★17話 推しと親友
本日ももう一話あげる予定です!
「伊織さん、どう?似合ってないかな?」
サングラス姿の私の推しであるハルカ様が私に尋ねる。
「いや!全然、全然です!めちゃくちゃ素敵です!」
似合ってないわけがないだろと思う。ただ私はサングラスというよりも完全に前髪を下ろしてある髪型の方に惹かれていた。ハルカ様がこの学校に通い始めてから数日が経ったが彼は基本的に前髪が邪魔にならないように分けているだけみたいな髪型の時が多かった。もちろん純粋に顔面が強いので当然似合っているわけだが…正直私は今日の方が好みである。雑誌の中での彼のしっかりとセットされた状態を昨日から何度も見ていたせいか、今日のこのオフ感がたまらなく好きである。
頭の中にある雑誌の写真の彼を思い出しつつ教室にいるオフの彼を見ているとそのギャップだけでやられそうになる。よくこの感じで学校まで平然と登校してきたなという驚きとそんな彼とクラスメイトであるという優越感に浸っていると教室の端の方に私の親友である由希の姿が見える。
彼女は離れたところからハルカ様を見たりスマホを見たりを繰り返している。一緒に登校しておいてなぜそんな離れたところにいるのかが謎である。初日こそハプニングがあったもののそれからは結構教室で普通に二人で話している姿も見かけていた。しかし今日はまるで初日に戻ったかのように距離を取っている。
「ねえ由希、なんでこんな離れて見てるの?話しかけに行けばいいじゃない。」
私がそう言うと由希は一度机に突っ伏したあと勢いよく起き上がった。
「む、無理だよお…。今日の雰囲気が好きすぎる…。」
「でも一緒に登校してきたんだし、それに再開してから結構経ってない?少しは慣れたりしてないの?」
「だって…今日の髪型がストライクすぎて…。髪を上げてるともちろんかっこいいんだけどさ、下ろしてると素って感じがするじゃん。」
こうして話していると幼馴染とかっていうよりほんとにただのファンって感じがしてくる。
「…由希ってさほんとに付き合いとかって思ったりはするの…?ごめん、変なこと聞いてるかも…。」
つい気になって聞いてしまったものの、こういう話題は嫌だったかなとも思う。
「…そりゃあ思うよ。会えば会うほど好きになっていくもん。正直会えてない時期に私も色々あったし、ただハルに憧れてたりしてただけなのかなとも思ってたんだけどね、一緒にいるとやっぱり好きだなって思うんだ。…けどさ、ちょっと人気になりすぎだよ…!」
「まぁたしかに…私も今日先輩からさハルカ様のこと聞かれたよ…彼女とかいるのー?だって。」
「せ、先輩ってもしかして…響先輩…?」
私が頷くと由希はまた机に伏してしまった。
響先輩とは私たちの上の学年でめちゃくちゃモテると噂の先輩だ。男の人と付き合ってるという時点で十分勝ち組なわけだけど、響先輩は複数人と付き合ってるといった類の噂の絶えない人で、さらに芸能活動もしている。それも結構人気があると聞いたことがある。
「むりだあ…勝てない…。でも響先輩っていま彼氏いたよね?ハルまで狙ってんの…?」
「あの人めちゃくちゃ面食いだからね…絶対絡んでくるって。ていうかそもそもの話ハルカ様に彼女がいないってのがすごくない?由希は告白とかしないの?他の人が出てくる前に。」
あの顔面で誰とも付き合わないとなるとそれはむしろ損失な気さえしてくる。私としてはもちろん由希と一緒になってくれると嬉しいんだけど…。
「で、でもいま恋人バレとかしたら邪魔になるだろうしさあ…。それにそもそも振られたら私絶対耐えられないもん…。振られて会えなくなるくらいなら全然今のままでいいし…。」
正直分かる。私たちからすれば宮島遥の幼馴染なんてポジション羨ましくてしょうがないし、恋人最有力候補に思えてしまう。けれど本人からすれば告白はハイリスクすぎて出来なくなるんだろう。そういう意味だと候補としては弱いのではという気さえしてきた。
「ごめんね、変なこと聞いちゃって。でもハルカ様はいまめちゃくちゃ話題になってるからほんとに油断してると危ないかもよって思って。とりあえず目下の敵は響先輩よ、あの人は手強いもの。すごい積極的だって有名だし。」
「うう…ハルに恋人ができたら私ってめちゃくちゃ邪魔な存在だよね…?いっそのこと恋人が男の子とかならいいのかなあ!」
由希はそう言いながら男子だけで固まっているハルカ様たちの方を見る。すごい幸せそうな顔で見つめている由希を見て本当に好きなんだろうなというのが分かる。わかるけどそれでいいのか…?
あーあ…余計なこと言っちゃったかなあ…。変に刺激しないで放っておくのが無難だったかなあ。何で風に後悔もありつつも微笑ましさもある。
そんな風に私が二人のことを微笑ましく思っていると誰かがドアを開いた。
「すいませーん!宮島遥くんっていますかー?」
ああ…噂をすれば響先輩だ…。この先輩は行動力がありすぎるな…。由希の方を見ると慌てたような表情をしている。まさかこんなに早く来るなんて思っていなかったんだろうな。
「あ、はい。僕です、僕が宮島遥ですけど…あれ会ったことありましたっけ?すみません…顔と名前覚えるの苦手で…。」
いや会ったことはないだろうけど…!あんた狙われてんだよ…!
「私は吉田響です、よろしくね!それでちょっと話せない?」
「よろしくお願いします。まぁ少しならいいですけど。」
「私も少しだけモデルとかやっててね、だから遥くんと話してみたくてさ!」
この言葉でハルカ様も興味を持ったのか話に食いついた。由希はもうずっと真顔で話を聞いている、目が怖いよ…。
「ふふ、遥くんって面白いね。そういえば私も雑誌読んだよ、すごいね人気なのも納得だったもん。」
「えーありがとうございます!いやー嬉しいなあ、みんな褒めてくれますよ。」
「ねえ、連絡先聞いてもいい?いろいろと相談とかできたらいいなって!」
強い!私ら一般人にはこの短時間で連絡先聞くのは無理です…!
「えっと…相談って言われても俺全然後輩ですし、大した役に立たないですよ。」
「んーん全然そんなことないよ!男の子から見た話とか聞きたいしね。あ、今度服買いに行くんだけど一緒にどう?どんなのが好みかとか選んで欲しくて。」
由希の顔がどんどん険しくなっていく。結構な付き合いになるがこんな顔は見たことがない。
「あ、俺服のセンスまじでないんでやめた方がいいですよ!最近は衣装買い取るか妹に選んでもらってるんで…恥ずかしい話ですけどね。」
そう言って苦笑いしている姿がとてもかわいい。由希もこれには微笑んでいる。なんなら響先輩もこれは効いたのか照れてるように見える。
「まぁでも連絡先くらいなら別に大丈夫ですけどね。」
おっと!流れが変わったぞ…!由希もこれには流石に動揺している。
その後おそらく連絡先を交換できたのだろう、響先輩は上機嫌で帰っていった。
「遥、珍しいね連絡先交換するの。てっきり普通に断ると思ったけど。」
佐野くんがそう尋ねる。由希も小さくだが激しく頷いている。
「んーいや俺も交換するつもりはなかったんだけど風間さんからも交友関係は広げた方がいいって言われたしなあって。それにあそこで断ったら友達作りにくくなるかなって…」
「あ、なんかごめんね…。」
由希なんかこれには複雑そうな顔をしている。
あれもしかして意外と友達少ないタイプなのかな…?
まぁとにかくこれがきっかけで由希とハルカ様の距離がもっと近くなったりするといいな!
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