17 変身したヒーローへ
ヒーロースーツを脱ぎ一息ついている
オレは遊園地でヒーローを演じるスーツアクターを仕事にしている
アクションパートが終わり、あとはヒーロー役の先輩にバトンタッチし控室に戻ってきている
「よう、おつかれー」
「お疲れ様です、先輩」
先輩は、ショーを観ていた子供達から貰ったプレゼントを手にし帰ってきた
一生懸命描いたであろうヒーローの絵や手紙を何通も貰っていた
「これお前にだってさ」
そう言って1通の手紙を渡してきた
「オレにですか?」
こういうファンからの手紙は顔が出ている変身前の役者に渡される事が多い
「そう、お前に。よく見てる子がいてさ。ポーズやってみてって言われたんだよ。それで、その子の前でやってみたら『お兄ちゃん違う、さっきのヒーローの人に渡して』ってさ。そんなに違うかな?」
鏡の前で2人で同じポーズをとってみる
「差はないですけどね」
そう言った後、手紙を受け取り中をみてみた
いつも悪いかいじんからお母さんとぼくを守ってくれてありがとう
かいじんが悪さしに来るのはこわいけど、いつもヒーローがたすけてくれるから心ぱいしてないよ
ヒーローのパンチとかキックでかいじんをやっつけてるところ、すごくカッコイイね
ぼくも将来はみんなを守れるヒーローになりたいの
もしなれたら、いっしょにみんなを守ってくれますか?
ぼくはヒーローみたいにカッコイイ大人になりたいです
いつも応援しています
がんばってね
ヒーローマスクで顔を隠して誰かの代わりを演じてきた自分が初めて誰かに観てもらえた気がした
約束守るにはあと10年は続けないといけないな
でも、この手紙があれば頑張れると思う
小さなヒーローが来るのを待つとしよう




