壊れた鍵(本編読了後、推奨かつ、とってもパラレル注意! です)
いつもより長めの言い訳をさせて下さい。
何となく自作を読み返して居て、自作パラレル「波紋 おまけ」の
もし「私の事好きなの?」と言われたのが一条だったら? というシチュエーションに嵌まってしまい気がつけば(私にしては)長文が添削含め2日で仕上がってしまいました。
高校生編よりもパラレルです、あっちが2回ならこっちは2乗分のパラレルです。
色々荒く、ですが、2日間頭がこれでいっぱいになった熱量が愛おしく、思い切って投稿させていただきました。
いつもよりも重めの妄想にお付き合い頂けましたら嬉しいです。
誰も居ない階段の踊り場。
読めば判ると、中身も伝えずに渡される封筒……心当たりは、あった。
今月末にあると聞いていた塾の送別会。
でも、それを口に出そうとすると、予想外にツンと鼻の奥が熱くなるのに慌てて……。
「こんな所で、こんな手紙……私の事、好きなの?」
あからさまな冗談、なのに彼はその瞳を驚愕に揺らすと、ふと、諦めたように力を抜いて
「あぁ……好きだ」
ビスクドールのような白皙の頬に音も無く流れたひとすじの涙に思わず息をのむ
そんな訳無いだろ、何を馬鹿な事を……って、言ってくれれば、私も笑っていられるって、思ったのに。
私の驚く顔に、一条は苦しげに私から顔を背けると
「冗談だ、気にするな」
踵を返したけれど。
「……一条?」
小刻みに震えてさえ見える苦しげな背中に思わず声を掛け、そっとその肩に手を触れると
「……っ」
そのまま膝の力が抜け、その場に座り込んでしまう。
「……大丈夫、だ、放っておいてくれ」
やっと聞き取れるかどうか位の小声でそんな事を言われるも、明らかに様子のおかしい一条にそんな事は出来るはずも無くて
「馬鹿、みたいだろ、俺がお前を、なんて……」
震える声に、息を呑む、流石に冗談な訳はないし
「悪い、これは、事故だ、だから、このまま帰って、忘れていい」
いつも耳障り良く落ち着いているはずの声は震え、どこか恐れるように顔を上げたその瞳の涙は止まってたけれど、真っ赤で
「本当、なんだね?」
「……っ」
黙り込んで顔を伏せるのに、罪悪感が募る
「ごめん、私、無神経な事、言った……全然、気が付いてなくて」
「隠してたんだから、当たり前だ、お前は悪くない……謝るのは、俺の方だ」
「なんで?」
「迷惑……だろ? 友達って思ってる奴から、こんな風にいきなり……俺は2度とお前に理不尽な感情をぶつけたりしないって、決めてたのに」
「理不尽って! そんな、一条の想いをそんな風に思ったりはしないよ!」
そりゃ確かに、吃驚はした。
だってあの一条だよ? 整った顔と落ち着いた態度で女の子には大人気で、だけど私の前ではいつも眉間にしわを寄せて、すぐに怒る。
昔は随分嫌味を言われて、今はそれは無くなったけれど、つまりはずっと、彼にとって私は、女の子とは思えないから……だと、思って、いて
「お前だけが、特別だった……ずっと、だから、お前にだけは、感情を抑えられなかった」
何処かが痛むかのように苦しげに続けられる言葉、その唇から紡がれる言葉は明らかな好意……なのに、何で?
「私、ずっと一条を苦しめていたの? そんなにずっと辛い思いを?」
「気にするな、こんなの自業自得、だ……ただ、俺はこの想いがお前を傷つける事だけが……怖くて」
漸く少し落ち着いてきた彼は、だけどさっきから、私の心配ばかりで……
「傷ついたり、なんて……でも、一条が、私居ない方が、良い、の?」
さっきの好きだって、言葉。
冗談や嘘とは思わないけど、私の知ってるその言葉は、こんなにも苦しそうな顔で言われることではなくて、だから、もしかしたら何かの勘違いなのかも? とか思ってしまう。
それだったら、プライドの高い一条の事、もう触れずに、そっとしておいた方が良いのかも? って……
「本当は、そうしてくれって、言うべき、だろうな……だが……」
いつものきっぱりとした物言いとは違う、迷うような声、だけどそれはいつもより凄く、優しくて……
「だけど、最後にこれだけは言わせてくれ……俺は、お前が居ないほうがいいと思った事は、一度もない、あの頃、お前に突っかかってた時でさえ……俺が今、辛そうにお前に見えてるのだとしたら……もう、許されない、から」
切なげにため息混じりに語られる言葉に、私はどうしたらいいか分からなくなってしまう、だけど、なんだか……
「許されないって何? 最後? え? 一条、どっか行っちゃうの?」
「言ってしまった以上、側になんて居られないだろう? お前がこんな気持ち受け入れられる訳が無い事くらいは分かってるんだ……この先、俺が近くに居れば、困るのは自分だぞ?」
「そ……んな? だって、高校だって」
「あぁ、まぁ、……流石にそれだけは、許してくれないか? 10クラスもあれば同じになる可能性は低い……あとは近づかなければ」
「……っ」
「きっとすぐに忘れられる……」
一条はもう落ち着いていて、でも聞いた事が無いほど優しい声でそんな事を言う
「大丈夫だ、藤堂」
「……っ、…………だ、よ」
「ん?」
「やだ、やだよっ!」
踊り場に座った一条の制服の胸元を思わず掴んでしまう
「お前……でも、無理だ、俺の鍵はもう、壊れて、多分、もう抑えきれない……この想いはお前を追い詰めるだけだ」
「たしっ……かに、私は鈍感で、女の子らしくなくて、一条の気持ちもずっと知らなくて……でも、こんなっ! こんな風に、さよなら、なんて」
「判ってくれ、俺はもう、お前を傷つける事だけは、しないって……」
「一条は、もう、私の近くには居たくないって、思うの? こんな鈍感で馬鹿な私は……」
ああ、そうなのかもしれない? あんなに辛そうだった一条、私は解放してあげるべき………? なら
「……っ! そんな訳っ、無いだろっ」
急に激高したような声がして吃驚して顔を上げると、苦しげに寄せられた眉間のしわと、握りしめられた一条の拳が目に入って……、固く握りしめられて、かすかに震えて見えるそれが、頑なな一条そのものに見えた
「好きだ、今だって……たとえお前が気がつかないままでも、俺はお前の側に居るだけで、良かったんだ……でも、こんな俺は、もう、無理だろ? お前の重荷に、なる、だけだ」
「なら、一条が許してくれるなら、側に居ても、良い? 好き、とかって気持ち、まだ私は判らない、でも、教えて? 頑張る、から」
祈るような気持ちでその握りしめられた拳に触れて一条を見つめると
「馬鹿……だな、頑張るとか、そういう事じゃない……だが、藤堂、俺が居ないと、寂しい、のか?」
「当たり前だよ!」
「……っ、一度だけ、お前に触れて、良いか?」
揺れる瞳でまっすぐ見つめられ、思わず息をのんで、よく意味も分からないまま、こくりと頷くと……っ!
ギュッと、心ごと包まれるみたいに、抱きしめられた
「……お前が、好きだ……だけど、この気持ちはもう一度、鍵をかける、かけて、見せる……だから、お前は忘れろ」
「……っ! それじゃ、また、一条がっ」
「良い、大丈夫だ、約束できないなら、もう、俺はお前には近づかない」
良い、の? そんな私にばかり都合の良い願い……こんなの
「お前が頷いてくれるなら、俺は戻れる、から」
だけどどこまでも優しい声に、私はもう、それしか出来なくて……。
その腕の中でこくりと頷くと、そっと、腕が解かれて、一条ももう、憑きものがとれたように、いつものような顔をして
「悪かったな、帰るぞ? 鞄教室だろ、行くぞ」
すっと立つ、もう震えてた事なんて信じられない背中と声。
一瞬前とあまりに違う気がして、私は……。
お付き合い頂きありがとうございました。
勢い重視の話ですので拙い点は多々あるかと思いますが、読んで頂きまして誠にありがとうございました。




