21 先の見えない君へ
今が辛い
止まない雨は無いだとか、明けない夜は無いだとか良く言うけど……
過酷な雨はそもそも降ってほしくないし、不安な夜は今すぐ明けてほしい
苦痛がいつかなくなる希望を持ちたいんじゃなくて、いつそれが無くなるのか知りたいんだよ
そんな風に思うようになってしばらく経つ
休日のある日の朝、玄関のポストがバチバチとすごい音をたてているので目が覚めた
寝ぼけた頭で確認すると1通の手紙が入っている
朝から迷惑な郵便だと思ったが内容を確認する
やあ、おはよう
この手紙が届いたときすごい音で起こしてしまって申し訳ない
どうしても今の君へ伝えたいことがありこの手紙をしたためた
今の君は精神的に参っている状態だと言えよう
でも大丈夫だ
この手紙を読んで1週間後に素敵な出会いをし、人生において一番大切だったと思える経験をする
その為にもアドバイスがある
行なっている研究のせいでろくに身だしなみには気にかけていないだろう
机の引き出しに眠らせてあるブレスレットがあるはずだ
それだけはいつも身につけておくように
最後に1つ言っておきたい
君は今、自分に自信が持てず自己嫌悪しているところだ
しかしながら、君の事を愛しているものも存在する事を知っていてほしい
私も君を愛するものの1人だ
まずは自分自身の良い所を見つける事から始めると良いだろう
君の手の届く場所に幸せはたくさんあるよ
何だ、この手紙は?
新手の宗教か、それともオレのストーカーだろうか?
不審な点しかないが何か心に残るものがあった
言ってほしい言葉が書いてある気がした
とりあえず引き出しの奥に眠らせてあったブレスレットを探し出し身に着けた
それから30年後
私は今、メディアの取材を受けている
世界初のタイムマシンの開発に成功したのだ
ずっと大事に取っておいたこの手紙
その文章を書き写した新しい便箋
私も愛する君へこの手紙を届けよう




