10 大人になったキミへ
小学生の時、父の事業が多忙になったり病弱な母の治療なども重なり祖父母の家に自分だけ急に引っ越した
中学から大学卒業まではそのまま祖父母の家で暮らし、就職を機に実家に帰ってきた
自分の部屋は引っ越した当時のまま残されていた
部屋自体がタイムカプセルのようでその頃の様子がありありと思い出せる
学校の課題で未来の自分に宛てた手紙を書くなんてのも保存してあった
その手紙ともう一通、自分の字とは違う可愛い文字の封筒があった
記憶にない自分宛ての手紙
内容が気になり封を開けた
急なご用事で引っ越してしまいましたね
課題で『未来への自分』に書いた手紙を学校に置いたままだったので持ってきました
せっかく仲良しだったのに突然いなくなっちゃったからとってもさみしいです
引っ越した先で元気でしたか?
お友達はできた?
仲のいい女の子とかいるのかな?
キミともっと仲良くなりたかったです
もし帰ってきてこの手紙を読んだ時、私の事を思い出したならまた仲良くしてほしいな
いつも日が暮れるまで遊んでいた公園のブランコでまた遊ぼうね
手紙はそこで終わっていた
同じクラスで仲の良かった女の子を思い出した
自分にとって初恋だったと思う
過去の自分が書いた未来宛の手紙
そこには未来の自分に対する希望が溢れていた
その頃が懐かしく思え夕暮れの街を散歩する
さっきの手紙に書いてあった公園は大人の足ではすぐ近くだった
変わらずそこにあるブランコでは幼い男の子と女の子が楽しそうに遊んでいた




