05 コーヒーの香りするあなたへ
家の近くにひっそりと営業しているカフェ
そこに通うようになってしばらく経つ
静かな空間と落ち着くコーヒーの香りが私を癒してくれる
そこで働く店員は1人
いつも話を聞いてくれて優しい笑顔を向けてくれる彼に想いを伝えたい
会計時にその日の伝票と一緒に手紙を渡した
「き、き、金額はちょうどですよね?レ、レ、レ、レシートは大丈夫です」
「は、はい。 ありがとう…ございます…」
私は声を裏返らせ耳まで真っ赤にしたまま目も合わせられず店の外に出た
突然の手紙失礼します
あなたの働くカフェに通うたび私の中であなたへの気持ちが大きくなり、どうしても伝えたいと思いペンを取った次第です
1年前に引っ越してきて知らない街を歩いている時、コーヒーの良い香りに惹かれお店をみつけたのが通い始めるきっかけでした
当時は知らない土地で知り合いもおらず仕事も慣れないせいか上手くいかなくって精神的に参っていました
そんな私に笑顔いっぱいで話しかけてくれて私の好みに合わせたコーヒーを出してくれましたね
その一杯がとても美味しかったのを覚えています
その後もお店に行くたび笑顔で迎えてくれてすごく嬉しかったです
お店で出会う他のお客さんとも繋いでいただけて友達も増えました
今の生活があるのもこのお店のおかげ、あなたがいてくれたおかげなんです
あなたの淹れるコーヒーが好きです
あなたの笑顔が好きなんです
もっとお近づきになりたいです
またお店にコーヒーいただきにお伺いしますね
いつものコーヒー淹れてくれると嬉しいです
数日後
私は彼に手紙を渡してからカフェに行けなくなっていた
それでも近くを通ると私の好きなコーヒーの香りがする
香りに誘われるように近づくと店の前で掃除をする彼がいた
私を見つけて一度大きく手を振り、店内へ案内するように手招きしながらこう言った
「いらっしゃいませ! いつものコーヒー淹れますね」