Ch2.9 それぞれの願い事(1)
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「――どうしていまだに成功しない! 初めは一発で2人も出てきたじゃないか!」
「……コロンさま、恐れながら、あの時こそ例外だったのではないかと――」
「――言い訳か? ほら……もっと言ってみろ」 「……っ」
「あなたの代わりなんて、ほら……まだ何人もいるのよ? ……前任者と同じようになりたくなければ、数日で結果を出しなさい」
「……承知、いたしました……っ」
腹いせに、ムチをもう一打ち。無知で愚昧で蒙昧な連中の目を覚ます、特効薬だ。
全く……醜く、使えない連中の多い事。そう、元はと言えば――。
「……あの勇者どもめ。異世界召喚術に関するヒントは何も残さずに旅立ちやがって。……少しはクソの役に立ってるのでしょうね」
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「――勇者様。まさか本当に女神さまを殴り飛ばすとは……。このマロン、大きい声で言えませんが、……とても感動しています……ぐすん」
人一人の力で大きなことを成し遂げるのは可能なのだと、教えられました。
なんて、僕を神格化するかのように、目も赤いまま赤裸々に言葉をまくしたててくれるマロン。
はは、女神を殴って神格化されるとは皮肉なもんだ。
「おう、過程はどうあれ、今回の緊急クエストは解決した。……よくやったものだ。あとはおおもとを叩くだけだな。頼りにしてるぜ、兄弟」
「――うぇえ? 兄弟って……」 なんかいきなり熱いセリフを言ってくれるブゥさん。
「おうよ。痺れたぜ。よく思いとどまったな。俺には分かる、難しいモンだったろ。……結果的に女神ちゃんも健康的になりそうだし、これでその盗賊たちも捕まえたら、もう万事解決だな!」
ぐわっはっは! と気持ちよく笑うブゥさん。
それを見ていると……、僕もつられて笑ってしまう。
「うぇっへっへ! ――いやいや兄貴の、あの魔法にはしびれやしたぜ。いやあかっこよかった」
「そうか? 今度中身も見せてやろう。おまえさん、魔法の素養も高そうだしな。それに俺の魔法が一代で失われるのも悔しいしなあ」
「え、いいんですか! じゃあお願いしま――」 「おい! はよこい! コイツの維持も大変なんじゃぞ」 「「ういーす」」
なんだろう。いつからか、どこか久しく蓋をしていたモノが取れかけてきている気がする。
倦んでいたモノが、この数日間でブゥさんやスゥさんたちをはじめとした優しい人たちに触れ合うたび、じょじょにかさぶたへと変化し、もうすっかりかゆくなってきた。
ああなんだか、いますぐかきむしりたい。おもいっきり感情を解放したい。
……ああそうだった。思い出した。僕のねがいごとは――。
こんなにもシンプルなことだったんだなあ。
アッハッハ。
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「――これは、パターン黒!
――次元魔法の反応です! 前回とは違う反応ですが、成功したのやもしれません、コロン様!」
突如としてエルフの集落に現れたのは、前回とは似ても似つかない黒い次元の隙間。
だがそれがどうした。色々なパターンがあるのかもしれない。
嬉々として集落中のエルフたちが集まってくる。やることもないので、こういう騒ぎが起きれば全員続々とやってくるのだ。それもほとんどが畑仕事も適当に行っているので足早にきたではないか。全員後でむち打ちだな。
この10日間、召喚術の成果は何1つあがらなかったのを彼女たちは知っている。そして根性のない彼女たちにとってそれはとてもこたえたのだろう。
娯楽もない離れたこの土地で、生み育てる喜びを知らない盗賊たちは、昔のように人から高価な品をかすめ取るような、一瞬で手に入るような変化や喜びに飢えている。
そこで手を出したのは、代々伝わりながら禁忌とされてきた異世界召喚術。
曰く、普通の召喚術と違い、異世界から人を呼び出すため、魔物のように手なずけたりする手間が必要ないとのこと。
眉唾物だったが、もしそれがうまくいけば、無限の兵力が片手間で手に入ることを意味する。ピグモン族たちへも、また本土のエルフたちに対しても、この試みが成功すれば、一気に形成を逆転できるのだ。やらない理由がない。
もし召喚された者たちが歯向かったなら、もしくは使えなさそうな場合、すぐに殺して食料か畑の肥やしにしてやればいい。
そんな色々な意味で軽い考えは即日試され、白い光の粒子がその場に集まり、それらが再構成されて勇者としての形を成した。その時は、まさか本当に成功するなんて思ってもなく、そして存外その勇者たちが強そうだったので、一旦盗賊らしく嘘八百でその場を濁した。
もし彼らが本当に女神を討伐出来るなら、別に願ったりかなったりだと、特にその1回目の召喚の際のやりとりには後悔はしていなかった。なぜなら2回目も同じく簡単にできるものだと高をくくっていたからだ。
しかしその2回目は何日たっても成功せず、日に日にフラストレーションを溜めていく日々が待っていた。それによりふいに犠牲者も出してしまったが、それはご愛敬だろう。
――だからこそ、ついに念願の2回目の成功を見られるのだと、コロンとその盗賊仲間たちは狂ったようにその黒い闇を見つめるのであった。




