14 報われない努力を厭わない人間へ
オレは貧乏神ってやつだ
例え話じゃない
憑いているものの幸運を他へ飛ばしてしまう能力を持った神だ
世の中の幸運と不運は平等であるべきとオレたち神が決めた
今、オレは目の前にいる人間の女の担当をしている
この女は生まれついての強運らしく、普通にしていると強運すぎて世の中の幸せのバランスが崩れてしまう
だからといってマイナスに調整されるなんて可哀想にも思えるがこれもオレの役目だ
ついこの間、この女から担当を外れるようにと通達が来ていた
やっとこのあとの人生の幸運とバランスとれるようになったらしい
長い間憑いていて、少し情が湧いてしまったこの女へ最後に労いの言葉でもかけてやろう
やあ、人間の女よ
オレはお前に憑いている神だ
でも、お前の事を守っている訳じゃない
むしろ運を悪くしている貧乏神ってやつだ
お前が生まれてから今までずっとお前に憑いてきた
良いことなんて全然だし悪いことばっかりで、これまでの人生はお前にとって厳しい道だったはずだ
それも全部オレのせいだ
たしかお前が学生の頃、あまりにも運が悪すぎて
「お前、貧乏神でも憑いているだろ?」
なんて他の人間に揶揄われた事があったろう
その時お前がなんて言ったか覚えているか?
「身寄りがなくて誰もそばにいない私には、貧乏神様でもそばにいてくれるなら嬉しい」
なんて言ったんだよ
オレのせいで不運なのに、オレみたいな存在でもいたら嬉しいなんて変なやつだと思ったよ
でも同時に、お前には幸運を掴んでほしいと思ったんだ
オレがお前に憑くのもそろそろ終わり
お前のひたむきに頑張る姿、けっこう好きだったぜ
残りの人生、大きな幸運掴んでくれよ
じゃあな
女は目を覚ました
貧乏神と名乗るものから手紙を貰って、それを読んでいる夢をみた
見た夢のせいか、1人でいるいつもと変わらない家の中が少し寂しく感じた
見慣れた同じ空間なのに誰か居なくなってしまったかのように思える
なぜか分からないが、口から『ありがとう』と溢れた
数年後、女は事業に成功し幸せな家庭の中にいるのはまた別のお話




