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言わなくていい、忘れろ

ご無沙汰しております。

ぽこっとあるシーンが浮かび突貫で仕上がってしまいました。

他が難産だけに嬉しいような悲しいような。


今作については、時系列的にもかなり最後の方ですので本篇終了後、読んでいただければと思います。


敢えて視点をコロコロ変える感じで書いて見ました、読みにくかったらごめんなさい。

読んで頂けたら幸いです

「なんか、これ既視感(デジャブ)だ……」

「前も、ゴミ持ってここ通ったな」

「あ、そだそだ! 一条が告白されてて…」

「その言い方やめろ」

「え? やだ? うーん、でも、そしたらなんて言えば?」

「言わなくていい、忘れろ」

「そんな乱暴な」

無茶な言い様に後ろを振り向けば思いのほか真っ直ぐな瞳にぶつかり息を呑む

「……一条?」

「何でもない、ほら、ゴミ捨て行くぞ」


あの日しそこねた美術室の掃除、作業そのものはほぼ終わり最後のゴミ捨てのじゃんけんに負けたのは私と一条だった。

既視感(デジャブ)も当たり前か、なんせ美術室からのゴミ捨てってほとんど同じシュチュエーションだ。

私を追い抜いてスタスタ歩く一条の手元のゴミ袋が合わないと思ってしまうのもあの日のまま……っと、ううん、ちょっとだけ違うか

少し歩みを早めて隣に並ぶ。

今の私は学校で彼らの隣を歩く時いつも感じてた落ち着かなさみたいのはない、それがなんだかとても嬉しくて


「あ! 発泡スチロール!!」

「お前、まさか」

「ん? って、ねぇねぇ、ちょっと遊んでっていい?」

良いも悪いも返答する前に、派手に発泡スチロールの板を蹴り上げるのに苦笑が浮かぶ……あの時は遠目に何とはなく、けれど目が離せずに見つめて居た光景を、今、あの時の親友の位置で見つめ……正直複雑な気分だ。


あの時は自覚がないままに(うらや)んで居た、こいつに一番近い場所。

てらいない笑顔に、遠慮なく蹴りあげるしぐさ、捲き上る破片が髪にかかるのを落としてやると手を伸ばせばすぐに届き、こいつも伸ばした手を振り払うことはないだろう。

その近さと、……望む位置との距離。

親友なんて、きっと一番遠い。

何日か前のここで鉢合わせした時の事をてらいも無く口にするこいつに、俺への色めいた気持ちなど芽さえ出てないなんて、いちいち明らかにするなと言いたくなるくらい自覚している。

なのに、発泡スチロールを蹴り上げるなんて事で

「見て見て! 綺麗に半分! 」

心底楽しんでいる姿をみつめれば、心の奥にしまい込んで鍵をかけてるはずの想いが、あいつが蹴り上げるたびに雪のように舞う、このフワフワとした破片みたいに揺らぎ俺の心を乱す。


きっといつか、こいつといえどこんな風に制服の裾を翻し、勢い良く白い板を蹴り上げるなんて事に躊躇する時は来るんだろう、それを待っても、いる。

だけど、その戸惑いを向けるのが俺以外ならば……いっそ、ずっと今のままで、なんて、こんなに自分が臆病だったなんて最近知った。


きっと俺は、今まで、失う事が怖いほど人を好きになった事が無かったんだろう、いや、今となっては好きだったのかさえ怪しいもんだ。

だから、今までの経験なんて全く役に立てなくて、ましてや、それで得たテクニックなんて使えるわけもなくて。


やっとお前が俺を見て笑ってくれるようになったけれど、その引き出しかたすら俺はよく分からなくて……


「……っ!」

我ながら会心のひと蹴りの後、派手に破片は散り散乱した発泡スチロールの向こうに、壁に寄りかかっていた一条がふとうつむくのが見えて焦る。

いけない 、今ここにいたのは、私の行動に慣れてる親友じゃなく……

「一条、怒ってる?」

考えて見たら、遊んでいい? とは、聞いたけど、その返事をちゃんと聞いた覚えはなく

「……ごめん」

「……っ……くっ…おまっ!」

「だから、ごめんって、ん? 笑ってる?」

「……これ使ってなおしとけ、片付けとくから」

……へ? って、え?

ぽいと櫛と鏡を渡されて、常備品なのかと驚きながら覗き込んで流石に頬が熱くなった

ほつれ掛けてボサボサの髪に所々張り付いている発泡スチロールのカケラ……うん、ちょっとやりすぎた

「と! 良いよ! 私やるから」

やらかした相手が一条だけにどんな呆れてるかと見れば、何故かさっさと私の散らかしたゴミを箒で集めてて……

「いいから、それ治しとけ、すぐ終わる」

そう言って、本当にさくさく散らした発泡スチロールの破片はちりとりで取るだけになっていて……

取り敢えずゴムを解く事にしたんだけど

「……たっ!」

勢い良くゴムを取ったら、引っかかった髪を思い切り引っ張ってしまった。


「本当にお前は……」

小さな悲鳴に振り向けば、ゴムを細い髪に絡めていて、それを勢いのまま引き抜こうとするのを慌ててとめる。

ついでにほつれた髪を櫛で解きながら絡まった発泡スチロールを落としていると

「ごめんね、一条」

さっき俺を笑わせた小さい子供のような弾けっぷりから一転、今度は肩を落としていて、そう言えばこんな姿も今の距離になってからは時々見るようになった。

それを宥めるように肩に触れて、ピクリともしない背中にホッとしつつ切ない。


きっと今の俺を見たら、誰もが俺の気持ちに気がつくだろう、だけど背を向けてるお前は知りようもないし、だからこそ俺も隠さず見つめている。

髪を解き、戻すまでの3分間。


そう、解いた髪を結い直したら、俺の気持ちもまた縛るから、だから今だけ。


凄く久しぶりなのに投稿日が4月1日とは、と思いましたが、また、忙しくなってしまう前にと思い切りました。


長々とご無沙汰しております、浮かんでは書いて、詰まって……を繰り返していると、思い出したように彼らが浮かびます。


最初はもう少しコメディだった気がするのですが……えぇ、一条なので、このテイストになりました。


中々亀の進みですが、せめてここだけでも時々は増やせたらいいなと思います。

よろしくお願い致します。

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