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自覚したての熱(二章 修学旅行 2 以降推奨です)

新作の推敲中に、以前書きかけたネタを見つけてつい頑張ってしまいました。

タイトル通り自覚したての一条君あたりのお話です。

楽しんで頂けましたら幸いです。

 とんっ! と、身軽にリフトを降りる同じスキーウェアの奴がひとり、そいつはキョロキョロと落ち着かなげに左右を見回し……けれど、ふと目前の稜線に目を向けると、何かがこみ上げたようにたまらなく楽しげに拳を握りしめ、駆け出す。

 間違いない、藤堂だ。


 なんて俺が口に出すまでもなく、鳴木はアレか? なんてほぼ確信した口調で聞いてくるのに頷けば、他のも見といてくれなんて言いながらも、歩きにくい雪上を一直線に走って行く。


 昨夜、目印の話をし損ねたとか焦って、俺がそんなことは問題にならないと言った時は疑わしげな目を向けた……なのに、さっきのほんの少し感じた藤堂らしさに一直線に走って行くのにため息が漏れる。


 ……たぶん、あいつが自分の胸奥の思いに気がつくのも、時間の問題。


 無自覚でこれなら、自覚したならどう動く? 

 藤堂を揶揄(からか)いはしても、傷付けたことはなく、どころか、常に関心を向けていたあいつ。

 1年以上自分の想いを読み違え続けた挙句、攻撃してた俺とはきっと……立ち位置さえ大きく違う。

 現に最近では、塾の教室で1つのプリントに額を寄せ合って解くなんてのも日常になりつつあるわけで。 


 なめらかな急斜面に所々瘤のような隆起、中盤で立ち止まりコース取りをシミュレートしていると

 「……っ」

 クスリと笑うような吐息が聞こえた

「綺麗な滑りだね」

 頬を撫でる風と弾むような声を残し、複雑な隆起を避けもせず挑むように滑り降りていく藤堂。

 「……んっと、無茶な奴」

 思わずその背を見つめてしまえば、いつの間にか隣には呆れたような言葉を呟く癖に、まぶしげに滑る軌跡を見つめながら、心底愉しげに笑う鳴木が居て、そのままコースこそ隆起を避けたがカーブで減速さえしない鋭さで追いかけていくのに、あえて、ゆっくりと息をつく。

 ここで転ぶ訳にはいかない、だが、これ以上あいつらに遅れを取るのも面白く無い。


 いつもなら避けるこぶも追い風もあえて直進しつつコースを探る、目前のカーブはいつもの俺なら減速するところだが……

 姿勢が安定した状況で地面に沿うように、けれどスピードはそのままで、風が頬に当たるのに細胞から目が覚める

 「ふっ……」

迫る小さいとはいえない瘤にそのまま体重を乗せれば、一瞬の重力からの解放、目に映るのは罪を浄化するような純白。


 今はまだ、あいつらには追いつけない、……だけど、進んでいくことが出来れば少なくともこの先で合流する事は可能だろう。


 自覚したての(おもい)は、気付いてしまえばとんでもない温度で、その上自分の内にある物なのにコントロールが効かなくて、ひたすら厄介。

 でも、だからこそ、諦めるなんて出来そうも無いから。


「待ってろよ」

 自分のスキルと転倒リスクを量りつつ迂回は最低限のコースを探り、我ながら荒いと思う直線距離でゴールを目指す。

 ただ、目の前の2人に追いつくことを目標に空気を割いていくのは、今までの自分さえも生まれ変わる感じがして、……無茶をするのも、意外と悪く無い? なんて。

 これだけ寒風にさらされても、この熱は冷めてくれそうも無かった。

 

ここまでお読み頂きありがとうございました。

自覚後ですが、本編修学旅行編の2話先の「理不尽な感情」より前の時期になるので少し風合いが違うのが出せていたら嬉しいなと思います。


寄り道してしまいましたが月曜更新分の新作もほぼ完成しているので予定通り掲載できると思います、よろしくお願い致します。

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