普通こんなクソゲーありますか?
ゲームの名前は、『キミに一輪の花を』略して、『キミハナ』である。私は購入時にくっさいネーミングセンスだと思って、たいして期待はしていなかったのだが、実際にやってみるとある意味はまってしまった。
中世ヨーロッパのような雰囲気の魔法や精霊、他にも不思議な存在がたくさんいる世界が舞台だ。
主人公は平民でありながら、魔力を持った為に普通は、貴族しか入る事の出来無い王立魔法学院に入学する。そこで、運命の相手に出会うという何処かで聞いた事のあるストーリーなのだが、ここからおかしくなる。
それは、主人公は王立魔法学院に入学はしたものの、たいした魔力は無く、精霊などには嫌われるというものだ。ここで、私を含めかなりの数のプレーヤーが愕然とした。主人公のスペックがこんなに低くていいのかと、普通に考えてそこはチートにするべきではないのかと。
しかも、この主人公、最後の最後まで魔力が上がったり特別な事が起こったりはしないのだ。ゲームでは、期末テストと言う名の、全校生徒総出での総当たり戦を攻略対象キャラと二人で受け一定の基準を超える事が出来れば、そのまま二人は幸せいっぱいのままゴールなのだが、この試験、全く主人公は役に立たない。寧ろ足を引っ張り、それを攻略対象キャラが俺に任せろみたいなノリで一人で合格へと導くのだ。ここでも私達プレーヤーは思った。主人公…、いらなくね?と。
ここまでの説明を聞くと、何で攻略対象キャラ達は主人公に惚れたのか全く分からないだろうがこの主人公、とてつもなく可愛いのだ。そして、少しおっちょこちょいだが、素直で努力家、家が食堂であることもあって、料理も出来るというヒロインとして(この部分だけは)完璧なのだ。そして、攻略対象キャラ達には、それぞれ人に言えないような辛い過去を持っている。それを主人公が一緒に悩んで解決しようとしてくれる。そんなところに攻略対象キャラ達は次第に惹かれていくのである。
だが、ここからが私の中で問題としていて、また、ゲームの方でも製作者がネットで叩かれていたところだ。まず簡単に私、つまり、シェリーナの事を説明してしまうと、主人公とは違い、魔力が未知数、精霊の中でも最も力の強い精霊王と契約をしていて、尚且つ絶世の美女というここにチートここに極まれりというハイスペックさ。家は侯爵家だが、父親はシェリーナが小さい頃になくなってしまっていて、母親や使用人達と仲良く暮らしている。母親は元々体が弱く、そんな母親の面倒を見ながら領地の事も使用人と皆さんの手を借りながらも一生懸命頑張っているという主人公よりも主人公らしい設定。
いや、もうお前が主人公になれよ。と思ったのは私だけではないはずだ。
だが、シェリーナは能力及び自らの美貌を学院では隠していて、かなり魔法も手加減をしながらやっている。その理由は彼女の婚約者にあるのだが、まぁ、それは追い追い語るとして、攻略対象となっているのは、ほとんどが学院でも人気者で、女子生徒の憧れの的。
そんな人物が、貴族でも無い庶民と親しくするのだ。反発が起きるのも仕方が無いと言えるだろう。主人公は当然嫌がらせを受ける事になる。それに攻略対象キャラ達は、気が付きそれを止めさせる事で更に仲が深まるのだが、そこにシェリーナが幾つかのルートで関わってくる。
それは、どれもこれも、酷いものだった。家の没落や一家離散、国外へ追放など、様々あったが、その中でも幻の逆ハールートでのバットエンドは凄まじいものだった。
シェリーナの婚約者は攻略対象キャラの中でもメインキャラで、ゲーム中に沢山のファンがいるという設定だ。そんな人の婚約者という立場の所為でシェリーナは元々、女子生徒達に妬まれていた。しかも、シェリーナの性格は控えめで少し天然が入っていて、彼女自身そんな悪意に気づきもしなかった。そこで、主人公をいじめていた首謀者は、その罪をずっと目障りだったシェリーナに被せた。攻略対象キャラ達は怒り、シェリーナを学院から追放した。それに味をしめたいじめの首謀者は、他にも自分がやった罪やその家の罪までをシェリーナや彼女の家に被せる。その中には、国の法律で極刑になるものまであったので、シェリーナが主人公をいじめていたと勘違いしている攻略対象キャラ達は、シェリーナをこれ幸いと処刑し、彼女の家族を国外追放してしまう。
きちんと調べれば分かった事だろうに後悔するのは少し遅かった。なぜなら、シェリーナには精霊王という存在がいたからだ。この他のルートでもシェリーナは辛い目に合うが、精霊王はシェリーナが懸命になって止めていた為に何もしなかった。しかし、彼はこのルートでは怒りに任せて国を滅亡させようとする。まぁ、当然だよね。
そんな非常事態に王族や貴族達も慌ててその原因を探す。すると、なんと自分達の息子達がろくに調べもせずに、殺した相手が精霊と契約をしていて、しかもその精霊が最上位である精霊王だというのだから、それに驚くとともに、怒らせた原因の重大さに慌て、冤罪で殺してしまった少女やその家族への申し訳なさから、攻略対象キャラ達は全員家から追い出されてしまう。そして、何の後ろ盾もなくなった主人公と攻略対象キャラ達は辛い目に会いながら生きていくという内容だ。
確かに主人公達は家を追い出され苦しい生活をする事になる訳だが、生きてるだけマシである。よく考えて欲しい。私、死んでますけど。他のルートでも、これ以上は流石にないがシェリーナは殆どのルートの中で酷い目にあっている。その上で、主人公達が幸せになっているのだから、当然この事で、制作会社は批判を受けた。と言うか、そもそも処刑までしといて私知りませんでしたなんて巫山戯てるだろ。仕事しろよ仕事!!
この頃にはプレーヤー達はかなりメインキャラ達の事を嫌いになっていて、ゲームをやっている理由もせめて一つだけでいいから、シェリーナが幸せになっているルートを見たいという想いからだった。
結論から言うと、一つも無かったが。
これもゲームの中での事だったからまだ、他人事であり、ただのストーリーなのだからと思えていたが、私自身がそのシェリーナなのだから他人事では無く私事だ。どうにかして私や家族が生き延びられる道を見つけようと、そして、婚約者なんて絶対作らないと、記憶が戻った反動で熱を出して寝込んでしまいながら決意した。
自分の文章能力のなさに絶望している今日この頃です…。それでも読んでくださった方がいらっしゃるなんてと感涙のあまりおかしな顔になってしまいました。