PS:06 気付いてくれないあなたへ
【※ホラー演出あり。苦手な方はご注意くださいませ】
高校は夏休み中ではあるが特別講義があって暑い中登校してきた
帰って家に入ると誰もいない室内は蒸し風呂のような空気で満たされていた
自室のエアコンのスイッチを入れ、カバンの荷物を取り出す
その中に見慣れない花柄の封筒を見つけた
誰かのものを間違って持ってきてしまったのかと良く観察してみると自分の宛名が書いてあった
とりあえず中を見てみる
毎日こんな暑いのに登校して頑張ってるね
予習復習もしっかりしてるし毎回の小テストの結果もほぼ満点なんて凄すぎるよ
これならあなたの希望する進路の大学なんて余裕なんじゃないかな
御父様と同じ仕事がしたいからあの大学選んだんでしょ?
子供の頃からずっと言ってる夢を追いかけてるなんて素敵
すっごいすっごいカッコイイよ
まだまだ暑い日が続くから体調には気をつけてね
こんな暑い時期はしっかりご飯食べてほしいな
せっかく御母様が作ってくれた食事なのにトマト苦手だって言って残したらダメだよ
それにしてもご両親がいない時間に寄り道もしないで早く帰ってくるなんて……
私とのふたりっきりの時間作ってくれてるんだよね
前の人はそんな事してくれなかったから嬉しいよ
あなたとなら上手くいきそう
あなたとならずっと一緒にいられる
あなたとなら幸せになれる
だからもっと私を見てよ
今度は失敗しないから
気づけばエアコンが部屋の温度をグッと下げていた
手紙のせいか冷えた空気のせいか分からない寒気に気を取られていて、もっと大事なことに気が付かなかった
すぐ背後から首筋に伸びる生暖かいその手のひらに




