[23th night]
朝の穏やかな陽射しが、広い窓から降り注いでいた。
いつもならばこの陽射しを浴びる頃、わたしはこの寝台の上で独りきりだった。
けれど今、腰には心地よい圧迫があり、目の前にはアメジストを隠した端正な顔がある。
素肌を触れ合わせている温もり。
幸福のすべてに、わたしは包まれている。
「ウィリアム……」
そっと名を呟いて彼の胸に額を擦り寄せると、鼓動が少しずつ覚醒に近付いているのが分かった。
「……エリゼ? 起きたのか」
擦れた低い声に、自然と笑みが零れる。
「おはようございます」
「おはよう、愛しい人」
前髪を梳いて、額に降ってくる柔らかな感触。
くすぐったさに顔を上げれば、彼は可笑しそうに笑って唇にも1つ口付けを落とした。
「今まではずっと君と同じベッドで起きれなかった」
「どうしてです?」
「ここ最近、夢見が悪くなかったか?」
「悪いというか……
不思議な夢を見ていました。妙にリアリティのある」
夢の内容を説明すると、やはり彼は可笑しそうに笑った。
「抱き締めているのは間違いなく現実の私だよ。
起き抜けに君を抱き締めていたら苦しげにカルスの名を呼ぶから、君はまだあいつのことが好きなんじゃないかって思ってた」
「でもそのあと……」
「ああ。
安心したように私の名を呼ぶから解釈に困った。それ以上抱き締めていたらきっと抱き潰してしまうだろうと思って、寝台から離れるしかなかったんだ」
「じゃあ、愛しているというのも……?」
「ぜんぶ現実だ」
そう言って、彼はきゅっとかすかに力を込めて、わたしを抱き寄せた。