21話 ドラマの魅力と裏話
撮影が始まってから一月ほどが経った。その間俺は撮影現場か学校、家の往復しかしていないような生活を送っている。たまに予定が合えば由希や大地と遊びに行ったり食事に行く時間も多少は取れたがそれでもかなり忙しく過ごしている。
ドラマの放送開始が近いということで俺の出演が発表された。そのため俺は今日、宣伝のための取材に参加することとなったわけである。
「緊張してる?まだドラマは放送されてないしテレビに出るのは初めてだもんね。まぁ私も自分の事務所の子がテレビに出るのは初めてだけどねー!」
上機嫌でこう話しかけてくるのは風間さんだ。ドラマの撮影は普通にドラマを楽しく見たいという理由から同行してこないが、テレビ局には来たいらしく着いてきた。
「遥さん…そろそろ怒っていいですよ。うちの一人しかいない専属タレントかつ大エースなわけですからね。」
優香さんは個人的な好奇心で着いてきた風間さんに思うところがあるらしい。
「いやーでもまぁ心強いんでありがたいですよ。それに撮影に毎回着いて来られてもそれはそれで大変ですしね。」
「そんな風に思ってたの!?改めてそう言われてると悔しい…!昔はもっと慕ってくれてたのにねえ…。」
そう言って下を向いて落ち込んだフリをしている。初見ならともかくこのやりとりは何度かしているので誰も反応しない。
そんな感じのやり取りをしつつ打ち合わせなんかをしながら過ごしているとテレビ局まで着いた。
俺が控え室に入って用意された衣装といった準備を終わらせて待っているとドアがノックされてヒロイン役の野村楓さんが訪ねてきた。
「今日もよろしくねー遥くん!いやーついにキャスト発表されたから堂々と君の話ができるよ。遥くんとご飯行ったの同業の知り合いにバレちゃってさ、いろいろ聞かれたんだけどまだ遥くんがドラマに出るって言えなくて困ってたんだよ。」
あれから何度も撮影で共演しているわけだから当然何度か食事に行っている。もちろんマネージャーの優香さん同行だし、他のスタッフさんも混じっていることが多いけどね。
他のスタッフさんなんかも言っていたが楓さんが共演者と食事に行くことは珍しいらしく多少は話題になっているらしい。
「俺もやっと学校に説明できるんで助かりますよ。今までは仕事ですとしか言えなくて微妙な空気になってたんで。」
別に怪しい仕事をしてるわけじゃないのに何の仕事って聞かれると答えにくくて大変だったからな。
「あーそっか遥くん大人びてるから忘れがちだけど現役高校生だもんねー。お酒飲める年齢になったらお姉さんがご馳走してあげるから楽しみにしててねー!」
「ねえ…優香ちゃん…あれはどういう状況なの?…なんであの二人あんなに仲良いの?ていうか遥のやつめちゃくちゃ気に入られてない?」
「さあ…でも遥さんは初日からご飯に誘われてましたよ…。最近思うんですけどあの人後輩力高いんですかね。」
俺が楓さんと話してる間社長とマネージャー組は向こうで何やら話し合っているようだった。あの二人はなんだかんだで仲がいいらしい。
「遥くんさ、私とご飯行ったとかって話されたりするのって嫌じゃない?もし嫌だったらなるべくあんまり他で話したりしないようにするけど…。」
「いや全然嫌じゃないっすよ。むしろ楓さんが嫌かなって思ってインタビューとかでも言わないようにしようと思ってたくらいなんで。楓さんがいいなら俺もどんどん話していくつもりですもん。」
あんまり食事に行ったりしない人だって聞いてたしむしろ話されるのが嫌なんだと思っていたからこんなことを聞かれるのは正直意外だった。
「全然、全然大丈夫だから!どんどん話していいからね!あれだね、遥くんはさあほんとにいい子だよねー。何か悩みとか困り事があったらなんでもお姉さんに相談するんだよ?」
そう言って楓さんは上機嫌そうに笑っていた。最初の誘いを断ったりとなかなかに失礼なことをしていた気もするけど一切気にしないで面倒を見てくれていることに感謝しかない。
「…監督の坂本ちゃんからも遥のこと気に入ってるって言われたことあるけどさ、まさかこの短期間で野村楓すら虜にするとは…末恐ろしい子だよ…。」
「まぁほんとに性格いいですしね…。現場のスタッフからも大好評ですよ。一番驚いたのはいつの間にか休憩時間に普通に後藤達也とも仲良さげに喋ってましたからね。」
その後もみんなで適当に話しながら本番が始まるのを待っているとスタッフさんがそろそろ集まるようにと呼びにきてくれた。
「今日インタビューを担当させていただく川崎美優です、よろしくお願いします!」
今回のドラマの宣伝を兼ねたインタビューを担当してくれるのは以前俺のトークイベントの司会をやってくれた川崎アナウンサーだった。
「遥さん、今回もよろしくお願いしますね!早速一緒に仕事ができて嬉しいですよ!」
川崎さんは以前と変わらずに笑顔で話しかけてくれる。内心忘れられてるんじゃないかとも思っていたから素直に嬉しかった。
そして挨拶を済ませると俺とヒロイン役の楓さん、主演俳優でもある後藤達也さんの三人と監督の坂本さんが揃って受けるインタビューの撮影が始まった。
最初は坂本さんに作品の魅力や注目してほしいことは何かのような無難な質問が中心だった。作品全体への質問がおおよそ終わると次は俺たちキャスト側に対してのプライベートな質問への時間が始まる。
主演の後藤達也さんへの質問が行われている最中の楓さんの表情はとてもテレビに映っていいようなものではなかった。幸い俺しか見ていなかったもののこんな顔見たことがなかったので少し驚いた。事前に楓さんが苦手に思ってることを聞いとなかったら声が出てたと思う。
「楓さんはこの作品の魅力はなんだと思いますか?」
「私的にはそうですね…隣の遥くんが演じる九条でしょうね!後藤さんが演じる海斗と隼人のどっち派かっていうので皆さんには盛り上がってほしいです。あ、もちろん私の演じるヒロインの結衣のことも応援してくださいねー!」
「だ、そうですけど宮島遥さん、本人としてはどうですか?」
「楓さんが言うように海斗か隼人かどっちが好みかで盛り上がってくれると嬉しいですねー!ただ僕個人としてはヒロインの可愛さにも注目して欲しいですね!やっぱりヒロインの魅力があってこそ僕らの役ですからね。」
作品としては俺は振られる役だから複雑ではあるけどな。とはいえ人気になってくれると嬉しい。
「今のところは隼人くんが優勢って感じがしますねー!実際の設定としてどうなのか、ドラマが楽しみになりますよ。お二人はプライベートでも親交があるみたいな話もありますけど…聞いても大丈夫ですか?」
川崎アナウンサーの質問に答えていいのかどうか楓さんがこっちを横目で見てきたので頷いておく。
「遥くんとはこのドラマで共演したのが初対面だったんですけど、今は結構仲良くさせてもらってますね。撮影初日にご飯に誘ったのがちゃんとした初めての会話だったかもしれないかな。」
「え!初共演でいきなり楓さんから食事に誘ったんですか!?失礼だったら申し訳ないんですけどちょっと意外というか…」
「自分でも珍しいことしたなーって自覚はありますよ。でも坂本さんが自分で選んで連れてきた若手って興味あるじゃないですか?それに初日からスタッフの評判も良かったからどんな子なんだろうって。」
楓さんがそう言うと川崎アナウンサーもなんなら周りのスタッフも頷いている。そしてさらに続けて楓さんが話し出す。
「だから試してやろうって気持ちもちょっとあって、私的にはスタッフさんには愛想がよくても店員さんへの態度とかで本性分かるなって思ってて。だから食事に誘ったんですけど断られちゃいましたね…。私も自信過剰だったんですけどまさか断られると思わなくて!」
「え!断ったんですか!?ほんとに!?」
川崎アナウンサーが信じられないものを見るような目で見てくる。この人はもうすでに自分の仕事を忘れて楽しんでるように見える。
「いや…その日先約があって…。次タイミングがあった時にすぐ行きましたからね!それからも何度か予定が合うタイミングで食事に連れてってもらってますよ。僕なんてほとんど素人みたいなもんなので色々教えてもらってて助かってます。それに結構話とかも合うんで楽しいんですよ。」
「あ、ほんとに仲がいいんですね。遥くんはまだ現役の高校生で日本での芸能活動も最近開始したばかりだと聞いてますけどすごいですね!」
確かに俺が始めてからまだ3ヶ月くらいか?結構すごい気がするな。
「主演の後藤達也さんはどうですか?共演者との交流なんかはあるんでしょうか?」
「いやー僕はここまでないよ。あ、でも最近よく遥くんとは喋るかな。なんか可愛いんだよね、元々男性が少ないこともあって。だからこう、慕ってくれる後輩みたいなのが嬉しいんだよね。でもまだご飯とか行ってないから楓さんが羨ましいよ!」
「僕シンプルに友達少ないし、年上の男の人が周りにいなくて。だから達也さんが話しかけてくれると嬉しくて!」
そんな風に話していると達也さんが強引に俺の頭を撫でてくる。正直髪の毛がぐちゃぐちゃになったことへの不快感もあるが同じくらいの嬉しさもあって複雑だ。
その後はもう一度ドラマの宣伝や魅力についての話に戻った。なんでも思ったよりもずっと内容が濃くなりそうとのことだったのでドラマ放送前は宣伝と作品の魅力についての部分を放送して、ドラマがある程度放送された後にキャスト側の裏話的な部分をまとめて放送することに変更になるかもしれないらしい。
なんにせよ今回の撮影が上手くできたことにほっとしたし、そしてドラマがヒットすることを願うだけだ。
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