真っ白な竜
それは新年の近い、冬の出来事でした。
とある火山の中で、たくさんの竜達が暮らしていました。
竜達の体は皆、溶岩の様な真紅の鱗を持つ者や、森の緑の様な鱗を持つ者ばかりでした。
最近は竜は火山に集まっていました。
その頃は大変寒く、火山の外は吹雪が続いていました。
「今日は一段と冷えるな・・・・・・」
「そろそろ新年だから、人間共は宴会を開いている。」
「此方にも肉やら、餅やらが供えられていた。魚もあるな。」
「では、頂こうか。」
人間は竜を恐れていて、沢山の食料を竜に貢いでいました。
「それより、1週間前の卵はどうした?」
「ああ、それなら今夜にでも孵化するはずだ。」
「大変です!!」
2頭の竜が話していると、雌の竜が慌てて飛んで来ました。
「どうした!?」
「た、卵が・・・・・下に落ちました!」
「な、なんだと!?」
この火山はかなり高く、下に落ちれば卵が割れてしまいます。
「・・・・・・諦めろ。我ら強靭な竜にも冬の寒さはどうにもならん。探すことはできない。」
「そ、そんな・・・」
その翌日は吹雪が収まり、雌の竜は急いで卵を探しました。
しばらくすると、竜の子供が見つかりました。
しかし、雌の竜は驚きました。
何故ならその竜は雪の様に真っ白な鱗を持っていたからです。
それから暫くしてその竜は大きく立派になりましたが、その体の色から友達も出来ず、誰にも相手にされず、何時も1匹で過ごしました。
彼の変わっていた所は他にも、雪の中でも過ごせる事でした。
それが余計に、彼を仲間はずれにしました。
しかし、それでも彼をお母さんは支えました。
母だけは彼を大事に、必要としました。
彼は、母だけではなく他の竜達にも自分が竜の中で必要な存在になりたいと思っていました。
そんな中、あと1ヶ月で新年が来る頃、神様は全ての竜にこう告げました。
「来年はお主ら竜の年じゃ。全ての竜に光が有らんことを・・・」
そう言って、神様は消えていきました。
しかし、その年がくる1日前に火山が噴火してしまい、竜達はそこに住めなくなりました。
更には吹雪まで起こりました。
竜達は苦しんでいき、皆は辛くなりました。
しかし、白の竜だけは苦しまず、皆を助けようとしました。
そして、とうとう他の竜が力尽きようとした時、新年を迎えました。
すると、今まで苦しんでいた竜達は急に元気になりました。
白い竜はその力を全て使い、皆を救い、雪の様に消えて生きました。
その後、白い竜は竜達の中で神となり、竜達は冬でも暮らせる様に成りました。