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1話 スターのいないこの世界で〜帰国したら何もかもが変わっていた件について

スターとは星のように輝く人物である


こんなことを子どもの頃に何かの本で読んだ。なんでもずっと昔にはそんな風に活躍した人がいたらしい。


それを読んで以来俺の夢はこの本の言うようなスターになること、こうなりたいって思った。




「遥!これから帰国だけどやり残したこととかないよね?」


俺にこう話しかけてきたのは子どもの頃からの親友である佐野大地である。


「んーないかなあ。別にこれで一生来れないわけでもないからね。それにしても帰国するのって何年振りかな、もう長いこと帰ってない気がするよ。」


俺は14歳くらいの頃から家庭の事情で単身海外での生活を行うこととなった。実際は単身といっても親友と母の友人の風間さんがいてくれたわけで生活は順調だったけどね。とはいえ、家族とも年に数回は会っていたが、やはり寂しさはあった。しかしここで俺は芸能活動を始めるきっかけを得られたわけで必要な経験だったとしみじみと感じる。


「3年振りってところじゃないかな。家族とかもこっちに来てくれてたから僕らが帰ることはなかったからね。それにしても大丈夫?向こうの高校に編入するわけじゃない、ちょっと不安とかはある?」


この世界は昔に起こった男性人口の減少に伴って女性が社会の中心となったらしい。とはいえ男性が中心だった時代なんてこっちからしたら遥か昔だから関係ないけどね。


男性が少数であるため相対的に芸能活動をしている男性も少ない。そんな中で俺は芸能活動をしているわけで、なかなかのレア人物であるわけだ。だからまあ帰国してなじめるかの不安はある。


「少しだけね、クラスになじめるかも心配だよ。でも大地も同じとこ通うんでしょ?なら安心だよ。」


「いやね…僕は君の人気とかも心配なんだよ…。」


現代はAIの進化や男性がいなくても子どもが作れるようになったことで数も少ない生身の男性への関心が低下しているって聞いたことがある。

それに数が少ない男性はその保護のため一部特権を認められている。そのせいで一部の男性の特権意識を持ちそれが異性間での溝を生んでいるんだとか…


「まあこっちじゃ少しは人気あったんだ、大丈夫だって思いたいよ。スターへの道はまだまだだけどな!」


俺はこっちでの活動を通してなかなかの人気があるってことは自分でも感じている。ここ一年は街に出れば気づかれることも増えたし、ファンだって言ってくれる人もいる。とはいえそれはあくまでもこっちでの話で…。日本では特に男性の芸能活動への関心は薄いらしい。なんでも歴史的背景がどうとかで。


「い、いやそうじゃないんだけどさ…君ネットとか見ないもんね…。まあいいや、僕はそのスターっていう存在を知らないからなんとも言えないけど君が目指すことは応援してるよ。」


大地…。こいつの存在がなかったら絶対に心が折れてたな…。幼馴染の由希と大地の二人だけが応援してくれていた。そういえば由希にも1年近く会ってないからな、楽しみだよ。


「ねえ、二人とも準備はできてる?もうそろそろ出発よ。遥くんの帰国は一応家族や友人にしか伝えてないけど、どうなるかはわからないわ。心の準備はしておいてね。」


え…もしかして誰もいないみたいなパターンある?せめて家族くらい来てほしいなあ…。


「多分遥が思ってるようなことにはならないと思うよ…。」




ーー


「んー!着いたあ!いやーこんなに長い時間乗ったのなんて久しぶりだったからね、疲れたあ。」


無事帰国できたわけですがやっぱり長時間は疲れる。風間さんが帰りの飛行機を貸し切ってくれたみたいだから初めて乗ったときより全然マシだったけどね。


「じゃあここから空港のエントランスまで行くわけだけど準備はいいよね?出迎えなんだけどね…どっかから情報が漏れて来られる状況じゃなくなったから一回遥の実家まで行くことになったの。とにかくエントランスを出たら車まで向かうからついてきて。」


「わかりました。遥も絶対はぐれないでね?」


え、うん…。出迎えなしかあ、それはちょっと寂しいかな。それに俺もそこまで子どもじゃないからね!?

流石にはぐれませんよ!

 

そんなことを思いながらエントランスへ向かうと


「なんかざわついてる?てか人多いね。今日って休日だったっけ?祝日とか時差とかもちゃんと考えてたんだけどなあ。」


正直ぱっと見でわかるほど人が多い。それになんだかカメラを持ってるひとやマスコミ?っぽい集団ちらほらと見える。


「ねー今日って何かイベントあるの?大地知ってる?」


「…遥さ、ここからは誰に話しかけられても黙ってついてきてね。」


なんだか子ども扱いされている気がする…。とはいえ確かにこれだけいたらはぐれるのも心配だ。


そんなことを思っていると風間さんが何人か初めて見る人を連れてきた。


「これはうちのスタッフよ。遥くん、これから知らない誰かに話しかけられても反応しないでね、相手は彼女たちがするから。」


要は今日お世話になる人たちってことだと思う。風間さんのとこの社員さんかな?


「今日はお世話なります。これだけ人がいると正直不安だったので助かります!」


俺が挨拶をすると少しざわついたのがわかる。


「社長!ほんとに遥くんって実在してたんですね!絶対社長の妄想を元にしたAIだと思ってましたよ!」


「馬鹿ね、雑誌も出したしちゃんとモデル活動させてるじゃない。」


「そうですけど海外のことですし、向こうでもあんまり目撃情報がなかったですもん!」


「こんなの野放しにしてたら危ないでしょ。この子なんでか知らないけど無防備だし、基本は誰かと一緒じゃないと外にも出せないわ。それにそんなにAI説が有力ならなんでこんなに出迎えが来るものなの?」


今こんなのって言った?言ったよね?流石に僕もショックですよ。


「社長、みんな夢を見たいですから!こんなにかっこいい男の子が、しかも性格もよさそうときたらね、もし存在するなら一目見たい!って思うのは自然なことですよ!」


スタッフさんが何やら風間さんにめちゃくちゃ詰め寄ってる。


「分かったから!とにかく行くしかないわ、時間が経つとなおさら面倒だもの。」


風間さんの一声で俺たちはエントランスへ向かうことになった。ここまで言われると少し緊張しているのが自分でもわかる。


そしてエントランスへ出ると


「宮島遥さんですか!?取材をお願いします!写真だけでも、こっちに目線だけでもください!」


この一言がきっかけとなってあっという間に人が集まってきた。俺自身人混みに慣れていないからか、このまま圧死するんじゃないかと思うほどの人だかりと悲鳴に近い声が聞こえてくる状況に少し緊張する。


わーこんなに注目されるの初めてかも…。


「こっちに目線お願いします!」

「帰国を決めた理由は何でしょうか!」

「こちらでも芸能活動を続けるおつもりはありますか!?」

「好きな女性のタイプは!」

「ファンです!こっちに目線だけください!」


とにかくいろんな声が聞こえて何に答えていいかがわからない。そこで俺は目が合ったファンだという子のカメラに向けてピースだけする。


「え、嘘…。まじ?ファンサくれたんだけど…!もう死んでもいいかも…。遥くん神すぎる…!」


ファンの子が涙を流しているのが見える。


とりあえず喜んでくれたみたいでよかった。なんて思っていると


「遥!だから反応したらダメなんだって!あーあファンサなんてしちゃってさ…。どうなっても知らないからね。さ、早く行くよ。」


大地が呆れた目でこっちを見てくる。とはいえここでこいつに置いていかれたら終わりなので必死についていく。


その後も四方八方から取材やらなんやらの声が聞こえてくるがいちいち反応したら次は本気で怒られそうなのでとにかくみんなについていくことに必死だった。


そしてなんとか車に乗り込むことができた。


「はー全くここまでマスコミやらファンがいるとは思ってなかったよ…。遥、大丈夫だった?」


車内まで来れたからか安心したように風間さんが尋ねる。


「はい、俺は大丈夫でしたけどあれ俺のファンなんですか?俺こっちにいたときなんて特に何もしてないですけど…。」


なんなら軽くいじめられた記憶しかないよ…?あれももしかして俺のファンだったのか…?いや流石にそれはないな。


「向こうでモデルの仕事をしたろ?あれがめちゃくちゃ好評でね、私の会社でも日本向けにも出してね。せめて赤字にならなきゃいいななんて思ってたらこれまためちゃくちゃ人気でさ。なんなら向こうより人気あるかもね。」


えーっと向こうでもそもそもここまで人気だった記憶ないんですが…。


「それは外出るときはマスクもさせてたし、ここ一年は一人で外出させてないもの。あなたが自分の人気に気づかないのもしょうがないわ、ネットもろくに見てないし。そもそもなんか無頓着なとこあるしさ。」


うーんそんなことになっていたとはな…。嬉しいような知らなかったことが悲しいような…。


「とにかくあなたを家まで送るわ。そこで今後のことを話しましょ。」




この時俺はファンの子のカメラにリアクションしたことを忘れていたわけだが、この時の一枚の写真がネットを中心に話題になっていたことをまだ知らない。






読んでいただきありがとうございます!

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