Ch3.06 デイリーなライフ
「……カワイイかつカッコイイなんて、やっぱミャミャネコは最高だなあ」
これがギャップ萌えというやつか。普段は寝ぼけた眼でかわいらしくしてるのに、いざ戦闘になると性格が変わったかのようにクールで冷徹な表情を見せてくれる所が最高だ。
反面パートナーのじいやさんは普段こそしっかりしてるのに、大事なところでポカをやらかす印象だ。……やはりじいやも至高にかわいい。
もう二人とも推し中の推しです。今回の動画もドラマチックな展開で目白押しであった。
じいやが泣くまで、殴るのを止めないッ!のシーンは今でも思い出せば泣けてくる。
今度オフ会をするらしいが、一人では恥ずかしくて行けない。だれか誘ったら来てくれないかな。
……おっと。そんなことを動画を見ながら考えていたら、そろそろ目的地に着きそうではないか。
今日もまた4人で遊びに来た。
車窓から見えてきたは壮大な夢の王国のような景色。ジェットコースターやらお城やら、楽し気なアトラクションが遠くに見える。
そう、夢の国、スリーピィワンダーワールドに来たのだ。
昔の某米国歌手の名前に聞こえるが全く関係ない。スティービーでワンダーなワールドではなく、眠った時に見る幸せな夢のような世界、がコンセプトの遊園地だ。
「よぉーっすおひさぁ」 「おうアキ」 「あれあとの二人は?」 「しらね」 「ふーん。そうだやっぱミヤキャットはガチでオススメ」 「……オレの趣味じゃないんだよな。ヤバイやつじゃんアイツ」 「騙されたと思ってもっかい見てみてって」 「まあ気が向いたらな」 「……絶対見ないじゃんか」 「……あー。あ。そういえばこれ知ってる? 新しい対戦ゲーム。多分これから流行るぞ。オレのオカンがそう告げている」 「……勘じゃなくてオカンかよ。仲良し親子か」
「――お、きたきた」
長身の女子と、少し平均より低めの女子のシルエットが見えてくる。
「じゃ、出発しますか」
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アトラクションの待ち時間に、4人で先ほど紹介された新作ゲームをやってみる。
妖精解戦と呼ばれる、人狼要素と特殊能力対戦要素が混ざった新感覚なゲームだ。
プレイヤーはシルフ、サラマンダー、ウンディーネ、そしてノームの4つのランダムなロールがもらえ、5つの駒と共に、ボードの上にある互いの駒を倒していくゲームとなっている。
面白いのは、隣り合った相手の駒を倒せる駒が1つしかないこと。そしてもしその唯一敵を倒せる駒とロールをゲームの途中で当てられてしまったら、強制的に脱落してしまうところだ。
「ふーん。……おもしろいねこのゲーム。シルフの存在がちらついて、意外とどの駒が攻撃してるのかわからなくなる」
シルフに加えて、サラマンダーにウンディーネ、そしてノーム。意外と大胆に攻撃してもバレない。シンプルなようで意外と奥深い印象だ。
えーっと、作成者の名前をチェックしておこうかな。なになに、イマイ――。
「――私は、こういうの苦手だなあ」
「ワタシも」
「え。ウソぉ?」 「そうよ。前も言ったじゃない」 「忘れるなんてひどい、ね」
……冗談交じりに非難されてしまった。
隣の男もヘラヘラと笑って止めやしない。……野郎。キサマがやろうと言い出したんだぞ?
……こういう時は話を変えるに限る。なにか新しい話題は、と。
「じゃあ、この後はどのエリアを攻めよ――」
「――ちょっと。何よこの格好!! バカ丸出しじゃない!」 「すいません、すいません!」
今並んでいる列の少し奥から、大きめのボリュームの男女の会話が聞こえてきた。