マツコの憂鬱(小話)
マツコはどうした、の声に勝手にお応えして、月影マツコさんその後の小話。
注・・・かなりおふざけ色が強く、本編とも直接かかわらない内容になっています。
私はマツコ。
私は美しい。そして頭脳明晰。
されど、たった一人、思い人の心に届かない美貌や頭脳であるならば、そんなものは無きに等しい。
そう、この美貌や頭脳さえ、いっそ疎ましいほど。
クモの巣のように張り巡らせた罠から、いとも容易くのらりくらりと抜け出してしまう人。
その人の名は、北島さん。
ただ一人、私のことを「マツコ」と呼ぶ人。その人に呼ばれると、「マツコ」の名は「アフロディーテ」にも相等しい響きをそなえる。
彼は時折、私と同じ学年の女性と食事をともにしている。
よもや彼は、あのようなチンクシャが好みなのかという疑念にさいなまれる最近の私。
いやまさか。いやそんな。そういった悪逆非道・阿鼻叫喚なできごとが世間に通用するのであれば、それはまさに世も末ですこと。
「北島さん、お食事?」
「やあ、マツコ。そうなんだ、お食事だったのだ、元気そうで何よりだ。じゃ、少し急ぐので、悪魔のような男に騙されないように注意しろよ」
このような会話を交わしたことが思い出されて、私の胸に灼熱の風が吹く。
悪魔のような男・・・それは、あなたのことね、北島さん。
悪魔のように、危険な男。
いつか、あなたを振り向かせてあげる。
だから、待っていらっしゃい、北島さん。
*この決意から数日後、月影マツコさんは誕対長(誕生日対策委員会委員長)と運命的な恋に落ち、危険な男は無事、どうでもいい人に格下げされた模様です。
おわり