海の魔女
理不尽にも、どうやら私は「魔女」らしい。
特筆するようなおかしな生き方をしていたつもりは無いし、私も真面目に人生を謳歌してたんだと思う。中学を卒業する少し前くらいかな、今まで仲の良かった子達が私を避け始めたのは。何かやらかしたのかな、皆に嫌われるようなことしちゃったのかなって落ち込みながらも迎えてしまった卒業式。私はこの待遇の理由を最悪な形で知る事になった。
「今年の魔女は⚪︎⚪︎さんに決まりました」
卒業式の最中に私の知らない項目がある。「魔女発表」なんて聞いてない、しかもそれが「私」なんて。
皆が一斉に私を見ている。可哀想だとか、同情の目で。私が魔女にされたからって何なの、そんな目で見ないでよって叫ぼうとした時アナウンスが続いた。
「これから『魔女狩り』を始めます 観覧を希望する方は校舎の外までおいで下さい」
隣の生徒たちに腕を掴まれ袋を頭に被せられた。真っ暗な視界の中どこかに連れて行かれる。
この学校にはすぐ近くに海があって、連れてこられたのはその海のそば。何をされるか分かっていない私にサザナミの音が耳をなぞる。今まで気持ちよかったこの音が今はとてつもなく不気味に聞こえてしまった。
袋は外して貰えず、そのまま首を頑丈そうな紐で縛られる。思い出した、魔女狩りって魔女の公開処刑だ。
「待って!いやだなんで私が!!」
これから死ぬんだ。皆に見られながら、理不尽に。私は何も悪いことをしてないのに。必死に訴えてもこの状態を助けてくれる誰かなんて居なかった。
「それでは皆様 手を合わせてください」
その言葉を聞いて直後に紐が後ろに引っ張られる。私は紐にしがみつきながらひたすらに泣き叫んだ。
引っ張られていき、ゆっくりと体が海に入っていく。どれだけ叫んでもこの状況は変わらなくて、口にまで水が入って叫べなくなってからやっと私は少し冷静になれた。 どう足掻いてももう私は死ぬんだ。急だし、説明も無いしでこんなことが許されるのだろうか。恨んでやる、絶対に化けてでも復讐してやる。海の中で首吊りになった私は、気を失うまで下唇から血を出すくらいに歯に力を込めていた。
それから何日が経ったのだろう、死んだはずの私に意識が芽生えて。ゆっくりと目を開けると知らない魚達が泳ぐ海の中の光景が映った。
(私…生きてるの…?)
周りを見渡してもどこまでも海。上も下もわからないし呼吸も出来ている不思議。そして何より不思議なのは、下半身が魚の様になっている事だった。
「これ…人魚…!?」
「気がついたみたいやな」
声のする方を見てみると、まるで子供の落書きのような魚が居た。
人魚になった足を見て、落書き魚を見て。交互に見て結局何が何だか分からなかった。
「大変やったろ ウチが想像するに恋に敗れて自暴自棄になって入水…どうや!?当たってるやろ!?」
「魔女って言われて海に沈められた」
「アッチャー!ウチ『魔女』なんやけど!!」
どうしよう、悲劇が喜劇に塗り替えられそう。




