20 分刻みで忙しいあなたへ
自分で会社を興しそれなりに事業も展開出来るようになった
そうなったのには自分の頑張りもあったとは思うが、何より社員一人一人の努力があったからだ
中でも社長秘書として様々な実務を担当してくれている女性がいる
彼女には世話になりっぱなしである
彼女はいつも私より早く出勤してきている
今日も私が出勤してきたタイミングですでにPCに向かって作業をしている
「おはよう、今日も早いね。ちゃんと勤務時間申請してよ。」
「おはようございます。承知しました。本日のスケジュールをメールしておきました。ご確認ください。」
クールで優秀な秘書という形容がピッタリの彼女
でも、今日はいつもより言葉に冷たさを感じる
私はまずPCを起動し、メールアプリを確認した
おはようございます
本日のスケジュールをご連絡いたします
10:00 営業部長との顧客対応について打ち合わせ
11:00 商品展示会について進捗報告と打ち合わせ
12:00 中途採用者と懇親会を兼ねた昼食会
13:00 A社様との打ち合わせの為移動開始
14:30 相手先で打ち合わせ
15:30 帰社の為移動開始
16:45 B社様とWeb打ち合わせ
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18:00以降 私からあなたへ告白
※詳細は直接お伝えします
以降A案もしくはB案をご選択ください
A案
19:30 帰宅
B案
19:30 駅前ホテル20階のフレンチレストランで会食
21:00 2件目でアルコールを主とした食事
23:00 帰宅
本日のスケジュールは以上です
ご不明点等ございましたらお聞きください
途中までスケジュールだったのに、18時以降何?
?、?、?
全然、意味が分からない
私は席を立ち、モニターを見ながらキーボードで入力している秘書の前に立つ
「あのスケジュールのメールは何です?」
「……どこか不明な点はありましたか?」
感情ののっていない声で秘書の言葉が返ってくる
「18時以降がメールだけだと分からないな。君が私に話があるようにみえるが合っているか?」
「……はい。その認識で間違いありません。」
やはり一切こちらを見ずに淡々と答えてくる
「ならあのスケジュール書き換えてくれないか? 君から私に告白では無く、私から君へにしてくれ。その後はB案だ。」
「えっ? わ、分かりました。書き換えて送り直します。」
一瞬、彼女は驚いたように顔を上げ私の顔をみた
すぐさまいつもの表情で視線をモニターに戻し、メールを変更して送り直した
秘書は表情を変えず作業を続けているが、耳は真っ赤になっている
今夜のプレゼンは大仕事になりそうだ




