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Ch2.9 それぞれの願い事(3)

 マロン△。あいかわらず気が利くぜ。


 一足早く炎に包まれた槍を見たマロンが危機を察知し、水の障壁を張ってくれた。


 それにひきかえ、姉のコロンの恐ろしさよ。味方の被害も構わず先ほどの魔法を撃ってきたのか。


 もうその発想と決断の早さが怖い。

 なりふり構わずとはこのことか。



「――勇者、サマ。我と一対一で決着をつけさせませんか? もし我が負ければ、全面降伏させましょう。……そちらもあまり血を流すのは好まないのでは?」

 

 そのコロン暴虐姫に戦々恐々としていたら、その当人から突飛な提案がきた。


 提案の真意が読めない。劣勢になったからそう提案してきたのだろうか。

 この場にいる相手の人数の半分程度は制圧できてはいるが、まだ伏兵がいる可能性は大いにある。あんな風に味方を扱ったのだ。

 ……時間稼ぎの可能性もある。


 真意を知ろうにも、僕のテレパシーはあのバリアに弾かれる。先ほどから何度か試してみたが、やはり読み取れない。


 あのバリアからは他のすべてを寄せ付けぬような、拒絶の意思がありありと感じられる。



「その提案、乗ろう。 ……なあに大丈夫。なんたって兄弟はあの女神ちゃんを殴り飛ばしたんだからな!」



 ――え? おいおいブゥさん!

 大声で、全員に聞こえるように言葉を放った後、ブゥさんが小声で僕に意見を伝えてくる。



「……正直に言うとな、あの障壁は俺の最大火力を使っても突破するのは難しい。閃光弾も、もう効かないだろうしな」


 ……マジか。このブゥさんにこんなことを言わせるとは。あの障壁、そんなに固いのか。


 「……でもな兄弟、お前にはその槍と、女神ちゃんをぶっ飛ばした拳がある。お前ならできると俺は信じてる。むしろこれはこの戦闘を速攻で終わらせることができるチャンスだ」


 血が必要以上に流れないのも悪くない、と続けるブゥさん。


 そのセリフから、ブゥさんが僕に信頼を預けてくれていることがわかった。



 それは悪い気分ではない。ならば――。



「――その提案、お受けします」 改めて、僕の口からコロンへと返答する。


 ……フフン、じゃあ僕にこの場を預けてもらおうかな!



 足を前に進めて、仲間たちから離れる。



 コロンがその返答を受けて、ゆっくりと手を前に差し出す。表情はどことなく穏やかで、微笑をたたえている。



「そうですか、そうですか。――()()()()()()()



 ――目の前から荒波のような灼熱が、周りすべてを覆いつくすかのように迫ってくる。



 ――ッ! 一対一だと意識させて、僕たちを油断させたのか!?



 その緩急をつけた攻撃にたたらを踏んでしまう。


 体の反応が追い付かない、視界が、身体が、目の前の炎に包み込まれていく!



 そうして、僕の視界は()()()、暗転した。

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