チートスキル(?)石ころ生成で苦行旅行生活~ただの石だが~
「『石ころ生成』…だと…?」
「ぷっ…いや、失礼…きっと神様は君がスキルに頼らずとも生き抜けるとお考えになられたのだろう」
石ころ生成か…
掌くらいの大きさの石ころを無限に生み出せるスキル…
言うほどハズレか…?
パッと思い付くだけでも無限に投石できるし…
サイズはちょっと小さいけど。
そのとき、俺の頭に一つの格言が思い浮かんだ。
「金見ること石の如く」
財物に惑わされるなという意味だが…
じゃあ、もしかして金って石なんじゃないか?
…
「ぷっ、」
「ハハハハ!!」
「まさかな、そんなこと出来るわけ…」
俺は手を握り、頭の中に金を思い浮かべた。
「石ころ生成」
うん…?なんだ、この黄色い石…
…まさか。
「銀」「ルビー」「サファイア」「…ダイヤ!」
…えっ?これ全部…本物?
宝石も石ってことか?!
あ、そっか…神様からしたら、レアメタルでも宝石でも、全部同じ石なのか…
価値を定めているのは人間…
…これで俺、金持ちか…?
俺は、生成した「石ころ」たちをじっと眺めた。
でもこれ…全部ただの石なんだよな…
なんか意味あんのか…?
ぼーっ
ダメだ、何もかも無意味に思えてくる…
いや、虚無感に浸ってても仕方ねえ!!
このスキルが俺に宿ったのは、何か意味があるはずだ!!
そう、これは神様からの試練!!
きっとそうに違いない!!!
そうして俺は、生きる意味を探す旅に出たのだった。
***
まずどこへ行こう…
このスキルでお金は簡単に稼げると思ってたけど…
よく考えたらそうじゃなかった。
スキルで生成した宝石を売るには、いつか自分のスキルのことを明かさないといけなくなる…そうしたらどうなるか…
自分の身を守るためにもこのことは秘密にしないと。
身を守る…?
そうだ!!旅に防具は必要だな!!
まず鍛冶屋で一式揃えるか!!
って、金ないんだった~
まあ、お金はぼちぼち稼ぐとして、まずは値段だけでも確認しとくか…
「お邪魔しまーす…」
「悪いが、今は営業してねえんだ。帰ってくれ」
「…どうかしたのか?」
「いや、客に話しても仕方ないだろ…」
「とにかく、話して見ろって。解決は出来なくても気分はちょっとくらい楽になるんじゃないか?」
「…陽気な小僧だな。まあいい、どうせ暇してたところだ。座りたまえ」
「おう、ありがとう!」
「…お茶もらえる?」
「ワシはお主の友達か!!」
「ワシは数年間ここで鍛冶屋をやってるんだが…」
「あ、そりゃ見りゃわかる」
「話を最後まで聞けえっ!!けしからんやつめ…」
「えっへん、まあ、とにかく…ワシが手を怪我したせいで作業が出来なくなってな…」
「娘の私が技術を継がないといけないんだけど…」
「レナ!お主までワシの話の腰を折りよって…」
「はいはい、ごめんなさい。私もお客さんにでも愚痴吐きたいの!」
「…で、収入がないから当然素材もまともに揃えられない始末でな…練習もろくに出来やしないというわけだ」
「ふーん、じゃあ、泣き面に蜂だ!」
「「失礼なことスッというな!!それになんでちょっと嬉しそうなんだよ!!」」
「お、おう…すっげぇハーモニー…呼吸ぴったりだな」
「…よし、むしろ都合がいい」
「どういうこと?」
「一応聞くけど…ここは無名なんだな?」
「ああ、そうだよ!!やかましいわ!」
「で、素材さえあれば大体のことは解決するっつうわけだ」
「そうだけど…そんな都合よく素材を入手できるわけないんだよね…」
「これ、何かわかるか?」
「なんだ…今度は鑑定か?ったく…面倒くさい客もあったもんだ…」
「どうせ暇してるんだろ?」
「そりゃそうだが…どれどれ…」
「?!」
「これは…鉄だな」
「ああ」
「なんだこの純度は!!どこで手に入れたんだ!!!」
「興味は生じたか?」
「生じるに決まっとるわ!!それで、この鉄はいったい…!」
「今から見せること…秘密にするって約束するなら教えてやる」
***
「銅!」「鉄!」「ミスリル!」「そんでもってオリハルコン!」
「待て待て!!」
「最後の二つだけおかしくない?!」
「そ、それは…お主のスキルか…?」
「ああ、俺のスキル…『石ころ生成』だ」
「…石ころ?」
「ああ」
「石ころだ」
「オリハルコンを石ころっていう奴がいるか!!!」
「そう言われても…神様がそう呼んでるんだから仕方ないだろ?」
「あ、」
「それ以上言ったら神聖冒涜だぞ」
「…何も言えない…」
「これを見た上で、あんたらに提案がある」
「俺と取引しないか?」
「…取引?」
「今素材がなくて困ってるって言ってただろ?だから俺がその素材をこのスキルで出すってことだ」
「?!いいのか!」
「もちろん、ただっていうわけにはいかない。俺も何か取らせてもらう」
「俺は鉱石を必要なだけ出す。そして俺が貰うのは…」
「「こくり!」」
「レナ、お前が作った防具を一式」
「えっ」
「それでいいの?!」
「わりに合わないんじゃ…」
「ああ、いいよいいよ。どうせ大したもんは出せないんだろ?」
「…言い返せない…」
ぐうう~
「…あと飯」
「ぷっ、」
「ガハハハハ!いいぞ小僧!気に入った!取引成立だ!」
「…なんでちょっと上から目線なんだ?」
「そういうことはいいから!よかった…これでやっとまた練習ができる…!」
「あ、言っとくけど、俺の提供した素材で防具を作ってそのまま売るとかはなしな?」
「えっ」
「だって…素材の出所聞かれたら困るだろ?俺はできればスキルのことは隠しておきたいから」
「確かに…」
「だから、俺の出す鉱石は練習用に使ってもらう。そんで…自分で素材を揃えられるようになるんだ」
「…!」
「どうせ俺はまた旅立たなきゃならない…ずっとここにいるわけにはいかないんだ」
「…実力を身につけて、自分で生きていけるようになれってことね」
「そういうことだ!」
「俺、このスキルをもらったとき思ったんだ。ダイヤでもオリハルコンでも、神様からしたら全部同じ石ころなんだって」
「現に…俺がこんなの持ってたってただの石ころだ」
「…」
「だから…これをただの石ころじゃなくするのがお前の仕事なんだ。そうだろ?レナ」
「…!」
「ガハハハ!!いいこというじゃないか、小僧!」
「うん…!この石ころを…必ず最高の一式にして見せる!」
***
「掌サイズだからちょっと面倒だろうが…溶かしてくっつけりゃなんとかなるだろ。知らんけど…」
「ああ、そこは問題ない。むしろ不純物がない分手間が省ける。レナ、素材は一級品だ!やるぞ!!」
「うん、お父さん!」
「おお…鍛冶のことはよく知らんけど…なんか手慣れてるな…」
「まあ…幼い頃から見習いをやってるからな…」
「だが…目標は国家認定の一級鍛冶師資格を取ること…!」
「ああ、一級の資格があれば融資も出やすいだろうからな…それと、オリハルコンを扱えるようになる必要があるってことだな」
「ああ…しかし、レナがオリハルコンを扱うのはこれが始めてだ。どうなることやら…」
「ちょっと!!二人してハードル上げるのやめてもらえる?!」
「「あ、すまん」」
「それじゃあ、指導していくぞ!」
「おっさんはオリハルコンの扱い方がわかるのか?」
「ああ…昔色々あってな…」
「うん~長くなりそうだから聞くのはやめとくわ」
レナのお父さん…サイマンは、ゆっくりと説明を始めていった。
「…とは言っても、感覚で覚えるしかないがな…とにかく実戦だ」
「結局それじゃん…まあ、仕方ないけど…」
「はああっ!」
カーンッ
「おぉ…見かけに寄らない腕力だな」
「あれがレナのスキル…『筋力増強』だ」
「…怒らせない方が良さそうだな」
「ああ…」
「ちょっと聞こえてるんですけど?!私のことなんだと思ってんの!!」
「「すまん…」」
「ったく…続けるよ!」
「足りない力は補えても…その分力加減が難しい…!」
パカーンッ
「うわああっ~オリハルコンが…」
「まあ…修行ってのは失敗しながら学んでいくもんだろ?」
「それに…まだまだたくさん出せるから気にすんなって」
「…この感覚には今一慣れない…」
「…同感だ…」
カンカンカン
「もう一度!」
カンカンカン
「もう一度…!」
カンカンカン
「まだまだ!!」
それから数日が経ち…レナはまだ、一回も成功していない。
「無理するな、レナ!もう休むんだ!!」
「…嫌だ…もう少しでコツが掴めそうなんだ…」
「ったく…こう言い出すと聞かないんだ…」
「…しょうがねえ」
俺は、積んであるオリハルコンの在庫をすべて鍛冶炉の中に放り込んだ。
「ああーっ!あんた何してんの!!」
「…お主、意外と大胆なことするな…」
「今日はもう終わりだ」
「でも…」
「無理して体調崩して、何日も休む方が効率悪いだろ」
「…!」
「頑張るのはいい…だが、それで身を削るなら、無価値…いや、それ以下だ」
「…グラン…」
「明日、また出してやるから、今日はもう休め」
「…わかった」
「よし、いい子だ」
「ちょっと、さっきからなんか子供扱いしてない…?」
「…すまん、つい」
「…もういいよ、はは…あんたの性格はもうわかったんだし…」
「お休み、レナ」
「…グランも」
それからも、レナは練習を続けていった。
「お疲れ」
俺は、レナに暖かいお茶を一杯差し出した。
「グラン…ありがとう」
「進捗はどうだ?」
「うん…だいぶコツは掴めたと思う。その…ありがとう」
「うん?俺は何もしてないけど」
「練習できたのはあんたが石ころを出してくれたおかげでしょうが!!」
「もう…結構勇気出して言ったのに無下にしないでよ…」
「そんなことより、休みはちゃんと取ってるんだろうな?」
「うん…またあれやられたら心臓が持たないんだから…」
「よし、いいぞ」
「なあ、レナ」
「一つ聞いていいか?」
「うん?」
「レナは…鍛冶の仕事好きなんだよな?それにしてもどうしてそこまで頑張れるんだろうって気になってな」
「大した理由はない」
「ただ…やってたらいつの間にか楽しくなってた」
「で、私はこれをやるしかないんだなって思ったわけ」
「ふーん」
「お前、すごいな」
「何よ、改まっちゃって…」
「だって、家業を継がなきゃ、とか、営みだから、とかじゃなくて、純粋に好きで仕事と向き合ってるんだろ?それって、簡単じゃないから」
「グラン…」
「ま、とにかく…応援してるぜ、鍛冶師さん」
「うん…私も頼りにしてるよ、石ころ生成師さん!」
「何それ」
「「ハハハハ」」
***
「…!できた!」
「本当か?!おぉっ!!俺の石ころが立派な剣に…!」
「なんか…感無量だな」
「へへーっ!すごいでしょ!」
「まだまだこんなもんじゃないわよ!」
「わずか数週間でオリハルコンの扱い方のコツを掴むとは…我が娘ながら…天才としか言い様がない」
「いや、才能と、努力の成果だろうな」
「その努力もあんたがいてくれたお陰なんだけどね?」
「冷静に言うなら…まだ道程は遠いな。試験で使われる鉱石には不純物も混ざってるし、合金の防具を作る課題が出るかもしれない」
「そっか…まだまだやることたくさんだね!」
精製の練習や合金の製造を含めて、諸々の練習を繰り返していくうちに、4ヶ月がすぎた。
「…いよいよ明日、試験日だな…」
「うん…準備はそれなりにしてきたつもりだけど…正直不安だな…」
「…レナなら大丈夫だ」
「準備した時間は短いかもだけど…お前は人の何倍も努力してきたはずだ。石ころを出してる俺が保証する」
「うん…そうだね、ありがとう」
***
「レナ!!」
「納得のいく品を作ってこい!」
「…うん!」
俺は、レナの試験に同行することにした。
女の子一人で遠出は危険だろうというのと…俺自身がレナの頑張りを見届けたいから。
「受験番号16番」
「はい!」
「本当に一級の試験を受けるのか?」
「…はい!」
「オリハルコンを扱ったことはあるのか?」
「…あります!」
ああ、あるとも。死ぬほど扱ってきたさ。
「…まあいい。落ちても受験代はも戻らないぞ」
「はい!」
貯蓄の半分以上を注ぎ込んで受けることになった試験…落ちたらすごいマイナスだな。
でもまあ…あのレナが落ちる訳がない。
俺は信じてる。
「レナ!」
試験場に向かうレナに、俺は親指を翳した。
レナは、覚悟を定めた表情で拳を握り締めて見せた。
頑張れよ。
***
オリハルコンとミスリルの合金って…よりによって最高難度じゃん…!
私って…なんでこうも運がないの?
ううん。グランみたいに…プラス思考で考えてみよう。
条件は皆同じ。
ここで私が飛び抜けた作品を出したら…一気に高評価をもらえる!
大丈夫。何度も見てきた。何度も触ってきた。何度も叩いてきた。
気付けば…体は自然と動き出していた。
***
「これは…!」
「何だ…この精度は…!」
「反発するオリハルコンとミスリルが完璧に調和している…!判別力のための課題で…満点を取る奴がいるか!」
それだけじゃない。この防具…「心」が籠っている。
「いったいどうやってそれほどの経験を…」
「…企業秘密です」
「…そうか。先程…見た目だけで判断したことは詫びなくてはならないな」
「いえいえ、そんな…」
「受験番号16番、レナ。文句無しの合格だ」
「それどころか…これを国王陛下に献上するなら、宮廷鍛冶師の座も夢ではないだろう」
「しかし…それは難しそうだな」
「…それはどういう…」
「この防具…誰かを想って作ったのだろう?これは…あるべき場所へ行くべきだ」
「…はい」
「だが…それは別として私から王宮に推薦を出したい。どうかね?」
「…ありがたいお言葉ですけど…遠慮させて下さい」
「…どうしてだ?」
「他に…やりたいことがありますので!」
***
「おう、レナ、合格おめでとう」
「まだ結果言ってないんだけど?!」
「まあ、どうせ合格だろ?」
「まあ…うん」
レナは、懐から資格証明書を出して見せた。
「おお…!一級鍛冶師、レナ!かっこいいじゃないか!」
「あと…グラン、これ…」
「うん?」
「試験で作った防具、譲ってもらったの。あんたに上げる」
「…いいのか?」
「元々私の作った防具を上げるって約束だったでしょ?」
「でも…」
「いいから!受け取りなさい!」
「…ありがとう。大事に使わせてもらう」
こうして、俺の最初の苦行は終わった。
苦行っていうには楽してた気もするけど…
何か悟った気がする。
***
「グラン、もう行くのか?」
「ああ、レナが資格を取るまでっていう話だっただろ?」
「これからどうするの?」
「まあ…生きる意味を探す旅を、続けるだけだ」
「…決めた」
「うん?」
「私、グランについていく」
「はあ?!折角受かったのに…鍛冶屋はどうするんだよ!」
「鍛冶屋は…今は休業でいい。ワシとてまだ他の仕事も出来るんだ!心配すんな!」
「私も…グランの探す意味を見てみたいから。それと…あちこちを旅しながら技を盗んで、私の名前を広めるんだ!」
「…そうか。そうしたいなら…好きにすればいい。二人の方が視界も広まるかも知れないしな」
「うん…!ありがとう!」
「グラン…レナをよろしく頼む。お主になら娘を任せられー」
「お父さん!!変なこと言わないで!」
「とにかく!行くよ!グラン!」
「ああ、行くぞ!」
そうして、俺たちの旅は始まった。
「…腹減った」
「最後なのに格好悪いこと言うんじゃないわよ!!」




