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もっとも近くて遠い場所  作者: 阿久津ゆう
第一章 故郷へ
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2話「口づけの儀式」

 雪原を踏みしめる二つの足跡が、風に消されてはまた生まれる。エリシアはルベドのマントを羽織ったまま、背伸びして苔むした岩棚の隙間に手を伸ばしていた。

「ん……届かない……」


 「無理するな」

ルベドが膝をつき、少女の脇の下に手を入れる。


 「おい、暴れるなよ」


 「だ、大丈夫です!自分でやれます!」

恥ずかしさと意地が混ざった声色で抗議するエリシア。だが次の瞬間、バランスを崩しルベドの首に抱きつく格好になった。


 「ひゃっ! ごめんなさい!」

真っ赤な耳朶が見え隠れする。


 「そのまま動くな」

冷静な声とともに、ルベドの左手がエリシアの腰に添えられた。右手は器用に岩棚の奥を探る。


 パキンと乾いた音。ルベドが掴んだのは半透明の結晶だった。

「これが目当てのものだ。特殊な酵素を含んでる」

そっとエリシアの掌に乗せる。

「ほら、触れてごらん。温度が下がらないと砕けない特性がある」


 「わぁ……冷たい……」

エリシアが息を飲む。結晶が掌の熱で微かに曇った瞬間、粉々に砕け散った。キラキラとした破片が冬の陽光を反射する。その中の一つが風に乗り、エリシアの長い髪に留まった。


「綺麗……」

ため息交じりの呟き。金糸の髪に輝く氷の欠片は、まるで髪飾りのようだった。


「おっと」

ルベドが不意に上着のボタンを外す。袖から白い靄のようなものが浮かび上がった。


「ルベドくんの服、何だか光って……!?」

エリシアが驚きの声を上げる。

「魔法か何かですか?」


「いや……これは...」

靄がゆらめき、ルベドの肌に吸収されるように消えていく。


 「体質みたいなものさ。冷気を操るのが得意でね俺は水系のアニマ属性を操るのが得意なんだ」


 「アニマ?属性?」


 樹 石 火 水 音 獣 光 闇


 これらの属性が基本的なアニマの星属性で自然に発生したと言われている。そして全ての生命が生まれた瞬間にこれらの属性のどれかがランダムで選別され宿ると言われている


 「俺は水属性がこの体に宿っている」


 「すごい……!」


エリシアが息を飲む。光は徐々に形を変え、小さな氷の塊となった。


 「こうやって、自然の力を借りることができるんだ」


 氷の塊を両手で包み込むように握ると、それが手の中で溶けて液体となりルベドの肌に吸収されるように消えていった。


「これ、すごい力なんですね……」

尊敬の眼差しを向けるエリシア。その表情を見て、ルベドはふと考える。


(この子も……いつか自分のアニマ属性に目覚めることがあるのだろうか)


 「興味ある?」

突然の問いに、エリシアが首を傾げる。

「どの属性を持ってるか知りたくないか?」


 「えっ……でも私、まだ子供ですし……」

自信なさげに俯くエリシア。


 「年齢なんて関係ないさ」

ルベドは優しく微笑む。

「俺が見せてあげる。本当は他人に勝手に調べちゃダメだけど……特別だ」


 エリシアの両手を取ると、ルベドは目を閉じ集中する。青い光が二人の手の間で揺らめいた。


 「……光?」

ルベドが目を開ける。


 「君の属性は光……いや、もしかしたらもう一つ重複しているかもしれない」

珍しいことではなかった。稀に二つの属性を持つ者が現れることがある。


 「光……?」

エリシアの瞳が輝いた。

「私にもできるんですか!?魔法みたいなこと!」


 「そうだな。ちゃんと訓練すれば、きっと使いこなせるよ」


 「やりたいです!教えてください!」

拳を握りしめるエリシア。

「強くなりたいんです……!ルベドくんみたいに!」


 ルベドは目を細めて少女を見つめた。


 二つの属性のうち一つは光で確定としてもう一つは何なのだろうか?

それに彼女はなんであんなあのような装置の中に......。

この子の属性を調べればこの子の出生やどこが故郷なのかわかるかもしれない


 

 (この子のことをもっと知る必要がありそうだな)

「今夜、きみの体内に宿っているアニマを調べるための儀式みたいなものをやろうと思う。かまわないかい?」


 「……はい!」

元気よく頷くエリシアの頭を、ルベドはそっと撫でた。


 「でも無理は禁物だ。まずは体力をつけよう」


 二人は再び雪道を歩き始めた。エリシアの心は新たな目標への期待で満ち溢れていた。

夕暮れの風が二人の髪を優しく撫でていく。


 寒さに耐えるため体を寄せ合って歩く二人。エリシアが突然立ち止まった。彼女の視線の先にあるのは巨大な洞窟の入口。冷気の渦巻く暗闇が口を開けている。

「ここなら野営できそうですね」


 「ああ。ただ、念のため安全確認をしてくる」

ルベドが先に進み、壁に耳を当てる仕草をする。

 「中に生物はいない。大丈夫だ」


 洞窟内部は思ったより広く、中央には自然にできた天窓から月明かりが差し込んでいた。


 エリシアが率先して枯れ枝を集めてきて焚き火を作る。ルベドは壁際に寄りかかり、少女の様子を観察していた。


「 ルベドくん、座ってください」

炎に照らされたエリシアの顔が明るく見える。

「今日は私がご飯を作ります!」


 「おう、期待してるぞ」

マントを脱ぎ、近くの岩に腰掛けるルベド。エリシアは鼻歌まじりに雪解け水で作ったスープを煮込んでいた。


 「あれ、手際いいな」

素朴な感心の声。


 エリシアが振り向くと、耳まで赤くなっていた。

「で、でしょー?意外でした?」


 「ああ。でも不思議と納得できる」

ルベドは笑いながら続ける。

「こういうところは子供らしくないな」


 「ふふん、褒め言葉として受け取っておきます」

胸を張るエリシアだが、直後に鍋の具材を焦がしそうになり慌てふためく。


 「まったく……」


 ルベドは立ち上がり、彼女の隣に腰を下ろす。優しく鍋に水を注ぎ足す。

「一緒に食べよう。俺の分もあるだろ?」


 「もちろん!あっ、でも量が少ししかありませんよ?」

エリシアが申し訳なさそうに目を伏せる。


 「それで十分さ。大事なのは気持ちだ」

ルベドが木製のカップにスープを注ぎ分け、二人で向かい合って座った。

「いただきます」


 「どうぞ!あ、熱いですから気をつけて」


 一口啜ったルベドの目が丸くなる。

「うまいな、これは」


 「ほんとですか!?」

エリシアの目が輝いた。


 「野菜の旨味が出てる。塩加減もちょうどいい」

真面目に評価する


 「食べながら説明するが君の体内に宿っているアニマを調べるための儀式の説明をする......これが...ちょっと説明しずらいところがあってだな......」


 焚き火が爆ぜる音が洞窟に響く中、スープの湯気が二人の間を揺らめいていた。


 「つまり……儀式と言っても、ちょっとした接触が必要なだけなんだ」

ルベドは指先で薪を弄びながら言葉を紡ぐ。炎の橙色に染まった横顔には珍しく迷いの色が浮かんでいた。


 「接触? ルベドくんと手をつなぐとかですか?」

エリシアが無邪気に首を傾げる。その幼い仕草が余計にルベドの口ごもりを深くする。


 「ああ……いや」

喉の奥で唾を飲み込む音が妙に大きく響いた。

「最初は手を握るだけでは足りない。次に額同士を合わせて……それでもまだ力は活性化しないんだ」


 「額と額?」

エリシアが自分の眉間を押さえながら考え込む。長い金髪の一房が灯火に照らされて琥珀色に輝いていた。


 「そうだ。互いの熱を通してアニマの共鳴を起こす。だが……」

ルベドの視線が一瞬エリシアの小さな唇を捉え、すぐに逸らされた。

「それだけではまだ不十分だとわかった。君の眠れる力を呼び覚ますためには……もっと深い接触が必要で」


 「深い接触?」

スープのカップを両手で包みながらエリシアが問い返す。その声には微塵も警戒心が含まれていない。


 「君の一番敏感な場所から、俺の生命力を注ぎ込まなければいけないんだ」

努めて平淡な口調を保とうとするルベドだが、言葉の端々に苦渋が滲んでいた。


 「敏感な場所……?」

エリシアが自分の手首や太ももを不思議そうに眺める。まだ幼い彼女にとって、その概念はあまりにも抽象的すぎるようだ。


 「具体的に言えば」

ついに意を決したようにルベドが顔を上げた。炎の揺らめきが彼の瞳に映り込む。

「君の唇を通して直接、俺のアニマエネルギーを送り込む必要がある。いわば……接吻によって」


 一瞬の静寂。洞窟を吹き抜ける風が二人の髪を揺らした。


 「口づけ……ですか?」

エリシアの大きな青い瞳がさらに大きく見開かれる。やっと理解したようだ。


 「ああ」

ルベドは正座したまま深く頷く。

「これを経て初めて君のアニマは完全に目覚めるだろう。拒否権はある。嫌なら別の方法を模索するしかないが……」


 「……ルベドくんなら」

思案するように小さく呟いたエリシアが突然顔を上げた。頬は焚き火の赤さとは明らかに違う朱色に染まっている。


 「ルベドくんなら大丈夫です!」

驚くほど明快な声だった。

「だってルベドくんは私を助けてくれた優しい人ですから。信じています」


 「……いいのか?」

あまりの即答に戸惑うルベドに対して、エリシアはこくりと首肯した。小さな手がスープのカップをギュッと握りしめる。


 「でも」

突然目を伏せて付け加える。

「はじめてなので……うまくできなかったらごめんなさい」


 「謝る必要なんか……」

言いかけてルベドは口を噤む。目の前の少女の揺れる睫毛や濡れた唇が、今まで気づかなかった妖艶さを帯びて見える。危うく自分の理性が揺らぎそうになるのを抑えつけた。


 「わかった。じゃあ目を瞑っていてくれ」

自分に言い聞かせるように低く囁くと、ルベドはゆっくりとエリシアに向き直る。

「俺が合図するまで呼吸を止めないように」


 エリシアが言われた通り瞼を閉じる。長い金色の睫毛が震えている。ルベドは彼女の肩に優しく手を置き、震える息を整える。

「行くぞ……」


 柔らかな感触が触れる。互いの鼓動が重なり合うのがわかる。そしてほんの一瞬──焚き火の灯りを超える眩い光が洞窟内を満たした。


 エリシアの体の中心で何かが弾けたように感じられた。温かいものが全身を巡っていく。

「あっ……」


 小さく呻くエリシアの額に汗が浮かぶ。ルベドは咄嗟に唇を離し、両手で彼女の頭を支えた。

く......やばいこのままでは....アニマを感じ取ることができない....何だこの感じは....


 エリシアはルベドに身を任せ耐えている。そして苦しみながらルベドに抱きつく


 「(がんばれ...あと少し.....)」


 「(ル....////ルベド君)」


 「……!……///んんっ!!!」


 

「..(ダメだ!まだ足りない!)

エリシアの口の中に舌を入れて深く絡ませるルベド、


 「!?///」

「ん..//…….///ンン..///っっ///」

そしてついにエリシアの体から光が溢れ出し彼女の2つ目の星属性の覚醒に成功する。


「す....すまない..エリシア」


 「う…….うん……」

息を乱しながら恥ずかしそうに顔を真っ赤にするエリシア


 「さてエリシアの二つ目のアニマはどんなものだったのだろうか?」

ルベドはエリシアから発せられた光の粒子を手の中に収集しアニマの解析を開始する


 解析結果は…….


 

 二重属性

 光+音


 その結果に対しルベドは驚愕の表情を隠せずにいた……


 お...音だってぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ!!!!おおお音って!!!!!


 説明しよう「音属性」これは始祖の属性の立ち位置にあたる星属性を研究し人工的に作られた属性だ。


 どういうことだ何故人工的につくられた音属性が彼女の身体の中に?.........

ということは彼女は人工的に音属性を植え付けられ二重属性にさせられたということか?

たしか....音属性は人工的につくられた属性ゆえその研究にかかわった国の人間でしか持てないはず……


 そしてこの音属性を作り出すことに成功した国は........


 ボヘミア王国


 古くから独自の音楽文化が栄えた国、19世紀ごろには国民楽派の作曲家によって、独自性の高い情熱的な音楽が生み出されていた....。


 現在この世界で存在するキエフ大公国や琉球王国に並ぶほどの歴史が長い国である


 確かあの国は....ある新興国と共同で一時期人工的に1から人間を作り出すいわばホムンクルス生体の研究にまで手を出していたという話だが...


 「……音属性?」

淡い光に照らされたルベドの顔が硬直した。その指先が無意識に震えている。


 「ルベドくん……?どうしたの?」

 

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