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波紋(パラレル) 1

少し頭がまだこの世界を引きずっているようで、次作が降りて来ました。


時期的には前作と同じくほぼ終盤に当たりますので、本編終了後に読む事をお勧め致します。


基本的に矛盾はないはずですが、色々考慮してパラレルとさせて頂きます。


というか、基本番外編はパラレル扱いでよろしくお願い致します。


前作物凄く久しぶりにもかかわらずたくさんの方に読んで頂き、感想まで頂いてしまい本当に本当に嬉しかったです。


と、この話も視点クルクルしております、読みにくければ考慮しますので教えていただければと思います


「藤堂、ちょっと出れるか?」

「あれ? 鳴木、良いけど、ちょっと待ってね」

授業が終わるとほぼ同時に、ドアの外から呼び掛けられて、振り向けば鳴木が親指を後方にくいくいしているから、慌てて教科書を机の下に突っ込んで廊下に出た。

「……ん?」

「どした?」

「あ、いや、なんでも……で? どこ行く」

授業後のざわざわした雰囲気がなんだか急にシンっとした気がしたけど……ま、いっかと鳴木を見れば

「ん〜、ま、いいからちょっと来てくれ」

質問はあやふやにいなし早足で歩き出すから、取り敢えず追いかけるとにした。


そのまま、一番端の階段を登り始めるのを追いかけたら、屋上のドア前の一角で、ピタリ足を止めると、真顔で私を見て

「これ、読んでくれ」

白い封筒を渡されてびっくりした。

手紙? 鳴木が私に? 嘘! まさかと思うけど

「桜花、入学手続きなんかミスったとか!? 大丈夫?」

「はぁ!? なにを言いだすんだお前」



「……だって、妙に真顔だし、あの場で渡さないしさ、なんかあるかと思うじゃない……」

違うと即座に否定したら、ぶつぶつとそんなことを言っている。

成る程、このシチュエーションでのお前の発想はそう飛ぶのか。

「あ! 場所決まったんだね!」

そう、呆れと感心が入り混じった想いを噛みしめていると、ぱっと明るい笑顔を浮かべるのに少なくともこんな場所まで呼び出した目的のひとつは完了したんだが……。


封筒の中身は、今度の日曜に行われる塾の別れの会のお知らせ。

授業はもう無かったが、昨日買い物ついでにちょっと顔を出してみたら、塾長から案内のハガキを出すとこだと聞いて、うちの学校の分は手渡しを引き受けたんだが……。

塾関係の事を他の奴に知られるのを嫌がるこいつに渡すのを考えた時に、ほんの少し湧いた好奇心。


受験終わりの緩んだ空気の中、卒業を前にした3年生、呼び出して真顔で差し出す手紙、なんてものなら少しは意識をするんじゃないか? なんて、な。


声をかけてから出て来るまでの一種張り詰めた教室の空気も流れる噂と時期を思えば妥当なもんだし、ついでに、何だかんだと結局1年間隣になったらしい奴からのキツイ視線からも、やっぱ発想はそう行くよなと……。


ともあれ、そんな舞台設定を付け加えてみた結果、返答は俺の想像の斜め上を豪快にすっ飛んで行った。


いや、まぁ、確かに少し前にどっかの高校で手続きのミスとかニュースはあったけど?

にしたって、名門と名高い桜花が入試関連で大ポカする、なんて事の方が、俺からの告白ってよりあり得るレベルらしい。


恋愛事を、面倒なんて避けてたツケなのか、気持ちを伝えるなんて事の遥か手前で足掻いてばかりだ。

……だけど

「ありがとね、あそこで塾の話題は避けたかったし……それに」

「ん?……って、お前、何でそんな顔」

少し潤んだ瞳と、揺れる語尾に焦る

「あはは、なんかね、もう塾行かないんだって思ったら、寂しくて、おかしいよね、卒業式なんて全然余裕なのに」

大事そうに封筒を胸に抱く姿に、胸がぎゅっと痛む。

俺はただ、これを渡した時の笑顔と、そのついでにちょっとでも意識が変われば、なんて道具にしてしまったが、こいつにとっては、今まで唯一の拠り所にして来た場所との別れだって、知ってたはずなのに。


「ごめんな、もっと普通に渡せば良かったな」

鳴木の癖にそんな神妙な顔をするから、思わず吹き出した

「今更? 鳴木は割と突拍子もないとこあるよね?」

すると、ビックリして俺が? なんて言うから益々おかしくなる。

一見優等生で真面目に見えるのに、3年間の塾で私とやって来た色々な事を考えれば自覚がない事が驚きだよ。

「あ……でも、結構塾限定だったかな? そう言う意味では一条も黒田も、(あっち)学校(ここ)では結構違ったね、うん、やっぱいい場所(とこ)だった」

うんうんと再確認してたら

「否定はしねーけど、それだけじゃ絶対無いんだけどな」

妙に断言するから、何?って聞いたけど、くすりと笑って。


「桜花がさ、そんな場所になるさ、きっと」

願いを込めるように強く言い切る。

「え?」

藤堂の世界が広がる不安は正直有る、本当はこいつにとって心許せる人が少ない学校(いま)は、俺にとって都合がいい部分もある、それは否定しない。

だけど、頑なに周囲からの何もかもを跳ね除けながら、心の内側に色々なものを守りながら生きるなんて事を、いつまでも続けさせたくは無い。


その守って来た柔らかさを表に出せば、今までとは違う厄介さが増える、なんて覚悟はしてるから。

だから、今度こそ、新しく広がる場がお前らしく生きられる場であればと願っている。

その為に俺にできることがあれば、惜しむつもりはない、そして、願わくばその隣に俺の場所がある様になれたなら、きっと桜花が俺にとっても特別(そん)な場所になる、なんて、な?

作品、読んで頂きありがとうございました。


一応この話、次作もあり、近日中に仕上げたいと思っておりますのでそちらも、もし宜しければ目を通していただければとても嬉しく思います。

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