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言えない言葉(本編&番外編「例えばこんな高校生活」シリーズ読了後推奨です)

祭り、引き続き開催中であります。

そして、今回は坂本君となりました。

流れ的に「例えばこんな高校生活8」でも良いかなとは思ったのですが……。

取りあえず単発で……いずれまとめる事を考えないとかもしれませんが。

久しぶりに途中で視点切り替え入ります。

「これ、ちょっと緩んでるな……」

「え? ほんとだ、これで3個目? 思ったよりあるね」


 数日前、学校に行くと美化委員の緊急集会のお知らせが掲示されていた。

 定例会議はついこの前終わったばかりだったし、なんの用事だ? なんて藤堂と言いつつ向かったその場で言われた事は、教室内の机と椅子の総点検、だった。

 なんでもつい最近、悪戯や経年劣化によるネジの緩みから来る事故、なんていう物が幾つか起こり、注意喚起されたらしく、我が校でも一度確認をと言う事になったらしい。

「なってみて初めて思ったけど、美化委員ってこんな事もするんだね?」

「みたいだな? やってみないと分からない事って結構あるな」

「……あは、確かにそうかも……本当にね」

 ん? 妙に含みのある笑顔に、しみじみとした同意、何かあるのか? とは思ったが、藤堂は軽く首を振ると

「さってと、後半分! 片付けちゃお」

 勢いよく隣の列の一番前の机へと移動するのに、大人しく従う事にした。


「ふむ、机が1台、椅子が5脚? でもどれも締め直しでokそう?」

「天板に傷みもないし、ドライバーで事足りそうだな、じゃ、俺が用具室取りに行って締め直しとく、報告もしとくから藤堂は帰っていいぞ?」

「も~、またそう言う事を! 報告書は私が書いておく、坂本がドライバー持ってきて、締め直して貰ってる間に書類終わらせておくから、一緒に提出行こう?」

「……了解、じゃ、取ってくる」

「はーい、いてら~」

 ひらひらと手のひらを揺らすと、藤堂は目の前の書類に取りかかり、俺は教室を出ながらその横顔を、ついまじまじと見つめてしまう。

 何のこと無い同じ委員になった奴同士のちょっとしたやりとり、中学の頃からそんな事何度だってやって来て……そんなかでこっちが重めに仕事を請け負えば、甘い声音でありがとう、なんて労われても来て……それが俺は嫌いじゃ無かった、筈なのに。

 だけど、そんな事さえさせてくれない藤堂(コイツ)から、目が離せない

 2人だけの放課後、やってる事は教室の備品のチェックなんて言う地味極まりない作業、だけど……。


「締め終わった、そっちはどうだ?」

「ん、これで終わる……あ、でも、ひとつネジ山潰れてて締め直せなかったあの椅子、どうしよう?」

「……じゃぁ、お前に椅子の交換頼んで良いか? ネジ山の具合……多分問題ないと思うけど悪戯の可能性全くないとは言い切れない、締めたの俺だし自分で報告した方が判りやすい、か?」

 いつもの俺ならありえない割り振り、でも、こいつが椅子くらい物ともしない事は知ってるし、効率重視の提案をしてみれば

「お? 嬉しいね、了解」

「変な奴、力仕事だぞ? そっち」

 すると藤堂は

「そんな事無いよ、なんだか、やっと坂本がちゃんと私を見てくれた気がして……」

「な……に、を?」

「や、判るよ? 普通女の子は男子より力弱いし、分担作業もそれを考えれば男の子が多めでも良いと思う、ただ、出来るのにずっとそっちばっかに重い物ってのもなんか申し訳ないなって、落ち着かない……でもさ? これも私の我が儘だよね? だって、その坂本の気遣いって結構自然な感覚なんでしょ?」 

 言っている事が、判るような、判らないような? ただ、俺が作業をちゃんと割り振ったのが嬉しいって言ってるのはなんか、感じる

「まぁな? 大抵の女子はその椅子だって、重いって言うと思うぜ?」

「だから、坂本は私の為にポリシー曲げてくれたのかな? って思ってね、それが嬉しい」

「そんな……事、で?」

「私にとっては大きいよ? だから、さっきもね、ほら、やってみないと判らないって言ってたでしょ?」

 ああ、そう言えば……それに返した藤堂の言葉は何だか意味ありげで

「美化委員もだけど、坂本と組んで、ってのもね? 色々あったけど今は一緒に仕事出来て、良かったなって、思ったからさ……じゃ! 行って来る」 

「っ!?」

 そんな言葉を残し、椅子を軽々と片手で持って教室を出て行く背中を何でも無いふりをして見送るのが、精一杯だった。

 こんな……こんな事くらいで、嬉しげに、笑って、……俺たちのスタートがここならば、この先に望みを持つ事も許されたのに。

 後悔と罪悪感とくれた言葉の柔らかさが混ざり合って、目眩がする、どんなに過去を悔いても戻らないし、消えもしない、それはあの時殺したはずの想いが、どうやっても消しきれないのと同様で。

 隣に居るだけで、少し早くなる鼓動、今まで知らなかった友達としての藤堂は、素直で、よく笑って、女子にありがちな甘やかさは全くないのに、心に直接触れてくるような言動に胸が、締め付けられる。

 今となってははっきり自覚している、あの頃の俺は、あの瞳にちゃんと映りたかった、いなすのでも、対峙するのでも無く、例えば、あの日の鳴木の様に……それが、今、転がり込むように手の中にあって、こんな風に一緒に居ると、やっぱり、って、思う。

 俺は、本当にずっと、藤堂が……。

 今更ながらの重すぎる自覚に、思わずしゃがみ込んだ俺は立つ気にもなれな……くて。


「あれ? どうしたの? 坂本、体調悪い?」

 戻って来たら、さっきと同じ場所にしゃがみ込んでいる坂本に驚く

「……っ、ご……ん」

「え? 疲れちゃった? だから途中で変わる……っ?」

 片手で口の周りを覆いその指先がかすかに震えているのに焦って、熱でもあるのかと額に向けて手を伸ばせば、縋るようにその手のひらを握りこまれた

「ごめん……っ」

「いや、いいけど……大丈夫? 気持ち悪い? 何処かが痛い?」

 作業中から調子、悪かったのかな? なのに私をメモ係にして、ずっとチェックしてくれてて……。

「ごめん……本当に」

「坂本は何も悪くないよ? 落ち着いて……」

 片手を握られたまま、そっと背中に手を置くと、はっきり判るほどびくりと体が震える

「!? ごめん、痛かった?」

 けれど、ふるふると頭は横に振られ……迷いつつそっとそのまま手を動かせば、わずかに体の力が抜けたように感じて続けてみる

「……保健室行こ? 立てる?」

「……ごめん」 

 また、横に頭を振りながら、出てくる言葉はそればかりで……。

「いいよ、落ち着くまで、休んでよう」

「ごめんっ…………」

 今にも泣き出しそうに苦しげな顔をしながら、何かを押さえるように唇をかみしめて、出てくる言葉は、ひたすら、そればかりで……。

 顔を見ると苦しそうにも思えるけど、触れても体温はそこまででもないし、ものすごい痛みをこらえているという感じでも無い、先生を呼びに行こうにも私の手を握ってしまっているから、立つ事も出来なくて

「……ゆっくりで良いよ? ただ、何処かが凄く痛いとか、そう言うのじゃ無いんだね? 少し休めば大丈夫?」

 するとコクコクと今度は縦に首が振れるから、まぁ貧血みたいな物かなと、ちょっとほっとして

「……ごめん」

 相変わらず壊れてしまったみたいにそれしか言わない坂本の背中を、ゆっくりさすりつつ、回復を待つ事にした。


「……ごめん」

「もう、それは判ったから」

 それから程なく、回復した様子の坂本は慌てたように私から離れ、でも急に立ったりするから私の持ってきた椅子に足を強打し、そのままそこにしゃがみこみこむと、ばっと顔を上げて、何度目かのそれを口にした。

「ん~、じゃぁ、報告は私がするよ、ネジ山入らなかった、で良いでしょ?」

 でも、謝りまくる癖にやけに強情な彼は報告は自分が行くと聞かずさっさと教室を出るから、追いかけようかとも思ったけど……後ろも見ずに出て行く背中にさっきの今でそこまでするのも嫌がるかなと、教室で待つ事にした。


「……居たのか、帰ってて良かったのに」

 それは正解だったんだろう、戻って来た坂本は私を見てちょっと困ったような顔をした。

 まぁ、普段女子に甘いらしい彼だけにあんな姿を見せた後はほっとくべきとも思ったけど

「校内でなんかあっても大丈夫と思うけど、通学路で何かあったらまずいでしょ? 悪いけど一緒に帰って貰うよ?」

「え? ……いや、もう……平気、だと」

「それ以上嫌がるなら、坂本の鞄、拉致するけど?」

 人質ならぬ物質代わりの鞄を掲げると、諦めたようにこくりと頷いてくれた。 

  

切り時が判らず長くなってしまいました、お楽しみいただけていたら嬉しいのですが。

書いて投稿してを繰り返しているので、こちらばかり更新してしまっておりますが、柊高校の方も準備はほぼ出来ておりますので、予定通りあちらは月曜日更新致したいと思います。

よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] あの時の自分の行動が紗綾ちゃんへの好意からだと気付いてしまうと、後悔ばかりの坂本くんにとっては、今の状況が嬉しいような辛いような複雑な気持ちですよね。 紗綾ちゃんがこの手の事に鈍感なのが救い…
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