波紋(パラレル)おまけ
ちょっと間が空いてしまいました。
結果的にの三部作、最後になります。
えと、一応の本編最後まで読了後お勧めいたします。
ここまでのお付き合い、ありがとうございました。
「おまえな……」
俺の出来心は、ちょっとした騒ぎになり、早耳の一条の耳に入った結果、いつか呼び出された、フェンス前のあの場所に、再度呼び出される事になった。
大人びて整った一条の真っ直ぐの視線に晒されれば、居心地は良いはずも無いが、コイツがこんな風になるのは、サッカーで余程のポカミスをした時か、……あいつ関係。
「悪い」
気分的には降参ってつもりで、両手を挙げたんだが
「黒田がキレたらしいぞ?」
「……っ! あいつ! 藤堂になんかしたのか?」
「お前までキレるな、……大丈夫だ、一応な」
その返事にホッとしたのと、そもそもあの時点で普通に渡さなかったことを後悔していた俺は思わずその場に座り込んだ。
「……汚れるぞ?」
「いいさ、どうせもう何日も着ないだろ」
「そういう問題じゃないだろ?」
眉をひそめる一条を見上げても、立ち上がる気にはなられなくて
「何やったんだ? 一体」
さらに深まった眉間のシワに益々立ち上がる気力は失われた。
「呼び出して、塾の招待状を渡しただけだ……どんな反応示すかと、興味あったのは否定しないけどな」
「それで、あいつは?」
「……桜花が何かミスったのか? だと」
派手に吹き出される、位は覚悟してたが
「それに俺がどうこうは言えないが……藤堂が本気で手紙の中身を勘違いしたら、どうする気だったんだ?」
「本気で? ……別に、ハガキを見ればすぐにわかる事だろ?」
「だから、読む前にって意味だ、現にあいつは桜花からの通知だと勘違いして、そんな事を言っただろ?」
妙に真剣な顔で一条が続けるが、どうも意味がわからないでいると
「私のこと好きなの? なんて言い出さなくて良かったな」
「っ!?」
続く言葉に、瞬間呼吸が止まった気がした。
鳴木らしくもなく呆けたような顔で俺を見るから、思わずこちらを向くなと言ってやりたくなる。
「………全く、考えてなかった」
そして案の定の言葉。
コイツときたら、昔から、頭はいい癖に妙に天然と来ている。
まぁ、俺が例えばあいつに同じ事をしたとして、告白の手紙と勘違いする、なんて自惚れてはいない。
コイツとて、そこまでの自信がないからこその軽い悪戯心という奴だろう。
だが、鳴木がこんな事を思いつくほどの浮ついた空気の中、あいつの好きな少女小説のシチュエーションと絶対に結び付けない、なんて保証はない。
実際そんな期待も少しは有ったんだろう。
そして、手紙の中身を見て、勘違いに笑う。
それくらいならいいが……
隣のコイツはそのまま言葉も続けられずとうとう下を向き顔を隠したけど、耳が赤くなるのにどんな顔をしているかは想像がついた。
そんな鳴木を見て、つい、考えてしまう。
俺なら、どうするだろう?
例えば、手紙を開く前に、あのまっすぐで透明な瞳に見つめられながら、
「私のこと、好きなの?」
などと問われたら?
抑えても騒ぎ出す胸の内、鍵が壊れてしまえは、いっそそれを理由に……なんて、想う俺はそろそろ本気で限界なのかもしれない。
気分転換で書き始めましたら、きがついたら三部作、久々の彼らに会えて楽しかったです。
読んでくださった皆様も沢山いて下さり、とても嬉しかったです。
これからも時折せめて此方だけでもこんな形で続けていけたらと思います。
よろしくお願い致します。