「なぁ、いつまでもこうしていたって仕方ないんじゃないか?」

 全員の視線がトニーに集まる。

「そいつが死んだことは確かに気になるけど、ここにいたって分かるもんじゃないし……」

「それは、そうですが……」

「それにもし、そいつが言ったことが本当に予言だとしても、気を付ければ避けられるんじゃないのか?」

 そうか、とプライは思う。確かにクダンが言ったことが予言だとしても、それが現実に起きるとは限らない。回避できる可能性だってあるのだ。

「トニーの言うことにも一理ある。確かにずっとこうしている訳にもいかない。次の階層に進もう」

「……分かりました」

 リーダーであるプライの意見に全員が従う。

「ここから先は出来るだけ、皆固まって進もう。もしクダンが言っていたことと同じような状況になった時は、全員で周囲を警戒する。いいな?」

「おう」

「はい」

 予言を回避するにはできるだけ周囲に警戒する。そして何かあれば、仲間と協力して危険を避けるしかない。


 クダンの死体を残し、「シン」のメンバーは四十階層から去った。何とも言えない不気味さを残して。

 

 ダンジョン攻略メンバー「シン」。第四十階層クリア。



 ティラノサウルスとナノの前に現れたのはヨロヨロとよろめく、人間の顔をした牛の魔物だった。

 魔物はやせ細っており、今にも死にそうだ。だが、もしかしたら演技かもしれない。ナノは油断することなく腕から剣を伸ばすと、それを魔物に向けた。

 ティラノサウルスは、初めて見る生物を興味津々に見ている。


 すると突然、人間の顔を持つ牛の姿をした魔物が喋り始めた。


『異世界より来たりし暴君の血、黒と混じりて新たなる暴君を産む。生み出されし黒き暴君、両親を超え新たなる国を建国する。父は地下に沈み、母は空に散る』


『異世界より来たりし暴君に仕えしエルフの女、主と離れる。人形となりて、黒き暴君と魔物、人間との橋渡しとなる』


 魔物はそこまで話すと、突然笑い出した。

「くけ、くけけけけけけ、くけけけけけけけけけけけけけけ!」

 魔物の言葉の意味が分からずナノは、首を捻る。

「今のは……」

 ナノが、どういう意味ですか?と聞こうとした時、笑っていた魔物が突然血を吐いて倒れた。驚いたナノは魔物に近づく。


「レヌトレキ(死んでいる)」


 ナノが魔物の死を確かめるのと、ほぼ同時にゴゴゴゴゴと扉が開いた。


「モシトレ、フライテル……(一体、これは……)」

 訳が分からず、ナノは困惑する。

 ティラノサウルスは倒れた魔物の匂いをクンクンと嗅いだ。だが、匂いが気に入らなかったのか、興味を失ったように顔を上げると、そのまま扉に入ってしまった。それを見たナノは慌てて主人を追いかける。ナノが扉をくぐると、扉はバタンと閉じた。



「大型獣脚類ティラノサウルス及びエルフ族ナノ」、第四十階層クリア。










 吐いた血がクダンの体に戻る。まるで生まれたばかりの子牛のように何度も転びながらクダンは、ヨロヨロと立ち上がった。

「くけけけ、けけけけけ、くけけけけけけ」

 そして、不気味な声で笑い出す。


「シン」のメンバー、そして、ティラノサウルスとナノ。彼らは重大なミスを犯した。

 それは、クダンの予言を聞いてしまったことだ。


 彼らならば、弱っているクダンなど一秒も掛からずに倒せただろう。彼らはクダンが予言を話す前に、倒すべきだった。それが、予言を回避する唯一の方法だからだ。

 しかし、彼らはクダンの予言を聞いてしまった。予言を聞いてしまってからではもう遅い。

 

 クダン。未来を予言し、死んでしまう魔物

 クダンが言葉に出した予言は、百パーセント的中する。







 クダンが一度、言葉に出した予言を回避する方法は……ない。



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