3頁目 良く有るオチです
「わぁぉ」
思わずぬけた声が漏れてしまった。
暗い石の通路をダラダラ歩くこと20分。
暗い通路の先に、仄かな光が見えて、外かと思い早足でたどり着くと、そこは外ではなく、また石造り部屋だった。
先ほどの謁見の間とは異なり、普通の小部屋と言う感じだった。
壁自体が発光しているのか?
部屋の中は淡く青く光る壁に照らされていた。
どうゆう原理かは不明だ。
是非とも調べたいが、部屋の中にはもっと気になるモノがあるので後回しにしよう。
それは部屋の中心にあった。
上から見るとダイスの5の様に何らかの台座が配置されていて、その真ん中の台座には某最後のファンタジーRPGゲームに出てくる蒼いクリスタルが、差さえも無にプカプカ浮いていた。
「ははは……なんだよコレ。どんなファンタジーだよ。」
なんども宙に浮くクリスタルを観察してみるが、ワイヤーは無いし、台座は石でできているが特別な装置が有るわけでも無い。
磁石か?
台座とクリスタルの間にある隙間に手を行ったり来たりさせてみたが、頭をかしげるばかりだった。
ふと、クリスタルを凝視していたら、中に何か細長い物が有るのに気がついた。
「なんだ?」
クリスタルのある台座をくるりと一周してみる。
映り込んだ背景などではなく、中に何かがあるようだ。
何があるんだ?
色んな角度から見てみるが、微妙に光が屈折しているのか、歪んで見える。
じーっと目に力を入れて細めながら至近で見てみる。
その時、ついついクリスタルに手が触れてしまった。
次の瞬間、ビキッ! と手が触れた箇所から音が聞こえ、そこから広がる様に蜘蛛の巣状のヒビがビキッ! ビキキッ! と音をたてていく。
「へ? え、えぇぇぇぇぇぇ?! な、なん、なん、なぁぁ!」
狼狽えている内に、ヒビはクリスタルの全体に入り
パキィン
と、清んだ音をたてて砕け散った。
「やべぇ、俺壊した? てか、何コレ」
そこに在ったのは銀色の三日月だった。
金属製と思われるソレは太さは大体5センチ程だろうか?
いや、もう少しあるかな?
キラキラと銀色のソレはCを少し縦長にした形をしていて、両端は尖っていた。
飾りは無く、模様もない、ただ金属を曲げただけのソレを朱鷺は美しいと思った。
先ほどのクリスタル同様に、何の仕掛けも見当たらないソレは宙に浮いていたが、そんな事はどうでも良かった。
息をするのも忘れて、まるで誘われるかの様にソレに右手をのばした。
震える指先が、恋い焦がれてやまない存在を求めるが如く近付いていく。
50センチ
20センチ
あと10センチ
指先が触れるか触れないかの距離になり、ソレはいきなり光の粒子になり、パン! と弾けとんだ。
その瞬間、朱鷺は正気に戻った。
「は?」
まの抜けた声しか出なかった。
目の前にあった三日月形のモノは既に無く、何もない空間に伸ばされた朱鷺の右手だけがあった。
辺りを見回すが、何もない。
何が起きたのか?
混乱する思考を他所に、無意識に手を引いた時、右手の異変に気付いた。
「んあ? な~にコレ」
朱鷺の右手の手首に、ついさっきまで無かった何かがついている。
銀色に光るソレは、どうやら腕輪のようだ。
銀色の一部口の開いた輪っかが、見事なほどジャストフィットして、右手首に収まっていた。
「ん~俺のじゃないよな。
つか、俺アクセサリーの類いは一切持ってないし…………って、なんかこの腕輪の模様、どっかで~み~た~よう…………な?!」
記憶をたどると、直ぐ様先ほどまで我を忘れてまで見惚れていた三日月形のモノがフラッシュバックした。
「はぁぁぁ?! アレ? アレなのぉぉぉぉ?!
てかアレ1mくらいあったよな?
え? コレがアレ?
まじ? マジでファンタジー? てかはずれねぇぇぇぇ!ぅおおおぃ! まさか呪いのアイテムじゃねぇだろうな?! 呪われた音楽鳴ってねぇぇぇぞぉ!
やべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇどうしようどうしようどうしようどあべし…………」
……………………
静かになってしまったので、何が起きたのか解説しよう。
取り乱した朱鷺は、右腕の腕輪を何とか外そうと、引っ張ったり押し出したりしたが、奮戦虚しく一向に外れず、もしや呪いのアイテムなのかと顔を青くし、頭を抱えて中央の台座の周りを走り出したが、先程三日月形のモノに手を伸ばした際に落とした、大判コロッケの紙の包み(油を吸って斑模様に透けている。ちなみにオレンジ色で肉の大判屋のロゴ入り)に足を滑らせて後頭部を強打して気絶した。
何ともしまらないが、ただ、見事な取り乱しっぷりだった事をここに記しておこう。