例えばこんな高校生活(パラレル)2
久々の投稿でしたのに読んでいただいた上に、感想やいいねなどまで頂いてしまい、本当にありがとうございます。
とても、励みになりました。
また、書き始めると動いてくれるのが彼らで、思ったより早く続きができました。
坂本君絡みではありますがいつもの彼らも出てくるのでお付き合い頂けましたら幸いです。
「そっち俺持つから、藤堂はチョーク持ってってくれ」
期末に予定している大掃除に関するアンケートのプリントを委員会に持って行こうとしたら、プリントはサクッと坂本が持って、かなり短くなってたチョークの交換を頼まれた。
あれから、美化委員仕事はちゃんと分担できたか? と言うと、ちょっと微妙。
何でかって?
「お前、そんな重いの持つなよ、俺やるから良い」
へっ? 重い? クラスの女子から椅子がスカートに引っかかると相談を受けたら、確かに板がもう劣化してるから交換かなって教室出ようとして、慌てた様に坂本が来るから思わず唖然とする。
この片手で持てる椅子が?
だけど、坂本は私の手元からさっさと椅子を持ってってしまい……。
「重い? あれ」
自分だって軽々持ってってるのに、なんか落ち着かない気分になる。
「ハイターの薄め液、追加してくる」
「原液満タンだったから、注ぐの力いるし、俺行く、おまえ、雑巾の追加な」
……って、仕事全部持ってっちゃうって事はないんだけど、例えばパンを半分こにするとして、いつも必ず大きい方を渡される感じ? 時として、え? それ差がある? みたいなことでも……なんかさ、これ、どう思う?
「どうって……普通よりは、過保護かな? って思うけど、ちょっと優しい男子なら割とあること、かしら?」
松くんが不思議そうな顔で私を見るのにえーっ? て、思う。
「まぁ、おまえの普通では無い、だろうな」
松くんの隣で苦笑する鳴木に判ってくれるかとその腕をつかみコクコクと頷くと
「坂本もなぁ……」
鳴木も困った様に笑っていて。
クラスメートその5に落ち着いて、仕事の奪い合いも無くなって、やっと平和に委員ができると思ったのに、なんか違う、今日はとうとう違和感に耐えられず、授業が終わるなり、隣の松くんと鳴木の居るクラスに駆け込んで、話を聞いてもらってるんだけど。
入学式の後貼り出されたクラス分けの結果、やっぱあいつ、もめ事好むやっかいな神様にでも愛されてるよなってしみじみ思った。
小学校から中学へ上がるのとは違い、同じ中学からここに来たって奴はそう多くはないが、よりにもよって坂本と同じクラス、しかもそのすぐ後、委員まで一緒になったと聞いた時は嘘だろう? より、さもありなんと思ってしまった。
ただ、坂本はあの頃みたいに藤堂に攻撃したりはしていない、それどころか…
「だよね? だよね? だって私だよ? 私と坂本だよ? 重いもの持つとか、女の子扱いとか……あ〜ゾワゾワするぅ」
あー、別種のストレスとして本人は感じてそうだが? まぁ、つまりは結構平和は平和そうだ。
来たときの勢いの割に愚痴りたかっただけなのか? と、そのことにはホッとしたが、だが……坂本、ねぇ。
おまえが女に甘いってのは知ってるが、ちょっとそれは虫がいーんじゃないか? って鳥肌が立つなんていいながら腕を撫ぜる藤堂を見て思わずにもいられない。
「お前さ、藤堂がお嬢にでも見えてんの?」
「はぁ?」
「過保護すぎねぇ? あいつ結構力あるし、お前に助けてもらわねーと仕事できねーなんて訳ねーんだけど?」
おっとっと、さっき備品置き場に掃除用具の取り替えに行ってくれた坂本、だけどミニホウキも結構毛羽立ってたから追いかけてきたんだけど……
「何言ってんだ? あいつだって女子だぞ? 力仕事だったら俺の方が適任だろうが」
「力仕事って、たかが3本程度のほうき、苦にするわけないだろーが」
我が意を得たり! ってこういうとき使うのかな? そう、そうなの! 多分こんなところでふたりの話を聞くのは良くないって気もするのだけど、黒田のあまりにもナイスなアシストに足を止め応援する気持ちで拳をぎゅっと握ってしまう。
「……そこそこかさばるし、けつまずくかもしれないだろ?」
「いやいや、そこでこけんなら、あいつがどんくさいからだ」
え? ちょっと、待って? そこはそうでなく……
「だいだいな、あいつは一条だって自転……むぐっ!?」
「ストーップ! 黒田」
ギリギリで口元を押さえられて、ホッとしつつ備品置き場に入る。
唇に指を当てシーッ! ってしつつ睨めば判ったというようにこくこく頷く黒田、通じたかと手を外せば、ぷはーなんて態とらしく息をつくから
「大げさだよそんな強くしてない」
「うっせー、馬鹿力! 自覚しろっての!」
たいした反省もなさげに抵抗するので
「あの時の事周知したら怒るって言ってたの忘れた?」
ちょっと前に私の後ろに一条が乗った時の事を、からかい混じりに軽口を叩いた黒田が、一条からブリザードの視線を浴びたのにと耳元で囁けば、黒田はヤベッって顔をして。
うん、忘れてたんだね? ってため息が漏れる。
そして、ふっと気がつくともう坂本はいなくて……。
判ってるんだ、嫉妬する権利なんか無い、って事くらいは。
だけど、目の前でじゃれるような黒田とのやり取りを見てたら、苦しくて。
昔、鳴木とのやり取りにも自覚もないままに嫉妬してチョークを割ったのを思い出せば、自分が思ったより嫉妬深いってのと、本気の執着ってこんなにも厄介だったのかと、思い知らされる。
今更、俺を好きになってくれなんて虫が良すぎるのは分かってる、だけど、奇跡みたいに友達になれた日に、藤堂が口にしたクラスメートその5なんて、あいつが俺の中で、そんなその他大勢のひとりだった事なんて、ないから……絶対無理で。
「坂本〜」
「っ!?」
急にぎゅっと腕を掴まれ、掛かる声に振り向けば
「ごめんね、さっきは邪魔して」
片手で拝む様な仕草をした藤堂。
思わず掴まれたまま方の腕に視線をやれば
「っと! ごめん、痛かった?」
慌てた様にそれを離すけれど、俺はその手の存在感に驚いた。
今までも、女子が俺に触れる事はあったが、大抵は触れてる程度、両手で俺の手を掴んでも引っ張る、なんて時もこんな風に圧力を感じる触れ方をされた事はなくて。
「え? やだ、そんな痛い? 流石にそこまで力入れてないんだけど、保健室行く? 冷やす?」
「いや、大丈夫、ちょっと驚いただけだ……っ?」
って、言ったのに、本当!? なんて言いながらその腕を取られてワイシャツのボタンを外そうとするから焦る。
「じゃあ、そのほうき私が持つよ」
「平気だって、それにもうすぐ教室だろ?」
なんか、不思議な気分だ。
さっきまであんな苦しかったのが、藤堂がこんな風に隣にいて軽口を叩きながら歩いてるってだけで、気持ちが凪いでくのがわかる。
ずっと、見ていたのに、知らなかった、思ったより力は強くて、いきなり手首とは言え男のシャツのボタンを外そうとするのは無防備すぎだが、それも心配したから、ってのもわかってるから、胸の奥がむず痒くなる。
歩くペースは結構早くて、歩調を緩めなくても難なくついて来るし、隣で大丈夫! とか、力はあるんだよ? とか言い募る顔はちょっと不満げではあるが、睨みつけるって感じではないから、柔らかくて……こんな顔は初めて見る。
仲が良かった訳じゃない、だけど、知らない奴とはとても言えない、だから今更初めて気がつく事なんてそんな無いと思ってた。
だけど、友達って立ち位置の藤堂は今までとは全然違って正直、やばい。
押し殺そう、仕舞い込むしかない、そう思ってはいるのに、想いは膨らんでいく一方で……。
読んでいただきありがとうございます。
もう幾つかエピソードが降ってきているので、形になり次第投稿していきたいと思います。
坂本君ともう少し近くとは思いましたが、彼メインの話ではないので、次作は他のメンバーメインの話となります。
もう暫くこのパラレルにゆっくりお付き合い頂けましたら嬉しいです。