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Ch3.07 ワンダーなイベント(5)

前話を修正、追加しました。

 ギャンブルギャングエリアに着くころには、もう夕暮れ時に差し掛かっていた。


 正直、僕の今日のプランはこのチャレンジイベントのせいで狂いに狂いまくっている。


 本来なら途中から2人でしか参加できないアクティビティやアトラクションに乗って、4人の集団行動ではなく一対一の交流をはかろうと企んでいたのだが……。


 時間的に景品獲得を目指せる最後のチャレンジなので、もうこのエリアに来てからは皆別れて思い思いに遊んでいる。


 人生機運が熟す時と、そうでなく振り回される場合もある。後者のほうが圧倒的に多い気もするので、やってられないなあとは思う。


 まあ気を取り直して、僕もなにかゲームに興じようか。ブラックジャックとかが一番勝率がいいんだっけ?


 ポーカーは自信ないし、そうだなあ。うーん。スロットとかは一番頭からっぽしてできると思うけど、勝率が確か一番悪いしなあ。


 このエリアではデバイスに届いた100コインの電子データを元手に1000コイン集められたら景品獲得できるというとてもシンプルな内容のチャレンジだ。

 しかし1を10に増やすのは、現実では意外に難しい。

 周りを少し見るだけでも、燃え尽きたぜ……真っ白にな……という輩がすでに何人もいる。

 ちなみに他に景品は無いため、厳密にはギャンブルではなく遊び(ゲーム)、という風に謳っているのであしからず。


 さてさて、どうするか。



『――セラ選手がついに4thステージまで到達しました! さあ、ついにこの難攻不落のZASUKEエリアが踏破されるときは来たのでしょうか!?』



 うおっと。そんなことを考えていたら、バカでかい歓声が大きいスクリーンの前であがった。


 ここからでも他のチャレンジに挑戦している人たちのライブ映像が見られるらしい。


 というか、あれ誰が達成できるかにコインをかけられると画面に表示されている。

 しかも的中したらコイン4倍とは太っ腹だ。

 

 じゃあ今からでもコインをかけようか、と思いデバイスを操作するも、1stステージクリア前の選手にしかベットできない仕組みであった。残念。まあそりゃそうだ。


「……うお。すごいな。同じ人間の動きなのかコレ」


 前から迫りくる大岩 (多分プラスチック)を華麗に前回転しながら、ヒゲの配管工に負けないようなジャンプで飛び越えていく選手の様子が映像に映し出されている。


 ……すげえ。うおお。あんなにすいすいと壁をよじ登ったり、ターザンしたり、障害物を避けたり、パルクールできるもんなのなのか。


 まるで猿、もしくは忍者のように流動的な動きでステージがどんどん踏破されていく。彼はさながら某暗殺者ゲームの主人公のようではないか。


 あれまぁ。なんとも、あっと言う間に――。


『――おおおおお! ゴール! ゴールしました! ついに、ついにこのZASUKEエリアの達成者第一号が誕生しました! 私たちも感無量です! ……悪ノリで難しくしすぎたなーと反省していたのですが、良かった! 良かった……これでスポンサーにも怒られません! ありがとうありがとう!! あ! ちなみに本日のスポンサーは大型ステージ作成用3Dプリンター開発局の――』


 ……おいおい。実況に熱中していたからって、忘れていたかのように今からスポンサーの紹介を始める奴があるかい。

 

 そんな中、一人の長身の女性が銀髪を翻しながら、スクリーンの前の観客たちとは相反した無表情でその場を離れていった。

 そのまま自分のデバイスをスタッフに見せ、そのスタッフの表情を驚きに染めているのが見える。

 いそいそとスタッフも専用のデバイスを取り出して、何かを彼女のデバイスに送信したようだ。


 ……もしかしてあの人、チャレンジ達成者を当てたのか? それもすごいな。一気に400コイン獲得だよ。


 そして彼女はおもむろに僕の近くのブラックジャックのマシンまで足を運んできた。


「……まずは100ドル」

 

 デバイスをマシンにかざして、100コインをベットする。


 おいおいお客さん、困りますよ。ここはあくまで遊びなんでね。ドルとか円とかいっちゃあダメだねえ。


 なんて心の中であやしい施設の運営者のマネをしていたら……。あ。勝ってる。100コインから200コインまで増やした。


 おお。そのまま恐れずその200コインをベット。

 男気あふれとるなあ。


 そして――。

 

 ――ああ。負けてしまった。残ー念。

 まあ人生そういう時もあるよ! しゃあないしゃあない。

 

「……」


 ……ううん? マジか。


 なんと彼女は負けた分の200をベットし直している。

 最大200コインまでは最初からベットできる。しかし負けた分のコイン、それも現時点で持ちコインの全てを間髪をいれずにリベットするのは勇気がいる。

 負けたら全てを失うのだぞ?


「……」


 おお! 勝った。 これで負けの分を取り返して400コインだ!


「……追加の100ドル」


 ……! そのままその400に100コイン追加して現時点でマックスベットの500コインで勝負を開始している!?


 そして――!


「……ブラック、ジャック」


 腕を上げ、勝ち誇っている銀髪の女性。

 無表情だが、よく見ると口角が上がっている。クールなのにシュールで面白いなこの人。


 というか、すごいな。持てるコインすべてを使って、失敗してもめげずに、そして勝つためのリスクを飲み込んで、わずかな労力と時間で1000コイン獲得を達成してしまった。


 単純(シンプル)だが勝てる画(戦略)をコインをベットする前から描いていたのだろうか。


 ――あ。ということはこれで……。


『ピンポンパンポーン! 無事チャレンジは全て達成され、すべてのコードが出そろいました! 挑戦者の方々、お疲れ様でした! そして達成者の皆さま、おめでとうございます! 景品に関しては追ってデバイスのほうでご連絡させていただきます。 ……それではみなさま引き続き、ワンダーに満ちた一日をお楽しみください!』

 

 終わった、ようだ。なんかずーっとこのイベントに振り回されてしまった気がする。

 

 今思えば、僕は優先順位をもっとはっきりとしておくべきだったかもしれない。

 どれに挑戦するのかを早めに決めるべきであったし、む(・)し(・)ろ(・)挑戦せずに本来の目的である親睦を深めることに集中するべきであったかもしれない。


 ……まあ、いいや。なるようになればいい。


 日は暮れてきたが、まだ時間はある。まだ交流を深めるチャンスだってきっと来るだろう。


「あちゃ〜。500まで増やせたけど、間に合わなかったか〜」


 遠くからタハハと素敵に笑いながら、彼女とみんながこちらまで戻ってくる。


 そう。まだまだ時間(チャンス)はあるのだ。僕のたたかいはまだこれからだ!

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