7話 思ったより経営が危なかったらしい
俺たちは風間さんの会社へと向かいながら今日一日の感想なんかを話している。
「へーそれで男の子たちで固まって話してたんだ。あんまりみんなで一緒にいるからクラスの子たちがハルに話しかけられないって嘆いてたよ。伊織なんかは今日話せたことめちゃくちゃ喜んでたからね。みんな羨ましがってたよ。」
あー確かにな、あの後みんな話しかけてこなくなったなとは思ってた。けどあれってみんな由希のとこに行ったからじゃないの…?
「そういえば由希ちゃんが一番のファンでいてくれてるんでしょ?あれは嬉しかったなあ。もっと早く言ってくれればよかったのに。由希ちゃんにだったらいくらでもファンサするよ。」
みんなから今のところ絶対に余計なことはするなって言われてるけど由希だったら問題ないしな!
「だって恥ずかしいじゃない…。一年くらい会ってなかったんだよ、それが雑誌で見かけてさ、それからずっとファンやってるなんて気持ち悪いかなって…。」
「えーなんで?全然嬉しかったよ俺は。知ってるのは分かってたけどさ。あ、でも俺にとって由希はなんかこうファンってよりはもっと近い感じだからさ。変に距離とかはとらないでくれると嬉しいんだけど…。」
ここで変に緊張されたり遠慮されると結構ショックだからな。伊織さんとかもこうクラスメイトってよりファン!って感じするしなあ…。
「そ、それはもちろん!前も言ったでしょ?昔と変わってなくて嬉しいって。私にとっても遥は大事だから…。あ、それとは別にね!ファンとしての私はあくまでもファンなので!ファンとしては特別扱いしなくて大丈夫です!」
「はは、分かったよ。でもこうして一緒にいるときはいつも通りがいいかな。俺もリラックスできるしね!」
「…やっぱりプライベートモードすら強い…。そ、それにしてもさ風間さんの会社ってこんないいところにあるんだね…。なんか私まで入っていいのか分かんないよ。」
うん、俺もちょっとビビってる。あの人うちなんて小さい事務所だって言ってたのに…。
エントランスまで入ると空港で俺の警護的なことをしてくれた女性がいた。
「遥さん!待ってましたよ!社長はオフィスで待ってますから。あ、お連れ様ももちろんどうぞ。」
「ありがとうございます、こんな大きなビルだと思ってませんでしたよ。」
最初はほんとに間違えたと思ったよ。このスタッフさんがいなかったらちょっと分かんなかったな。
「あ、でもここ全部ではないですからね?ここのワンフロアだけですよ。いつかは自社ビルが欲しいですけどね。実は社長も帰国して初めてここのオフィスに来たんですよ。遥さんが載った雑誌あるじゃないですか。あれは向こうでも好評だったからこっちで日本版を出すときほとんどうちの資本で出したんですけどね。あれがもうほんとに売れたんです。それで帰国に合わせてうちも大きなビルのオフィスを!ってことになりまして…。だから遥さんが引退なんてしなくて社員一同ほっとしましたよ。」
え、そんなに売れてるの!?俺お小遣い的な額しかもらってないけど…。あ、いやあれか、急激にくれるようになった高そうな服とかあれが報酬ってことか…?
「だから言ったでしょ、ほんとに売れてるし人気あるんだよ。今度から変装とかした方がいいって。まだ帰国して特に活動してないから何も起きてないけど、これからは絶対囲まれるよ!」
うーん考えるべきか…?確かにこうして現状を見るとな…けどスターって変装するのか…?いやしないよな、分からんけど。
「あ、遥!来たんだね、よしじゃあ契約について話そうか!あ、由希ちゃんも久しぶり。えっと…最後に向こうに遊びに来てくれたのが最後かな?」
俺たちがフロアに着くといつものようになかなかの勢いで話し始める。ちょっと圧を感じますよ…。
「お久しぶりです。今日は私まで来てしまって…もしお邪魔でしたら言ってください。」
「邪魔なんてとんでもない!そもそも遥一人じゃここまで来れるかすら分からないもの。だけどここで聞いたことは誰にも言っちゃダメだからね。発表前の情報は出来る限り流出を防がなきゃだからさ。」
「はい!あ、でもグッズの販売とかの話はなるべく私も聞きたくないんです…。一ファンして買いに行きたいので!」
「はは、もうグッズ販売まで見据えたファンがいてくれるなんてよかったね、遥くん。」
風間さんがそう言うと由希も自分の発言の意味が分かったのか顔を真っ赤に染めていた。かわいいし売れるって思ってくれてると考えると嬉しいな。
「由希ちゃんありがとね。さてと、期待に応えるためにも頑張らないとね。」
「よしじゃあとりあえず契約の話をしようか。まずは遥さ、君はうちの風間プロダクションとの専属契約という形になるがいいか?いつでも君からの契約解除の要求もできるようになってるからそこは安心してくれ。」
まあどうせここ以外でやるつもりもないしなんでもいいけどな。とはいえ風間プロダクションってどうなんだ…?自分の名前を付けるって普通なんだろうけど…かざぷろってとこか?
「あ、はい了解です。あれ、そういえばスタッフさんも空港で見た人たちしかいないですけど他には?」
だだっ広いオフィスだけど実際使ってるスペースも狭いしな。全員外か?
「いないよ。専属契約も君だけ。だってうち少し前までつぶれかけだったもん。男の子の芸能人は基本的に最大手の事務所だけだからね。そこを君の活躍でどーんって感じ。やっぱり引いた?もし別なところでしっかりしたサポートが欲しいならいいところ紹介するよ。私顔だけは利くからさ。」
「いいえ、びっくりはしましたけど全然気にしませんよ。それでいつから仕事ですか?俺はいつでもいいですよ、学校からも学外活動ってことで成績つけてくれるらしいんで。早めに仕事した方が経営的にもいいんじゃないかって思うんですけど…。」
思い切ってここ借りたって言ってたけどこれまじで俺が断ってたらどうするつもりだったんだ…?
「なら!明日にもお願いしたいんだ!モデル!」
わーこれ絶対用意してたよ。すぐ資料もってきたし…。
「モデルってこんなに仕事あるんですねー。男性で芸能活動をやる人ってほとんどいないじゃないですか。だからこんなすぐ仕事あるなんて思ってなかったです。」
「男性が少ないからあるんだよ。男性用の服のモデルは背の高い子とか体格が男性に近い子とかがやるんだ。でも実際それは寄せてるだけでやっぱり男性がやるのがベストでね。しっかり努力した女の子より何もしてない男性の方が似合うくらいにはね。だから遥くんみたいなモデルのできる人は仕事だらけだよ。海外ならまだ結構男性モデルとかもいたし君も当時は背が低かったからピンと来ないかもだけどね。」
たしかに始めた頃より今はだいぶ背も伸びたしな。でも努力より性別で決まっちゃうってなったらしっかり準備してこない男に腹が立つ気持ちもわかるな…。俺はせめてしっかり準備しなきゃな。ただでさえ帰国してから太り気味な気するし。腹筋なんか特に前より少し肉が目立ってきたからな…。
「今の君ほど顔も整って身長もある男なんて多分いないからね。海外でも君はデビューしたときから顔面はトップと張り合えたんだし自信持ってよ。君の隣には大ファンの子も座ってるしね。」
「そうですね!由希ちゃんのためにも頑張りますよ!」
俺なんだかんだで由希に褒められた時が一番嬉しかったしな。
「えっと嬉しいんだけどあんまり人前でそういうこと言われると…。」
「あれ嫌だった…?」
「そんなことないよ!ただ照れるっていうか…恥ずかしいっていうか…。」
「だよね!分かってるよ!でも由希のために頑張るっていうのはほんとだけどね。」
「あー仲がいいのは結構なんだけどね、うちのスタッフが流れ弾で仕事できてないからほどほどにね。」
いや仮にも契約中なんだから部屋の壁厚くしとけよ…。
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