23話 オフショットは大事
ドラマの第一話の放送翌日、俺は今日は学校を休んで事務所で過ごしていた。
「ごめんねえ、学校休ませちゃって。それにしてもいいドラマだったよ、次が楽しみだね。」
昨日の放送を俺たちは事務所に集まってみていたわけだがこの人はとにかく大騒ぎだった。俺としては自分が出ているものをみんなで見るというのは恥ずかしいし俺は勉強のためにも何回も見たものだから正直きつかった。そしてその後もお酒を飲み始めたりで大変だった。結局今日は寝坊したし事務所から通うのも面倒だから欠席しているわけだ。
ちなみに大地は普通にスタッフさんに送ってもらって登校している。はい、罪悪感ですね…。まぁでもね、いいんですよ、大人組がいいって言ってるからね。
「いや全然大丈夫ですよ。それより俺の寝るところまで用意してもらってすみません。正直みんなで見るのは恥ずかしいですけど慣れなきゃですねえ…。」
風間さんは珍しく優しい表情で俺の方を見ていた。
「改めてだけどさ、ありがとねほんとに。こんな風に綺麗な事務所で過ごしたりできるのも遥のおかげだよ。あの時遥のお小遣いが足りなくなってなかったらって思うとゾッとするよ。」
そう言って俺の頭を撫でながら感謝の言葉をくれる。昔からこうやって褒めてくれたなと思って少しだけ懐かしい気持ちになった。
「俺の方こそずっとお世話になってますからね。それに恩返しって意味で言えばまだまだこれからですよ!風間さんが一緒にいてくれてなかったら俺、どうなってたか分からないんですから。」
改めてこんなこと言ったことなかったけど感謝しかない。まぁかなり変なところもあるけど信頼できる人であることは間違いない。
「ありがとう!じゃあそんな遥くんにお願いなんだけどさSNSやろっか!」
すごく、本当にすごくいい笑顔で微笑みかけてきた。さっきまでの感動的な空気が台無しになったことは間違いない。
「えーと…まぁ別にいいっちゃいいですけど…。でも俺こまめな更新とかできないですよ?それにあんまりネットとか分かんないんで教えてもらわないと…。」
「いい!全然いい!というか私たちが、スタッフがそういうのはします!遥のオフショットとか動画とかを撮らせて欲しいんだよね。ドラマのオフショットも大好評なんだよ。」
「あ、それなら全然いいですよー!でも見る方法とか教えてくれません?オフショット上がるみたいなのは聞いてるんですけど見れてなくて。」
いまいち見る方法が分からない。だからいつも学校でもネットの話とかをされる時も会話についていけないんだ。最近は同じクラスの薫くんからスマホで映画を見る方法というのを教えてもらってる。
「まぁ一応やり方は教えるけど見たかったら普通にスタッフに頼めば見せてもらえるからね。うちの事務所でも正式に遥のSNSを作ってそこにオフのやつを上げていくからさ。一応全部の写真は遥本人のチェックを通っただけのやつにするからそこは安心してね。」
「わかりましたー!あ、もしかしてもう撮る感じですか?」
「あれ、よくわかったね!今日はドラマの衣装に寄せた感じでいこうと思ってね。どんどん撮りますよ!」
風間さんは立ち上がってスタッフさんを呼びにいった。流石に寝癖まみれのままではよくないと思い俺も俺がプライベート空間にしている部屋を出る。
「あ、優香さんおはようございます。朝事務所で会うって新鮮ですね!」
「…かわいい。…ていうか遥さん!ダメですよそんな格好で出てきたら!私はまだ耐性ありますけど、パジャマ姿なんて他の子なら動揺しますからね。」
朝一で怒られるってのも滅多にない経験だな…。けどこれが寝る時用にって用意された服なんだからしょうがないだろとも思う。
「いやーこの後オフショット?を撮りたいらしくて。だからその時着替えればいいかなって感じでした。とりあえず寝癖だけ直そうと思ってたんですけどよく考えたらそん時まとめてやった方がいいですよねー。」
準備が終わるまでもう少し寝てようかな、いっそのこと。
「ついにSNS始動ですもんね!私がメインで管理するんですよー!マネージャーなので!そういうことならすぐ行きましょう。衣装とかメイクとかのスタッフも昨日泊まって事務所にいますから。」
優香さんにぐいぐいと引っ張られて俺は事務所内の衣装部屋へと連れて行かれた。そこに風間さんも合流しオフショット撮影が始まる。
「うんうん、流石だねすっかり九条になっちゃったよ。全然よく見ると地味じゃないけどね。」
風間さんは撮影現場に来たことがないので俺のメイクの様子なんかは知らない。そのため初めて見る俺の変化する様が面白いらしく一人盛り上がっていた。
「わざわざ衣装着せて何枚か撮った後に言うのもあれなんどけどさ…これじゃドラマの公式には勝てないよね…。こっちは単品、あっちは全員だもん。…よし!やっぱりこっちは遥本人の魅力で勝負しようか!」
この一言で俺はいつもの格好に戻された。まぁ髪型とメガネくらいの変化なんだけどね。
「よし!ミニインタビューにしてアップしよう!で、次から質問コーナーを用意ってことで。我ながら名案だねー!」
こうして完全な思いつきでどんどん企画として進んでいく。ここで何を言っても却下されるので嫌なこと以外は黙って頷くことにしている。
「じゃあ聞いていきますねー、えっと好きな食べ物はなんですか?」
うーん質問が弱いなあ…これ自分で言うのもなんだけどマジで誰が見るの?由希とか栞なら見てくれるかもだけど二人は俺のことわりと知ってくれると思うし、需要が分からん。
「寿司ですね、焼肉も好きです。…これほんとに大丈夫ですか?めちゃくちゃ弱くないですか?」
とにかく風間さんがオッケーサインを出しているからいいんだろうけど…俺は失敗しても絶対責任は取らないことを決意した。
「初めてのドラマ撮影なわけだけどどうだった?」
「どうだった?えーと…まぁ最初は緊張しましたね。だって僕が一番下手で経験がないですから、迷惑かけるだろうなって思ってたからね。けどそういう意味じゃ楓さんが助けてくれたのがでかいです!まじで。」
「遥くん…それって話しても大丈夫?別に事務所的にNGとかじゃないけど本人的にはどう?」
一瞬考えてみるが楓さんもテレビのインタビューでむしろ積極的に話していたし、俺にも話していいかの確認もくれていた。そのときお互い大丈夫ということだったから平気だろう。
「大丈夫ですよ、本人からも話していいって言われてますし。最初の撮影が終わった後に楓さんが食事に誘ってくれて、まぁそれは行けなかったんですけどその後に行く機会があって。あれで正直現場の人から嫌われてなくて安心したのはありますから。」
「じゃあ現場で一番仲がいいのは野村楓さんってこと?」
「まぁ僕からそんなこと言っていいのか分からないですけど、僕はそう思ってますね!あ、もちろん主演の後藤達也さんにもよくしてもらってますよ!」
これに関しては優香さんは知ってるわけだから視聴者向けの質問なのかな?
「じゃあ次は今後挑戦してみたいこととかある?仕事でもプライベートでもいいんだけど。」
「仕事なら今はドラマが少しでも良くなるように頑張ることしか考えてないですね。全然余裕あるわけじゃないんで!プライベートなら旅行に行ってみたいかも!まぁ高校もあるし仕事も大事なので全然先の話ですけどね。」
ここで一旦撮影が終わる。風間さんは上機嫌で満足気だがこっちとしては不安でしかない。大したことを話していないし、だが周りのスタッフさんは手応えのありそうな顔をしているから大丈夫なのかもしれない。
「よし!あとはオフショットだね!そんなに不安そうな顔してないでさ、こっちに目線ちょうだい。かっこよく撮ってあげるからさ!」
「はいはい分かりましたよ。ほんとにかっこよく撮ってくださいよ?いつもわざと俺のダサい瞬間とか撮ってみんなして笑うんですから。」
ピースしろと要求されたからしても一向にシャッター音が鳴らない。というかこのやりとりを始めてから一度も撮ってない気がする。
「これほんとに写真撮ってますか…?」
「んーん、これ動画だもん。あ、もし嫌だったらアップしないけどこれ上げてもいい?今んところ変なシーンとかもないしさ。」
あまりに平然というから俺も思わず笑ってしまった。その後満足そうに撮影を終えた風間さんから撮った写真や動画を全て確認させられ全部ひとまず許可を出した。どれだけアップするのかは俺には分からないが上機嫌だったので出来は良かったのだろうと思う。
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