第二話:入社
「う、ん・・・?」
「おや、気がつきましたか。」
あれ、ボクなんでソファーなんかで寝てんだ?
それに、ソファーってこんなに小さかったっけ・・・?
「空、ここは?」
「ここが我々の会社ですよ~。それより、鏡、見ます?気が付いていないようなので」
そういうと手鏡を渡してきた。
・・・鏡の使い方とかわかんないって・・・。
颯くんは、確か・・・手にもって・・・手?
「・・・あれ?」
犬の手じゃない。すらりとした指が5本ある。
この手の形って、颯くんたちと同じじゃ・・・。
「ちょ!!鏡よこせ!!」
ボクは慌てて空の手から鏡をむしり取った。
「あんまり乱暴に扱うと壊れてしま・・・」
「いいから!!・・・あ・・・」
そこにうつっていたのは、黄土色の髪で黒い目をした青年がうつっていた。
これがボク?人間じゃないか。
颯くんと同じような動作で鏡を動かしてみる。
鏡の中には目を輝かせた青年がボクを見ているだけである。
「・・・タロウくん?あの?」
「・・・」
ボクは空と鏡の中の青年を交互に見た。
そして、自分の目で自分の体を見てみた。
たち耳系な犬耳パーカーにジーンズ、手には指のとこだけきられている手袋。
「タロウくん?」
「そっ空ぁあああ!!なっ、何これ!なんでボク人間?!これ、ボク?!」
「うぉぁ、お、落ちついてっ」
「せっ、説明きぼんぬうううう!!」
「えっ、えっとですね!君が気を失ってる間に人間化させたんですよ!」
人間化とかそう簡単にできるのかよ・・・。
というより、本当にこの人なんなんだ。
ただの人間がこんなマネできないよね。
「おい、お取り込みんとこ悪いんだけど、オーナー?おれのこと、呼んだまま放置?」
声が聞こえたほうを見ると、黒髪短髪のめんどくさそうな顔をした青年が扉のとこに立っていた。
「あ、ラスクくん。」
「ラスクって呼ぶな、今の名前はリョウだよ。で?オーナー?何?仕事?」
「あ、それもありますけど・・・」
「・・・何?この茶色い毛玉。きたねー色してんな」
なっ!ボクの毛色汚いとかっ・・・!初対面で失礼なやつだな!
しかも、こいつ見下してくるし!!なんだよ!こいつ!!
「きっ、汚いってなんだよ!!」
「は、そのまんまだぜ?お前、目ぇ見えてんのか?」
「なんだとぉおお!!」
「まっ、まぁまぁ二人とも落ちついてください!」
空が慌ててボクらの中に割って入ってきた。
うるさいな、空には関係ないのに!
何?!お人よしなのかよっ!ぷうー!
「なんでオーナーがとめんの?」
「いや、あのですね。二人にはペアになってもらおうかと。」
「「はぁ?!こんなめんどくさそうなやつと?!」」
思わずはもってしまい、お互いに嫌そうな目で見る。
・・・よく見たら、リョウのやつなんか悲しい目、してる気がするような・・・。
そんなことを思ってたらリョウが口を開いた。
「・・・ちっ。めんどくさいけど、面倒見てやるよ」
舌打ち?!今、こいつ舌打ちしたよねっ!
むきー!むかつく!こういうタイプ、嫌い!
「ま、まぁまぁ・・・とにかく、二人とも仲良くしてくださいね?で、さっそくですが依頼がきています」
「えっ、もう仕事ぉ?」
「何いってやがる、このぼけ。お前、おれの足ひっぱったら承知しねーぞ。」
「なぁにおぉう!」
「ふふ・・・依頼の内容にうつりますね。今回の依頼は、颯くんのお友達の佐倉 明くんからですね。『大切なペットが逃げてしまいました。小さな鳥です。おれがうっかり窓をあけっぱなしにしていて、逃げてしまいました。どうか、探してくれませんか。お願いします。』・・・だそうです。」
「今回は鳥探しか・・・かったりーな。」
「明くん、そんな人じゃなかったはずなのに・・・」
「はぁ?どういうことだよ。」
「いや、昔は動物大事にしててうっかり、ってこともなかったんだ。おかしいなぁ。」
ボクが首をひねってそういうと、二人の表情が変わった。
あれ?なんかまずいこと言ったかな?
「・・・ラスクくん、気をつけて、依頼に行ってくださいね。」
「あぁ、わかってる。つか、ラスクっていうんじゃねぇ。」
「????」
「おら!いいからさっさっと準備しやがれ!できしだい行くぞ!」
そういうと、リョウは勢いよく扉を閉めて出ていった。
リョウが出ていってから、ボクは空と一緒に準備をすることにした。
何を持って行こうか悩んでいると、空はにこりとほほ笑んだ。
「タロウくんは、別に何も持っていかなくていいですよ。」
「はぁ?」
「多分、ラスクくんがほとんど荷物用意してくれると思いますよ!それに、武器なんて君は拳で十分ですしね。」
やっぱこいつ、頭おかしいんだ。
仕事いくのに手ぶらって・・。ふつうないだろ。
というか、武器とか・・・物騒なこというなぁ。
「あ、うん。わかった・・・。じゃぁ飴玉でももっていくかなぁ。」
「私のお手製飴でも持っていきますか?」
「うん。ありがとう。じゃぁ、行ってきます!」
なんだろ、なんか嫌な予感がするなぁ・・・。
そして、ボクは足早にリョウとの待ち合わせの場所へと走って行った。