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Ch2.6 緊急クエストに現るは(3)

 一旦チャプター2の最終目標を思い出してみよう。

 

「今回の達成目標は――()()()()()()()()()()()()!」


 アデルバード所長がそのようなことを言っていたはずだ。

 そしてそのエルフたちの願いは――。


「あの邪悪な女神に仕える悪しき醜い魔族の手から、我らをお助けください!」


 という内容である。


 それがこの街に来てから終始引っかかっている。悪しき醜き魔族には、この街の住民は全く見えないし、()()()()からだ。


 もし仮に、エルフの伝えた内容が彼女らの思い違い、はては虚偽の場合、一体プレイヤーたちはどう目標を達成すればよいのか。

 流石にモラルに反することを行うのがクリア目標だとは思えない。ゲームとして怪物(モンスター)を討伐するのは分かるが、ピグモン族は決してそのような存在ではない。


 うーむ。


 なにが正しくてなにが間違っているのか。物事の判断が難しい。


 そんなことを、アンパンに似た何かをほおばりながら考えていた。……これ美味しいな。


 今僕らは絶賛張り込み中である。ここ二日間ほど街を見てまわっていろんな住民に話を聞いたが、基本的にのどかな会話しかしていない。アリの煮つけの味はどうとか、今度食べにいらっしゃいだとか、温かさしか感じていない。


 例えるなら、ここはあれだ。あつもり、またはぶつもりの街なのだ。あつまれ!物議をかもす森へ! という変なタイトルにも関わらず国民的人気ゲームとなったあのゲームである。

 住民たちは終始ニコニコしていて、プレイヤーとの会話をいつでも楽しんでくれる。森を開拓していく中でいろいろと住民と力を合わせて町を切り開いていく様子は、思い出すだけで感動を禁じ得ない。


 そんな感動的なゲームの住民たちと、彼らピグモン族はまるっきり重なるのだ。この二日間で彼らが悪だとは完全に思えなくなってきた。

 

 ではエルフたちが間違っているのか? うーんでも、クリア目標が彼女たちの願い事だからなあ。

 

「――よお。どうした。そんなにうなって」


「あ、ブゥの兄貴。お疲れ様っす。いやちょいと考え事を」


「……その呼び方は勘弁してくれ。まったく、俺が一体なにしたっていうんだ」


「なにしたって……。兄貴には良くしてもらっているますから、尊敬の念をこめてそう呼ばせていただいてやす」


 そう、僕が尊敬するこのブゥ兄貴こそ、この街の代表格の一人で、そして男気の塊のような人だ。警備長と皆から呼ばれ親しまれている彼は、会話の聞き込みついでにいつもなにか住民たちの必要や助けを率先して見つけ、そつなく仕事と両立しながらこなしていく。僕らも初日から含めこの2日間通して色々と気を遣ってもらっている。


 僕も含めて皆から愛と尊敬の念を彼へと感じるし、彼からももちろんその同じ想いが周りへと伝播していく。ポジティブの連鎖が彼を中心に巻き起こっている。こんなに優しく、善性に満ちた人物は僕にとってもこの街にとってもほかに類を見ないような存在だ。

 

 まとめると彼は嫌味の無いみんなのハードボイルド兄貴なのだ。……最初は見たら分かる、悪いやつやん、なんて思ってすみません!

 

 ……そういえば悪いやつといえば――。


「……時に兄貴、女神ってご存知で?」


「……。そりゃあ知ってるぞ。()()()()()()()。むしろ坊主こそこの街の成り立ちを知っているのか?」


「……いえ全く」


「まあ旅人だしそうだわな。いい機会だし教えようか。……さてなにから説明するか」


 唯一と言っていいこの街への疑念は、女神がここにいるという情報。しかしこの街に来てから、女神の痕跡は何1つ見つかっていない。

 普通に考えるとこんな善良な住民たちと残虐な彼女とでは性質上全く相容れないはず。もう今では実際は存在しないんじゃないかと、言い換えるとエルフや親父の戯言なんではないかと疑ってさえもいる――。

 

「――そこら中に光ってる光源があるだろう? あれ全部女神ちゃんの髪の毛だ」


 ………………へアァ⁇!

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