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力、獲得

「ドカーン!」

俺の目の前が火の海へと変わった。

「お父さん、お母さん!」

俺は必死に叫んだ。燃え上がる炎の中で、必死に。だが、目の前をあいつらが打ち抜いた。

「お父さん、お母さん!

やめろーーー!

やめてくれー!!」


「お兄ちゃん、お兄ちゃん!

大丈夫?お兄ちゃん!」

体を揺らされびっくりして

起き上がる。

「ん!?あれ、ゆりの?」

俺の体は汗で湿っていた。

「はぁーよかった。

お兄ちゃん、またあの夢?」

「え?なんで分かった?」

「だって…」

ふと、視線を落とすゆりの。

「だって、ずっと苦しそうだったから。心配だったの」

「ゆりの、ごめんな。

もう大丈夫だよ」

俺はゆりのを抱きしめる。

この夢で、

いや、この出来事で失ったものをもう一度思い出しながら誓った。

ゆりのだけは、ゆりのだけは何があろうと守ってみせる、と。

今から4年前、この地球にあるもの達が現れた。それは、「天使に成れなかった者」俺達人類の生き残りはこいつらの事をこのように呼んでいる。こいつらが突如現れて周囲を

レーザーのような物で焼き尽くし

世界中を焼け野原にしていった。この事は「ファーストインパクト」と呼ばれている。

以降、こいつら「天使に成れなかった者」は時折姿をみせるようになった。その度に人々の幸せを奪いながら。だからこそ俺は力を求めた。

たった一人の妹であるゆりのを守るために。

そして4年経った16歳の今俺、菊池豹月は、妹の蘭成ゆりのと共に対「天使に成れなかった者」を育成する学園、「戦乱学園」へと入学した。ここで力を手に入れるために。

「お兄ちゃん、そろそろ学校行こうか」

「そうだな」

そして、俺は身支度を済ませ妹と共に学園へと向かった。

「あ!ひょうが、ゆりのちゃん、久しぶり!」

「おー!久しぶりだな美波」

「お久しぶりです美波さん!

お元気そうでなによりです」

こいつは島崎美波。俺らと同じでファーストインパクトで家族も親戚も全員無くした。うちと美波の家はもともと親どうしが知り合いだった事もあり小さい頃には一緒に遊んだ事もあった。美波がこの学校に来ることは今年の春休みに配られた入学者名簿を見ていたので知っていた。

「美波も大変だったよな。

ここで再開できてよかったよ」

「うん。私も。

でも、ひょうが達の方が大変だったよ。だって…」

と、言葉を切る美波

「大丈夫だよ。

俺には大切なゆりのがいるし。

それにここで美波にも再開できたしな。心配いらねーよ。」

「ひょうが、嬉しいよ。ありがと!」

ここ、戦乱学園は対「天使に成れなかった者」戦に備えて訓練を積む学校だ。高校と同じ扱いの学校なのだが、ゆりのは俺の入学テストの日についてきて試しにテストを受けたら成績が良かった為に飛び級でこの学園にはいったのだった。この学園では強さ順にレベル1、レベル2、レベル3、レベル4、レベル5と一段階ずつクラスが上がっていく仕組みになっている。俺と美波、そしてゆりのはレベル1から訓練を開始することとなる。レベルアップには己の熟練度をあげる事だと言われている。同じレベルの人とはクラスメイトになり、そのクラスメイトの中から寮生活の同室のものが割り当てられ、そのもの同士がパートナーとなり訓練や任務をしていくという事。そしてそのパートナーは学園を卒業してからもずっと一緒に任務をこなしていくという事をホームルームの時間に話された。最後に、「同居人はお楽しみに〜」と言う担任の一言で今日の学校は終了したのだった。

そして俺も寮部屋に入り10分が経過していた。

だが先程からとても気まずい雰囲気が漂っていた。なぜなら俺は、同じレベル1の「女子」と同じ部屋になってしまったためだ。しかも、銀髪ロングのポニーテールという抜群の容姿を持つ美少女と。こちらとしてはとても嬉しいのだが、年頃の男女が一つ屋根の下に2人っきりという状況は非常に気まずいのだ。だからと言ってずっとこのままなのも気まずいのでとりあえず声をかけてみた。

「あ、あのさ、一緒の部屋になったんだし、自己紹介しない?

俺の名前は蘭成 豹月。

ひょうがって呼んでくれ。」

すると、声に反応して振り向く彼女。

「あ、はい。ひょうが、ですね。私はララ=セレナと言います。セレナと呼んでください。これからよろしくお願いします。」

「おう!よろしくなセレナ。」

流れる沈黙。

「………えっと、質問なんだけどいいかな?」

「はい。私に答えられるものでしたら。」

「ありがとう。率直に聞くけど、セレナの家族や親戚のみんなは無事かい?」

するとセレナは表情を曇らせる。

「いえ、あの日のファーストインパクトで全員死にました。

私はずっと1人で、4年間保護施設にいました。」

「そうか、答えてくれてありがとう。辛い事を思い出させちゃったのは謝る。だけど聞いておきたかったんだ。君のパートナーとして。

でも、俺が君のパートナーでいる限り絶対殺させないし、俺も殺されない。だから安心して。何があっても守ってみせるからさ。

こんな俺でよければずっと一緒に、側にいるから」

そう声をかけたらセレナの顔は

とても驚いた表情を浮かべていた。

「・・・?!」

「ん?どうした?」

驚いたまま固まってしまったセレナに声をかける。

「い、いえ。なんでもないです」

「そっか。ならいいんだけどさ」

気になったが妹に、女の子にしつこくものを聞くのはマナー違反となんども言われていたので聞かない事にした。

「あ、そうだ。明日授業無いんだしどっかに買い物に行かないか?

俺の妹と幼なじみも紹介するから。」

明日が休みという事を思い出したので誘ってみた。

「それはいいですね。

ぜひ行きましょう!」

「良かった。じゃあ俺はあいつらに伝えてくるよ。」

という事で俺は部屋を出てゆりのと美波の部屋へと向かった。

「 ずっと一緒にいる、か。ひょうが、優しいんですね」

そう呟きセレナは嬉しそうな表情を浮かべてベッドへと入った。

「 はー、疲れたー。ついつい長話ししちゃったぜ。」

と言いつつ消灯時間なので横になる。とても柔らかいものの上に。

「な、なんだ?!」

俺は驚いて立ち上がった。するとそこには、

「あれ、ひょうが。大胆ですね。笑笑」

「いや、「笑笑」じゃないから!

なんで俺のベッドにいるの?」

「それは…、一緒に寝たかったからです。1人は寂しいので。」

1人は寂しいのでという彼女の言葉には説得力があった。ファーストインパクトで家族、身内を亡くしてずっと1人で生きてきたセレナに1人で寝ろというのはためらわれた。

「はー、分かったよ。

寂しい時は一緒に寝よう。

俺はセレナのパートナーだからな」

「はい!ありがとうひょうが♪」

「お、おう」

ありがとうをいう顔がとても美しく、つい目を奪われてしまう。

「じゃ、じゃあおやすみ!」

俺は逃げるように目を閉じ眠りについたのだった。

「ひょうが、責任取ってくださいね」

豹月が緊張と戦っている中でセレナはそんな事を考えながら眠りについた。

翌朝、ゆりのと美波、俺とセレナで近くのショピングモールへ買い物に来ていた。セレナには2人の事を電車で紹介した。(なぜか美波はセレナの事を睨んでいたが・・・)

セレナは豹月の横にぴったりくっついて離れようとしない。そんな二人の様子を睨みつけている1人の女性の姿がある。美波だ。

その顔は、憎しみに歪んでいる。

「く〜。なんであの女ばっかり横にいるのよ!大体、ひょうがのルームメイトとかずるすぎだっつーの!」

そんな美波をルームメイトのゆりのがなだめる。この2人は偶然一緒の部屋になったのだ。

「大丈夫ですよ。別にセレナさんとお兄ちゃんが付き合ってるわけでもないんですし。何より、幼なじみの美波さんの方が付き合いは断然長いんですから。」

「うーん。それも一理あるね。

でもずるい!」

その美波を見ながらため息を吐くゆりのだった。

色々と店を回っているうちに時刻は13時半を回っていた。

「お、もうこんな時間か。

じゃ、どっかで昼飯食べようよ。」

「賛成!」

「いいね、ゆりのお腹ぺこぺこだよ〜」

「私もお腹ぺこぺこです」

との事でみんなでフードコートへ向かった。

「じゃあ、みんなは座っててくれ。

俺が買ってくるから」

と言って俺は一旦席を空けた。

それを見計らい美波がセレナに質問をする。

「セレナさん?あなた、ひょうがとどういう関係なの?今日はずっと、ぴったりくっついてたし」

「へ?私とひょうがはただのルームメイトですよ?でも、昨日の夜の責任は取ってくれないと困りますね」

「せ、責任!?」

驚いたのか美波は固まってしまった。

「はい。だって昨日の夜、こんな俺でよければずっと一緒にいるからって言ってくれましたし。」

「う、うそ…」

「しかも、昨日は一緒に寝たんですよ。」

今度はゆりのが固まった。

「え?一緒に?」

そんな時、豹月が帰ってきた。

手元にはハンバーガーが4人分トレイに乗せられていた。

「おーい。買ってきたぞ。食べようぜ、ってお前らどうしたんだ?」

固まっているゆりのと美波を見て

首をひねる豹月。そんな豹月にセレナが説明をする。

「この2人に昨日の夜の事を話したんです。そしたら2人共固まってしまったんですよ。」

「そうよ、ひょうが!ずっと一緒にいるからって言ったんだって?どういう事!」

「お兄ちゃん!なんで一緒に寝たの?お兄ちゃんと寝ていいのは妹の私だけだよ!」

と、いきなり2人に問い詰められる豹月。

「お、おいセレナ?どんな説明をしたんだ?それと、お前ら2人共落ち着け!」

と、なんとか席に座る。

「で?セレナはどんな説明をしたんだ?」

事の原因と思われるセレナに説明を求める。

「私は昨日の夜の出来事を話しただけです。ずっと一緒にいるって言ってくれた事や一緒に寝た事を」

納得した。なんで2人に問い詰められたのか。

「た、確かに言ったし寝たけど…」

と、言葉を濁す俺に追求してくる2人

「本当に言ったの?!

じゃ、じゃあひょうがはセレナさんとつ、つきあってるの?」

「お兄ちゃん本当に寝たんだ!信じられない!私という妹がいながら!」

なんだか、すごい事になってきた。

「落ち着けって。確かに言ったし寝たけど、決して付き合ってないから!そして寝たのは寂しがってたからだよ!」

と、必死に説得する俺。

そんな俺を見ながらセレナはクスクス笑っている。

「ひょうがは付き合ってないの?

本当に?」

「私だってお兄ちゃんと違う部屋で寂しいよ!」

「と、とりあえず1人ずつ誤解を解くぞ。まず美波、俺とセレナは付き合ってないからな。そんでゆりの。

セレナはファーストインパクトで身内を全員無くしてしまってるんだ。

だから寂しいって言われてほっとけるわけないだろ。一緒に寝るくらいで苦しみが和らぐならいくらでも一緒に寝るさ。俺はセレナのパートナーだからな」

これを聞いて2人共納得してくれたらしい。

「セレナさん、そうだったんだ。

その、勝手な事言ってごめん。」

「私も自分の事ばっかでした。

ごめんなさい」

そんな2人を見てセレナが口を開く。

「大丈夫だよ。2人だってファーストインパクトの被害者でしょ?それはみんな変わらない。だから、もう謝らないで」

そんな3人を見て安堵した俺だった。

その後俺たちは服などを見て回ったあと、学園に帰るために電車に乗っていた。ゆりのと美波は寝てしまっている。

「ひょうが?

私、今日楽しかったです。ありがとうございました」

「そっか。なら良かった。明日からは訓練が始まるから一緒に頑張ろうな」

と、会話を交わしたのだった。

翌日、訓練初日の朝

「んー、よく寝た、ってセレナ!?

な、なんでここにいるんだ?」

セレナは驚く俺を見て笑っている。

「おはよう、ひょうが。よく寝れました?」

「うん寝れた。じゃなくて!

なんで俺の布団で寝てたの?びっくりしたよ」

「それは驚かせてみたかったので。そしたらこんなに驚いてくれたから面白かったです」

と、こんな感じで今日が始まったのだった。

「ひょうがー!おはよう!」

「おはよう、お兄ちゃん!」

クラスに入るや否やゆりのと美波が俺のところへやってくる。

「おー、おはよう。

よく寝れた?」

先程セレナにされた質問をしてみる。

「うん!お兄ちゃんは?」

すると、なぜかここでセレナが答える。

「とてもよく寝てましたよ。

ずっと横で見てましたからね♪」

この一言で2人の雰囲気が変わる。

「ん?なんでひょうがを横で見てるわけ?」

と、美波。

「お兄ちゃん?また一緒に寝たの?」

と、ゆりの。セレナはクスクス笑っている。

「え、えーと、起きたら横にセレナがいたって感じです。」

なぜか敬語になってしまう俺。

「へー、じゃセレナさんが勝手に入ってきたと?」

「は、はい。そうです。」

事実を述べる。

「違います。ひょうがに一緒に寝ようって言われて寝たんですよ」

ここでセレナが誤解を招く一言を入れてくる。

この瞬間、尋問が確定した。案の定この時から授業まで、たっぷりと尋問され続けた俺なのだった。

尋問が終わり、俺たちは訓練場に来ていた。

今日は訓練初日なので技の出し方、

そして使い方の説明を行ったあと

模擬戦をするということだった。

「では、技の出し方だが」

そう言って教官が右手を壁へ向けるや否や赤い閃光が放たれる。

ズドン、と言う鈍い音がなり閃光が消滅する。

「ま、こんなもんだ。技を出す方の腕に気を集めて放つんだ。ではパートナー同士でやってみろ」

と言われてみんな一斉に技を放つ。

しかし気が足りずに途中で消滅するものや放つことができないものなど様々だ。

「じゃ、俺も行くぜ!」

「はい。全力でどうぞ」

少し遅れて俺らも攻撃体制に入る。

そして、俺らは閃光を放つ。

放った閃光が2人の中央で消滅した。

しかし威力が足りなかったのではない。むしろその逆で強すぎたのだ。

周りから拍手が送られる。

「やるな、セレナ!」

俺はファーストインパクトの日に一度この技を使った事がある。あの時は無意識だったのだが一人で訓練していたため威力の調整くらいはできるようになっていた。だが、俺が全力で放った閃光がセレナの閃光とどう威力だったのには驚いた。

「セレナ!お前も使えたのか?」

「はい。一人で訓練してここまで力をつけたんです」

セレナも俺と同じく一人で訓練していたらしい。ならこの威力は納得だった。だが俺にはもう一つ技がある。俺が編み出した技が。

「いいぜ。じゃあ俺の編み出した技、見せてやる!」

俺は両手を前に突き出す。

「来いよ!俺の相棒!

アナト!」

そう叫んだ俺の手から

巨大な剣を持った女神が飛び出した。

「どうだ!これが俺の相棒だ!」

教官を含めた全員が唖然としている中セレナのみ笑みを見せていた。

「じゃ、私も行きます!

来て!ハトホル‼︎」

そう叫ぶと同時、セレナの手からも女神が飛び出す。

「な、なんでセレナまで?」

「私も訓練してたら習得できたんです。これで条件は同じですね」

「へ、へへ。上等だ!行くぜ!」

ここからだと言わんばかりに攻撃体制に入った俺ら2人は、一人の人物の声がかけられた事によって動きを止める。

「そこまで!

その続きは模擬戦でしてもらう」

熱くなりすぎて周りが見えていなかった俺たちは、教官にこう言われ俺もセレナも召喚を解除したのだった。

そして、

「模擬戦開始!」

この教官の一言で模擬戦が開始される。訓練では2人vs2人の形式で行われる。もちろんパートナーとの二人組である。そして俺の相手はゆりのと美波のコンビだった。

「お兄ちゃん、覚悟してね!」

「こい!絶対負けねーぞ!」

「ひょうが、頑張りましょうね!」

共に気合を入れて攻撃体制に入る俺たち。

「先に仕掛けるぞ!来いよ、アナト!」

俺は相棒を召喚する。それに続きセレナも召喚を行う。

「来て!ハトホル!」

いきなり召喚されて戸惑う美波とゆりの。

「こんなのどうやって倒せばいいの?」

「とにかく、攻撃しましょう。

行きますよ、美波さん!」

「わ、分かった!」

2人は距離を取りつつ閃光を放つ。

だが、俺らには届かない。二体の女神によって全て受け止められる。

「な、やっぱり無理?」

「そうだよ、美波。2人じゃ俺たちには指一本届かない。

て事で、こっちもいくぜ!」

そう叫ぶと同時に俺の女神、アナトが巨大な剣を構えた。そしてそのまま剣を一閃する。その攻撃をやっとの事でかわす2人。だが、かわした直後の2人は完全に無防備だった。その瞬間にセレナのハトホルが巨大な閃光を放った。見事2人に直撃し模擬戦は終了した。

「お兄ちゃん、あんなのいつ覚えたの?」

「ん?ゆりのは知らなかったのか?

俺の記憶だと前に一度使ったことがあるはずだけどな」

「え?いつ?」

「ファーストインパクト直後だよ。

ゆりのが攻撃された瞬間にこいつが守ってくれたんだ」

「じゃ、じゃああの時助かったのってこの女神のおかげなの?」

「ああ。そうだよ」

それを聞いたゆりのは呆然としている。

「それにしても、セレナまで召喚術を使えるとはね。びっくりしたよ」

「はい。私もファーストインパクト直後にハトホルが現れて助けてくれました。」

俺はこの時納得した。

2人共召喚術の使い手であるからパートナーとして選ばれたのだと。

「蘭成 豹月!、ララ=セレナ!

至急理事長室まで行きなさい!

理事長がお呼びです!」

などと考えていると、

早速呼び出しがかかった。

「俺たち呼ばれたみたいだな」

「はい。では行きましょうか」

という事で、俺たちは理事長室へとむかったのだった。

「学園長?失礼します」

そう言ってドアを開けると、部屋の奥から一人の女性が現れた。

「これはこれは期待のペアのご登場ですね。私はこの学園の理事長、

サラです。よろしく。」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。で、俺らがここによばれた理由は?」

「ここには、その召喚術についてお話があったので呼んだのです。

召喚術というのは普通の人間では使えません。だがあなたたち2人にはそれを使うことができる。これはあなたたちが何か特別な運命を背負っているといっていいと思いませんか?」

確かにそうだ。通常の人間には使うことのできない召喚術。これを俺ら2人は使えるのだ。だとしたら特別な運命があると言っても間違ってはいない。

「でも、俺らはどんな運命を背負っているんですか?」

すると理事長は少し間を空け

「あなたたちには、対「天使になれなかった者」第一部隊に入ってもらいます。ですがまだ学生です。なので本日付けでレベル5に昇格、そして蘭成ゆりの、島崎美波もレベル5へ昇格させます」

「肝心な運命というのはなんなのですか?理事長」

そこに今まで口を挟まなかったセレナが口を開いた。

「それは、まだわかりません。実を言うと過去にも召喚術を使うことができた者はいないのです。だからどのような運命なのかわからない。これが現状です。それでも戦ってくれますか?」

理事長は丁寧な口調で説明してくれた。でもこの召喚術が世界を変える力を持っているかもしれないことは分かった。なら俺のやることは決まっている。

「理事長、安心してください。

俺はファーストインパクトで妹以外の身内を全て無くしました。

それで俺は力を求めました。もう二度と同じ思いをしたくないから。

だから、この力で世界を救うことができるならなんでもやります!そう、パートナーにも誓いましたから」

俺の本音を理事長に伝えた。

「ありがとうございます。ひょうがくん。その力で日本を、いや世界を救ってください。セレナさんは?」

「決まってます。この力で世界を変えたいです。ひょうがのパートナーとして私も誓います。この力でひょうがを、そして世界を守ります」

「ありがとう、2人共。

あなたたちの活躍を期待しています」

そうして俺たちはこの召喚術で世界を救う覚悟を決めて理事長室を後にした。

(あの子達2人に今後の世界の命運はかかってる。2人共頼んだわよ)

豹月たちが立ち去った後理事長は静かに呟いた。

理事長室から寮に帰ると俺たちの部屋の前にはゆりのと美波の姿があった。

「あれ?2人共どしたの?」

「あ!お兄ちゃん!理事長室に呼ばれたから様子を見に来たの。

大丈夫だった?」

理事長室と聞いて何か問題を起こしたと思ったのだろう。不安そうに聞いてくるゆりの。

「大丈夫だよ。あ、そだ。

理事長から伝言だ。

蘭成豹月 ララ=セレナ

蘭成ゆりの 島崎美波

4名を本日付けでレベル5へ昇格させる。だってさ。」

これを聞いたゆりのと美波は唖然としていた。

「は?えーーーーーーーーーーー!

な、なんで?絶対足手まといになっちゃうよ?」

戸惑うゆりの。それに続いて美波も意見を述べる。

「本当だよ!まだ一回しか訓練やってないんだよ?」

「2人共安心しろよ。美波もゆりのも見込みがあるからレベル5に昇格したんだから。それにゆりのは俺の自慢の妹だ!絶対足手まといになんかならないよ。俺が保証する」

そう言ってゆりのの頭を撫でてやる。

「へへ。うん!頑張るよ!

ありがとう!お兄ちゃん♪」

その横から俺を睨む人影が・・・

「ひょうがはいつからシスコンになったんですかー?」

「ちょっと待てよ!なんで俺がシスコンなんだ!確かに自慢の妹だけどさ兄妹じゃ付き合えないしって何言ってんだ俺!」

いきなりシスコン呼ばわりされて混乱する俺。

「ひょうがは兄妹じゃなかったらゆりのと付き合ってたの?」

そこへセレナも乱入。事態は悪化の一歩を辿る。

「いや、そのあくまで兄妹じゃなかったらの話だよ。ゆりのは俺のたった1人の家族なんだ!だから俺はこいつを手放したくないだけだ!」

「それをシスコンって言うんじゃないの?」

美波がもっともなことを告げてくる。

「うっ…」

図星で言葉を濁す俺にフォローが入る。

「お兄ちゃんはシスコンじゃないよ。超がつくほどのシスコンだよ。

そして私は超がつくほどのブラコン!」

前言撤回。全くフォローになっていなかった。キラキラした笑顏を向けてくるゆりの。

「ひょうがー!!!!」

そうして1時間ほどセレナと美波に尋問されたのであった。

夕飯を済ませ部屋でのんびりしているとセレナが話しかけてきた。

「ひょうが?明日の模擬戦なんですが、召喚獣なしでやってみませんか?ひょうがの動きも確認したいので」

「わかった、そうしよう」

ということで明日の模擬戦に備えて確認したので寝ようかと思ったのだが俺のベッドには先客がいる。しかしこの間と違いセレナではない。

「お兄ちゃん?今寝るの?

じゃ、一緒に寝よ!」

何故か俺の布団の上にはゆりのがいた。

「は?なんでゆりのがいるんだ?

美波はどうしたんだ?」

「あー、美波さんならもう寝ちゃった。だからこっそり抜け出してきたの」

この時間に外へでたら間違いなく見回りの先生に見つかって罰を受けさせられるだろう。

「はー、わかったわかった。

今日は特別だぞ。もう抜け出しちゃダメだからな」

「うん!ありがと、お兄ちゃん♪」

というわけで一緒に寝ることになった。俺は2人に挟まれる状態で。

「って、なんでセレナまで一緒なんだよ!自分のベッドで寝ろよ!」

「何故です、ひょうが?

ゆりのはよくて私はダメなのですか?」

「そうじゃなくて、普通に狭いでしょ!」

かなりギュウギュウの状態である。

そもそも3人で寝ることを考えて作られていないのだから当たり前だが…

「 では、明日なら一緒に寝てくれますか?」

「はー、わかったよ。

明日は一緒に寝るから今日は自分のベッドで寝てくれ」

ということで明日はセレナと寝ることになったのだった。

「お兄ちゃん?おはよー。

起きて!お兄ちゃんってば!」

「ん?朝か。んーー!」

と、いつものように伸びをする。

「お兄ちゃん?よく寝れた?

私は久々にお兄ちゃんと寝られて嬉しかったな♪」

「そっか、なら良かった。

って…」

話していて気づかなかった。

ゆりのの後ろで俺を睨む視線に

「な、なんで美波が…」

「なんで?じゃない!

なんでゆりのちゃんがここにいるの? 私はダメだけど、この2人ならいいってわけ?」

すごい形相で問い詰めてくる。

その威圧感に俺は思わずたじろいでしまう。

「い、いや、そうじゃなくてだな。

昨日の夜、美波が寝たあとにこの部屋にゆりのが来て一緒に寝てって言われただけで…」

「じゃ、私も一緒に寝てって言ったら寝てくれるの?」

「お、おい。美波?

お前少し落ち着け。さっきからお前凄いこと言ってるぞ?」

「うるさい!ひょうが!・・・・」

この後美波に尋問されたのは言うまでも無い。

「行きましょう。ひょうが!」

俺たちの初めてのレベル5での訓練。

相手のレベル5のペアと対戦が開始した。

「おう!行くぞ!」

前日の打ち合わせ通り今日は召喚術を使わ無いで戦っていた。

しかし、さすがに相手のペアも強く苦戦を強いられていた。

「くそ、召喚術にどれだけ頼ってたかよくわかるぜ」

「はい。でも自分の戦闘能力も高めておかないといざという時に守ることができません」

「ああ、そうだな。行くぞ!

カンヘルブラスト!」

俺の右手から凄まじい光が放たれる。

「な、なに?これが閃光なのか?

威力が違いすぎる。避けろ!」

相手のペアが閃光を放ち受け止めるも弾かれ大きく飛ばされる。そこへセレナが「剣」をもち駆け出す。

「これでおわりです!ワールドエンド!」

凄まじい攻撃力でその場をえぐった。

「ギ、ギブアップだ」

青ざめた表情で俺たちに負けを認めてくる相手のペア。その様子を見てセレナはとても満足そうだった。

その後理事長にやり過ぎだと怒られたのはまた別の話である。

その後、各自の部屋に戻ってから先程の戦いの時の剣について聞いてみた。

「なー、セレナ?俺が閃光を放った後使った技ってどうやったんだ?剣を持ってるように見えたけど」

そう、あの時確かに彼女は「剣」を持っていたのだ。周りからは光に包まれていて見えなかったかもしれないが俺には見えた。

「はい。あれは閃光で作り出した剣です」

閃光で?と、俺は聞き返した。

閃光を「剣」に変換して使うということは聞いたことがなかったので驚いた。

「はい。閃光に自分のイメージを伝えてそれを形に変えたのです。ひょうがもやってみてはどうですか?

最後の技の威力はすごかったですから」

「そ、そうかなぁ?セレナの最後の技の方が何倍も威力高いように見えたけど…」

そう。俺の技は相手を吹っ飛ば程度だったがセレナの技は違った。

競技場が割れたのだ。どう考えてもセレナの技の方が威力は上だろう。

「いえいえ、私のは1日に一回が限界です。ですがひょうがの技はちがいますよね?」

「よ、よくわかったね。確かに何度でも打てるけど」

「ではやってみてはいかがですか?」

確かにあれを使うことができれば俺は今より強くなれるだろう。ならば、

「わかった、セレナ。よろしく頼むよ」

するとセレナはにこりと微笑み、

「はい!では明日から訓練をはじめましょう!」

ということで明日から授業が終わった後に変換技術の訓練を受けることになった。

そして翌日、いつも通り授業で模擬戦を行っていた。

「はー!カンヘルブラスト!」

俺が閃光を放つ。それに続いてセレナの一撃が放たれる。

「ワールドエンド!」

昨日の反省を生かし手加減したのだろう。今回はその場をえぐることなく終わった。

「ふー、終わったな。それじゃ、この後訓練頼むよ」

「はい!厳しくいきますからね!」

そう笑うセレナに苦笑いで返す俺だった。

そして俺たちは理事長の許可を得てグラウンドを借りて訓練をすることになった。理事長には「くれぐれもものを壊さないように」と、念を押されてしまったのだが。

「では、訓練をはじめましょう」

そう言ってセレナは閃光を剣に変換する。

「ひょうがも自分の使いたい武器をイメージしてください。その武器を思い描いたら閃光にそのイメージを伝えるのです」

俺はイメージする。(俺の使いたい武器、セレナは剣だった。なら俺は守るものが欲しい。全てを守るものが。)

「はー!!こい、俺の力!」

俺は閃光にイメージを伝える。

その刹那、視界を光が埋め尽くした。しかしそれもほんの一瞬だった。俺の手は空だった。

「はー、やっぱり無理か。

難しいんだな、変換技術って」

「いえ、ひょうがはすごいです。

一回であれだけできたらすごいですよ」

と、褒めてくれるのだがやはり悔しい。その後も何度か挑戦したが結果は同じだった。何度やっても武器を具現化させることはできなかった。

そうこうしているうちに夕食の時間を回っていた。

「もうこんな時間ですか、ひょうが?今日はもう終わりにして夕食にしましょう」

というセレナの提案にのり初日の訓練は終了したのだった。

そして、俺は夕食後にゆりのと話していたので遅れて部屋にもどってきた。その時に先に帰っていたセレナとぶつかって押し倒した状態になってしまった。しかも風呂上がりの状態のセレナを・・・

「・・・」

「・・・」

2人共沈黙する。

「ご、ごめん!」

頭がこの状況を理解しすぐにセレナから離れる。

「大丈夫ですよ、ひょうが。

それにしても…」

そう言うセレナは口元に笑みを浮かべている。

「このことをゆりのや美波に言ったらどうなりますかね?」

その場面を俺は想像した。

「申し訳ございませんでした!

本当に申し訳ございませんでした!」

俺はただひたすら謝る。このことをあの2人に知られたことを想像すると背筋がゾッとする。

「ふふ、冗談ですよひょうが」

「良かったー。でも本当にごめんな」

一応もう一度だけ謝っておく。

「ところで、ひょうがはなんで遅かったのですか?」

「あ、ああゆりのと話しをしてたんだよ」

「ゆりのと?」

何やら怪しんでいるセレナ。

「どんなお話を?」

「次の日曜日にどっかに出かけようって話しをしてたんだよ。行きたいところがあるらしくてさ」

さっきゆりのから言われたことをそのまま口にする。

「そうですか。それは2人でですか?」

「うん。なんか2人で行きたいって言ってたからな。特に予定もないしたまには妹のお願いを聞いてあげるのもいいかなーってね」

そう俺の気持ちを言うとなぜかセレナは不機嫌そうだ。

「どうしたんだセレナ?」

なぜか不機嫌なセレナに質問するのだが、

「………」

無視されてしまう。

「おーい、セレナ〜?」

「………」

またしても無視。

その後も俺はなぜか無視され続け就寝時間になってしまったのでベッドに横になったのだがそこにはすでにセレナの姿が…

「…ってなんでセレナが俺のベッドにいるんだよ!」

さっきまで無視するほど怒っていたはずなのになぜか俺のベッドにいるセレナ。

「昨日、今日は一緒に寝ると約束したので」

そんな約束したか?と、昨日の出来事を思い出してみる。

「あ!」思い出した。確かに約束をした。

昨日はいきなりゆりのに一緒に寝ようと言われ驚いていた時にセレナには明日一緒に寝ると確かに約束をした。

「はー、しゃあねーな」

「ありがとうございますひょうが♪」

ま、これでセレナの機嫌が良くなったのでよしとしよう。

次の日も訓練内容は同じだった。

模擬戦ではセレナとともに召喚術の力を使いフィニッシュはセレナが変換術で決めるといういつものパターンで勝利した。その後はセレナと変換術の訓練をしてから夕食を済ませ今に至る。

「ひょうが、お風呂先にいただきました」

「おう!じゃ、俺も入ってくるわ」

そう言って入ったのだが何やら部屋の方からゴソゴソと物音が聞こえる。(ん?なんだ?)と、思って早めに風呂を上がり部屋を覗くと何やら俺のベッドを見ているセレナ。

「どうしたんだ?」

セレナに声をかけると

「ふぇ!?」

と、間抜けな声を出してベッドの角に頭をぶつけてしまった。

「いたーい」

「お、おい。大丈夫か?」

心配して近寄るとセレナのてから何かが落ちた。それを拾ってみてみる。

「なんだこれ?」

そこには男性が好む女性の仕草ランキングと書かれていた。

「?、どうしたんだこれ?」

「え、えっと〜

ひょうがはどんな仕草が好きなのかと思いまして・・・」

その後セレナは事情を説明してくれた。まぁ簡単に言うと美波からこの本を渡され読んでいたら実践したくなった、ということらしい。

「はー、たく。今日はもう寝るわ。

訓練で疲れたからさ」

といって俺はさっさとベッドに潜り込み目を閉じたのだった。明日は久しぶりにゆりのとの外出ということに胸を躍らせながら。

その頃、理事長室で……

「…ということです。」

「そう、明日ね」

教官と理事長は明日のことについて話していた。

「とうとうきたのね、天使になれなかった者による進軍が」

このことを生徒たちは知らない。

明日の外出に胸を躍らせているひょうがも…

そして翌日、俺はセレナと食堂で朝食を済ませてから別れてゆりのと校舎の前で合流した。

「ゆりの!お待たせ!」

「あ、お兄ちゃん!きたきた、それじゃ行こ!」

とてもハイテンションなゆりのとともに昨日のうちに決めておいた遊園地へ向かった。電車を乗り継ぎ遊園地へ到着した俺たちだったのだが

「さすが日曜日、すげー人だな。ゆりの、はぐれないように俺の手繋いどけ」

そう言って差し出した手をゆりのが握る。

この光景を遠くから見ている人影がある。セレナと美波だ。

「くー、いいなーゆりのだけ。ずるーい!」

「しょうがないですよ。あの2人は兄妹なんですから」

「だよねー、でもセレナも部屋一緒でしょ?ゆりのも兄妹だし、私だけ幼なじみってなんか不利じゃん!」

そういうこの2人はゆりのがひょうがと2人で遊園地へ行くということでその様子を見に後をつけてきたのである。

「はー、私も今度ひょうがにどっか連れてってもらいたいなー」

「そうですね〜」

と、2人同時にため息を吐く。

その頃ひょうがとゆりのは、

「ねね、お兄ちゃん!

あっちのジェットコースターいこ!」

「お、おいゆりの!」

ゆりのは俺の手をグイグイ引っ張っていきジェットコースターの列へと並び乗ったのだが、

「う、うわー!」

「キャー!楽し〜い!」

と、怖がっている俺とは対照的にゆりのはものすごく楽しんでいた。

その後乗り終わった俺らは昼食

を取るためにフードコートにきていた。

「ゆりのは何食べる?俺が買ってくるよ」

「んー、じゃあたこ焼きお願い!」

「おー、了解!」

ということでたこ焼きと自分の分の焼きそばを買ってゆりのの元へ戻る。

「おーい、買ってきたぞー」

「お兄ちゃん、ありがと!」

と言いながら受け取るゆりの。その時に一つお願いをされた。

「ねー、お兄ちゃん?ここくる時にプリクラあったでしょ?久しぶりに一緒に撮ってよ!」

確かにここに来る途中で見た気がする。

「分かった、いいよ。でもゆりのとプリクラなんて本当に久しぶりだな」

そこでゆりのは俺を睨み、

「私以外とは最近撮ったの?」

と、聞いてくる。それを俺は慌てて否定する。

「イヤイヤ、誰とも撮ってないよ。

人生でゆりのとしか撮ったことないと思うぞ」

そう答えると満足そうな笑みをこぼしながら

「そっか、なら良かった。じゃそろそろ行こ‼︎」

と、俺の服の袖を引っ張っていくのだった。

「わー!やったー!お兄ちゃんとのプリクラだ!宝物にしよ!」

「そこまでのものじゃないだろ」

そういう俺も内心かなり嬉しかったりするのだ。

「えー、だってなかなかこういう機会ないじゃん。だからお兄ちゃんとの思い出は大切なの!」

「そっか。俺もこのプリクラは宝物だな」

などと2人で笑っていた時だった。

「ウォーン!ウォーン!」

園内にサイレンが響き渡る。

「な、なに?」

「これって、まさか!?」

園内を見渡すとまだ少し距離はあるがそこには、

「お、お兄ちゃんあれって…」

「あぁ、間違いない。

天使になれなかった者だ…」

まさか現れると思っていなかったゆりのはあたふたしている。俺は、

復讐心に燃えていた。あの光景が頭の中を駆け巡る。

「ゆりのは一般人の避難を頼む!」

「あ、お兄ちゃん!」

ゆりのは心配していたが、

(絶対復讐してやる。こんな目に合わせたあいつらに!)

もう声は聞こえていなかった。復讐という2文字しか頭になかった俺は走り出した。みんなをあんな目に合わせたあいつをぶち殺すために!

「おらぁーーーーっ!」

俺は閃光を放つ。少しよろめいたあいつへ、

「くそが、これでもくらえ!

カンヘルブラスト!!」

特大の閃光を叩き込む。それをくらい倒れるあいつ。

「雑魚が!終わりだ!こいよ、アナト!!」

俺が両手を前へ突き出して召喚術を使用しようとする。しかし、後ろからの攻撃によってそれは阻まれる。

後ろにはもう一体の天使になれなかった者が…

「マジかよ…

これじゃアナトを呼べない」

そこへまたもや攻撃がしかし今度のは味方の攻撃だった。

「ひょうが!助太刀します!」

「私も助けに来たよ!」

そこに現れたのは、

「セレナ!それに美波も!

助かる、サンキューな!」

俺とゆりののパートナーだった。

それも束の間、次に聞こえてきたのは悲鳴だった。

「キャー、お兄ちゃん!」

後ろを向くとそこには触手で持ち上げられたゆりのの姿があった。

「!?、ゆりの!」

それを見かねたセレナは、

「ここは私達が食い止めます。

だからひょうがはもう一体を!」

「分かった!そっちは任せたぞ!

今行く、ゆりのーーーーっ!」

俺は全力で走った。頭の中であの時の光景が蘇る。天使になれなかった者の光線にやられたお父さん、

触手に捕まり身動きが取れずに殺されたお母さん。もう二度こんな光景は見たくない。俺は無意識のうちに拳を強く握る。

「いい加減にしやがれ!人の大切なもんをどんだけ奪えば気がすむんだてめーは!」

その瞬間俺は地面を強く蹴り上空から閃光を放つ。

「くらえ!カンヘルブラスト!!」

見事顔に命中し後ろに倒れるあいつ。

「ゆりの!」

俺はゆりのに絡みついている触手を

切った。

「大丈夫か?怪我はないか?」

心配する俺をよそにゆりのはキョトンとしている。

「う、うん、大丈夫だけど、

お兄ちゃんその剣どうしたの?」

ゆりのに言われて初めて気づく。

俺が今手にしているのは剣。

そう、セレナに俺えてもらっていた変換術なのだ。

「で、できた。これが変換術か。

って感心してる場合じゃない。

ゆりのはここにいてくれ。

俺がぶち殺してくるからよ!」

「うん分かった。待ってるよ。

必ず戻ってきてね、お兄ちゃん!」

俺はゆりのに頷き地面を蹴る。そして再度両手を前に突き出して呼ぶ。

「こいよ、アナト!!」

その瞬間、上空に巨大な影が出現する。

「行くぞ!光射す道となれ!

シャイニングオーバードライブ!!」

そう叫ぶと同時、アナトからとてつもない威力の閃光が放たれる。それをまともに食らったあいつは後ろに倒れる。

「決まった!これでフィニッシュだ!

フレイムクロスギア!!」

先程習得したばかりの変換術を使い閃光を剣に変え、倒れている天使になれなかった者を真っ二つに切り裂く。その途端にあいつは白い煙を上げながら消えて無くなった。

「お兄ちゃん!」

俺は勝ったことを確認してアナトの召喚を解除する。それと同時にゆりのが俺に抱きついてくる。

「おめでとう!カッコよかったよ!」

俺はゆりのの頭を撫でながら、

「ゆりのが無事でよかった。

本当によかった!」

そう言って俺は強くゆりのを抱きしめる。直後、

「ひょうが!」

怒気のこもった声が俺へ向かって放たれる。

「美波!それにセレナも。

お疲れ様」

俺はゆりのを抱きしめたままの状態で言った。

「はい。ひょうがもお疲れ様です。

ところで…」

と、セレナは視線をゆりのに向ける。

「いつまでそうしているんですか?」

「ずっと!」

ゆりのが即答した。そしてさらに強く抱きしめてきて、

「言ったでしょ?私は超がつくほどのブラコンでお兄ちゃんは超がつくほどのシスコンなの!」

と、満面の笑みで2人に告げるゆりの。その後に教官達が迎えに来るまで尋問にあったことは言うまでもない。

その後学校へ戻った俺たち4人は理事長室で今回の事件についての報告を済ませ夕食を食べる為に食堂にいた。

「なー、セレナと美波?

そういえばさ、なんで今日遊園地にいたんだ?」

「ぶっ!」

2人同時に吹いた。

「お、おい。大丈夫か?」

「え?だ、大丈夫にきまってるでしょ!」

「そ、そうですよ。大丈夫ですよ」

「あのー、2人共?なんだか動揺してないか?」

明らかに様子がおかしい。

「い、いやそんなことないよ!」

「そ、そうですよ」

やはりおかしい。

「俺たちをつけてたのか?」

「・・・・・」

「つけてたんだな?」

「はい」

「そうです」

とうとう2人ともしぶしぶだが白状した。

「なんでそんなことしたんだ?」

「それはひょうがが気になったからです。ね?美波」

「うん、そう」

はー、俺はため息をついた。つけられたことには納得はしていない。

だけどこの2人がいなかったら今ここにゆりのがいなかったかもしれないのだ。この2人のおかげでゆりのを助けられた。だから、

「ありがとな!つけたことには納得してないが2人のおかげでゆりのを助けられた。それは感謝するよ。ありがとう」

そういうと2人共笑顔で、

「うん!」

そういうのだった。

その後ろでは1人の少女が2人のことを睨みつけている。が、俺はスルーして話しを続けた。

「じゃ、改めて今度は4人でどっかに出かけるか」

「うん!」

「はい!」

「えーーーーっ!」

と、嬉しそうな返事が返ってきた。(1人は除く。)

そんなこんなで俺たちの日常は過ぎていく。いつか復習を成し遂げる、その日まで…


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