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第一話:お誘い

 「あれ、ここ、どこだろ?」

ボクは気がついたらこじんまりとした何もない真っ白な部屋の中にいた。

さっきまでボクのご主人・・・ 水稲 颯(すいとう はやて )くんと一緒にいたのに。

ちょっと寝てる間にボクをこんなとこに置き去りにしたのかな?

そんなことないよね・・・颯くんに限って。

ボクは嫌な気分を振り払うかのように首をふった。

「それにしても、何もない部屋だなぁ。・・・はやく帰らないと。」

「君は帰ることはできませんよ。」

見上げると全身黒ずくめで長身の男がほほ笑みかけていた。

さっきまでこの部屋には 誰もいなかったはず なのに。

急に怖くなってきて、思わずしりもちをついてしまった。

「だ、誰・・・?」

「おやおや、そんなに怖がる必要はありませんよ。ね、タロウくん?」

そういうと男は優しくボクを抱きあげた。

よく見ると優しい目をしている。真っ黒だから心まで真っ黒な悪いやつなのかと思った。

人は見かけじゃないなぁ、と改めて思ってしまう。

ボクがそんなことを思っていると男はボクを見つめてこう言ってきた。

「・・・名前:タロウ。犬種:パピヨン。性別:オス。年齢:2歳2カ月。性格:忠誠心が強く、人懐っこい。元気がよいが心臓病持ちだった。・・・血が濃すぎたんですね。タロウくんは。」

びっくりだ。

なんで全部わかるんだろう?

「あ、あんた・・・一体・・・?」

ボクは驚きを隠しきれないまま男にそう問いかけた。

男はボクの質問には何も答えず逆に問いかけてきた。

「飼い主をサポートしませんか?」

「は?」

「君は死にました。でも颯くんへの想いが強くて成仏しきれないでいる。颯くんを守るために私と手を結びませんか。」

何言ってるんだろう、こいつは。

頭大丈夫か?颯くんが言ってた、あれか。『中2病患者』ってやつか。

やれやれ、今の時代「あにめ」だか「まんが」だか知らないけど、そういう影響受けるやつが沢山いるって言ってたな。

それに、ボク死んでないし。

「・・・ボクは、死んでない。嘘も大概にしろよ。」

「いえ、君は死にました。つい先刻、ね。」

「嘘だ!だって、ボクっ・・・」

大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。

犬だって、泣けるんだよ。

男はボクが泣いたのを見て少し表情を変えたが、優しく微笑んだ。

「・・・信じられないでしょうが、これは事実です。申し遅れました。私、『夢幻の空』のオーナーをやっております。スカイ、と申します。空、とでもお呼びくださいませ。」

「夢幻の空?」

「はい。簡単に説明しますと、君のように死んでしまった動物で飼い主を強く想う心を持つ者たちを集めて仕事をする会社でございます。飼い主のサポートをして恩返しをしたり、なんでも屋のようにボランティアなどをいたします。」

空はボクの頭を優しくなでながら言った。

触れてくる手が大きくて、でも暖かくてきもちよかった。

「・・・でも、ボクは犬だよ。人間みたいに働けないよ。」

「その点はご心配なさらず。君には人間の姿を与えます。当社はまだ経営を始めたばかりでして。社員があまりいないのです。ご協力、願えますか。」

ボクは少し考えてしまった。

空は決して悪い人ではないだろう。でも、そんな、こんな話あるのだろうか?

そもそも本当に死んでしまったのだろうか?

考えてみればわからないことだらけだけど、ボクの周りに颯くんがいないのが、唯一の証拠だろう。

ボクは空にいやらしく、笑ってみせた。

「いいよ、その会社、入るよ。もちろん、三食昼寝つきで住み込みでいいよね?」

「ふふ・・・もちろんです。では、我々の会社に参りましょうか。タロウくん。」

「え?いくって・・・扉ないよ?」

空はにこり、と笑ってどこからか杖をとりだした。

何か嫌な予感がした。

「こうするのですよ。」

持っていた杖は勢いよく床を突き破り、底の見えない穴に空はボクを抱いたまま自ら飛び込んだ。

「死ぬううううううううううううううう!!!」

「はは、大丈夫ですよ。・・・あれ?タロウくん?」

ボクの意識はここでいったん途絶えてしまった。


ここからタロウたちの物語が書きつけられていきます。

さぁ、どう動いてくれるのでしょうか。

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