例えばこんな高校生活(パラレル)6
いつも読んで頂き、感想や良いねなど本当にありがとうございます。
パラレル高校生編、今回でラストの予定でしたが、思いの他、鳴木君があばれまして……。
今回はたっぷり鳴木君回となり、次作エピローグ的なもので〆となるかと思います。
よろしくお願いします。
「ごめん、鳴木、松くんにこれ渡しといてもらえる?」
クラスが離れた時は、こいつとの距離が今よりも広がる事を覚悟したが、幸い俺は隣のクラスで、同じクラスに松岡が居たのもあり、よく顔を出しては俺にも声を掛けて行くからそれなりに顔は見れてる。
中学の時と違い、俺の事を避けることもなく、視線が合えば嬉しげな笑顔で寄ってくるし、これ以上は望みすぎだって事ぐらい分かってる。
だけど
「どうだ? 坂本の様子は?」
「それなんだけどね! 聞いて……って、ああ! 戻らなきゃダメか」
各授業の合間の10分や昼食含めての多少長めの休憩ではろくに会話もできず、塾の後、勉強会の前後、いつも近くにこいつがいたあの頃を思えば全然足りてない。
いっそ、好きだと、もっと一緒に居たいと告げてしまえばとも思うが、それを言ったとて、藤堂が受け入れてくれなければ話にもならない、だから、明確な用事がない限りゆっくり話したいなんて程度のことさえ口に出せないでいると
「ああ、ねぇ、鳴木部活の休みって明日だっけ? 予定あったりする?」
予鈴に慌てつつ早口でそんなことを言ってくる
「別にない、何かあったか?」
「ううん、それ程の事って訳でもないけど、何か鳴木とゆっくり話できてないなーって、あ、明日でなくても良いの、その先の休みの日とかいつでも良いんだけど」
「大丈夫、明日だな? ゆっくり話、しようぜ?」
藤堂に俺に対する恋愛感情なんてものは無い、だけどその分無防備に会いたいって気持ちを言えるこいつが可愛くて……切ない。
「ん〜、どこ行こっか?」
約束した放課後、俺の教室まで来て、呆然とそんな事を言うから思わず吹き出す。
「クッ……誘っといてノープランかよ」
「いや、だって、どっか行こうとかそーゆー訳じゃ無かったし? ここでもいーんだけど」
相変わらずの天然さは面白くもあるが、流石にわざわざ噂の種を作る事もねーかなとも思う。
「あ! この隣の駅ね、川あるよ、気持ちよさそーだなって思ったんだけど、どう?」
「ああ、そう言えば川近いって聞いた覚えはある、場所よく知らねーけど、ま、下りれば地図でもあるか」
「大丈夫! この前間違って急行乗っちゃってさ、乗り換えの時ホームから川が見えたの!」
あまりにらしいエピソードに軽く頭痛はしたが、敢えてコメントは控えて、その川とやらに向かう事にした。
「お、いいな、ベンチもあるしそこでいいか?」
「いいよー、川幅も広いし、ここなら水切りとかもできそう! ねねっ! 人も居ないし、何段いけるか競争する?」
あのな、2人きりでの河川敷、なのにする事は石投げ? どうせこいつのことだ、始めたら夢中になって俺のことさえ忘れそうで冗談じゃない。
「なんか話したかったんだろ? 坂本がどうしたって?」
俺としては別にこんな場で敢えてあいつの話でなくても良いとは思うが、気を逸らすには最適だと名前を出せば
「そうそう! それがね、最近お前を普通の女扱いするのは良く無いのか? とか言い出してね」
「へー……」
嬉しげな様子に思わず声が低くなるのは仕方ないだろう?
「やっと、分かってくれたのかも? 私をそんな壊れ物みたいに扱わなくて良いって、悪気はないのかもだけど違和感半端なかったからさ!」
「まぁ、あいつ、女に甘いってのは有名だったからな、それがデフォルトだったんじゃないのか?」
あえて、特別扱いだったわけじゃないだろ? って重ねたくなるのは心の狭さ、だが
「そうそう! それ、香織から聞いた時はビックリしたよ、中学の時は多分私を女子とは認識してなかったんだろうけど、友達になろうって言っても、妙にまだ甘やかしてくるからさー」
なんか、今、とんでもない事を聞いた気がするだが?
「友達になろう? まさかお前があいつにそんなこと言ったのか?」
聞き違いかと思ったが、念のための確認に藤堂は全く曇らない笑顔で
「うん! なんか色々気にしてるらしいの面倒くさくなってさ、だって最初の頃は先回りして私の仕事までやってたんだよ? 罪滅ぼしにしたってやりすぎたよ、だから、せめて普通のクラスメイトその5で良いからって」
「クラスメイト……その5」
坂本に対して藤堂が自分を位置付けた場所は、そのまま相手との距離でもある、つまりこいつにとってのあいつはまだその位置ってことだろう……。
今さら虫が良すぎるのではないかと思ってたこいつと坂本との関係、だけどその道は思ったより険しそうだ。
「ぽかぽかだねー、なんか眠くなっちゃいそう、そこの河原にごろんってしたら気持ちよさそう」
「やるなよ?」
「やらないよー、スカートだし、今日は髪下ろしっぱなしだし、草だらけになっちゃう」
問題はそこなのか? なら、ジーンズでもはいて髪を纏めてれば、こいつはここに転がるんだろうか?
聞いてみたい気もしたが、返事次第では立ち直れない気もするし、そんな返事が来るだろうと予測もできるからやめておく。
日向ぼっこした猫のようにくつろぐお前の隣で、俺は胸の内を隠して時々早まる鼓動をなだめつつ、何でもない顔して座ってる。
こんなの苦しくないって言ったら嘘になる、だけど、こいつと居る時しか満たされない俺の中の飢え、みたいなモノも有って……俺はきっとこのあと何度も今を思い出して、飢えたって会いたがるキモチを宥めるんだろう。
「ありがとね、鳴木」
「ん?」
「今は平和だし、学校も楽しいんだけど、でも、何か……ちょっと前のことなのに懐かしいんだよね、良く喋ってたじゃない? 駐輪場とかでさ、久々鳴木とこんな風に話せてホッとした」
俺もよく思い出してたあの時間、藤堂にとっても意味はあったみたいで嬉しくなる
「あそこでだけは、お前ちょっと大人しかったしな?」
「鳴木だって、そんなに揶揄ってこなかったじゃない? その分おしゃべりしてた気がするよ」
頷きながらの笑顔を俺に向けてくるから
「俺も何かお前と話せないと調子狂うし、時々で良いからこんな風に話せたらいいな」
臆病な俺も少しだけ本心を晒してみれば
「いいの!? 嬉しい! 鳴木部活大変そうだし今日も悪いなって思ってたから、また来てくれる?」
待ち合わせして、電車に乗って、河原でベンチ座ってしゃべってるとか、世間ではデートって言うんだがなって、思う。
だけど、藤堂にそんなつもりはないのは百も承知、こいつにとっての寂しさなんてモノはきっとこのまま時が過ぎればあっという間に薄れるんじゃないかってさえ思う、だけど、俺はいつか好きだって言えるときまで、この位置を誰にも渡したくないって、思うから
「おっし! じゃ、水切り競争するか?」
「やるっ! 先ずは石探しね、5分後ここで良い?」
嬉しげに石を探しに駆け出す後ろ姿に小学生か? って思う、だけど、負けず嫌いのこいつのこと勝ちさえすればきっと何度でもここで会える。
……だから、俺も今は本気で石を探そう。
「また、会いたい」という気持ちからの、策と言えば策なのですが、水切りを頑張ろうと思うところが鳴木君かなと思います。
途中で本気で紗綾と水切りそのものも楽しんでしまうといいなぁと。
本気で石を探すふたりの姿はとても小学生……じゃなくて、ほほえましいなと、楽しんでしまいました。
読んで頂いた皆様も楽しんで頂けましたら嬉しいです。
念の為ですが、今回出てくる水切りというのは、川の表面を石が跳ねるように飛ばす遊びです。




