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Ch0.4 親父とスキル談義(2)

 白い。真っ白な部屋だ。

 

 奥を見るとどこまでも続いていくかような白い平面が続いている。


 僕たちは今V()R()()()()()()()()()。正確には、VRテストルームというらしい。ここに入ってきたときに、『VRテストルームに到着しました』と短くアナウンスが入ったのを聞いた。


 先ほど親父の研究室に3人で入ると、「じゃあそこに座ってこれを被ってくれ。」と白いヘルメットを渡され、素直に3人とも被ったらすぐにこの空間に飛ばされた。ええ?展開早くない?


 「ほんとは1、2回全身を精密検査してからここに飛ばすんだが、まあ俺の息子とその友達だし、特別にオーケーだ!」


 シュン、と効果音がして、親父も粒子が集まるかのようにこの空間に現れて、そう言い放った。一体なにをぬかしてやがる。


 他の二人を見やると、口をポカーンと開けて微動だにしない。僕もあんな顔をしていたと思うといやになるな……。


「ここがVR空間……」


 正直、感動もなにもありゃしない。理解がおいついていない。


 ハッ、とカケルが再起動した。動きを確かめたいのか、軽くジャンプしたり腕を伸ばしたりしている。


 僕も、同じように体を動かしてみる。全く違和感がない。見るもの感じるものすべてが()()()()()()()()()()()()


「違和感、まるでないだろ?君たちの脳は君たちが今この空間にいるって勘違いしているからな」


 正確には違うのかもしれないが、と親父は続けた。え、原理分かっていないの?


「ああ。正確には5%くらいしかわからん。真にこれはオーバーテクノロジーだ」


 いやそんなけったいなものに息子と一般人を参加させんなよ……。なにそれ。信じられない!勘弁してよもう!


「いいじゃないか!面白いから!いい経験になるだろ!」


 ガハハと豪快に笑ってやがる。おいおい。


「ち、ちゃんと帰れますか?」


 エミリもようやく再起動した。目が潤んでいる。足も震えだした。こんなエミリは初めて見る。


「帰れる。ここへの行き来の原理は比較的簡単なんだ。100%保証する」


 親父はしっかりと言い切った。エミリもそれを聞いて、少しはほっとしたようだ。カケルは聞いてるのか聞いていないのか、バク宙したり側転したりしている。元気だなあアイツ。


「さて、面白いものを見せるって言ったよな」


 もうおなかいっぱいなんですが……。面白いものぉ?


「あー、でもすべてを見せるわけにもいかないよなあ」


 どうしよっかな、とブツブツつぶやいている親父。計画性なしか。


 横の友達が心配だ。


「エっちゃん、大丈夫?」


「だ、大丈夫。多分。いきなりだったから」 目は赤いが、震えは止まっている。大丈夫そうかな。


 カケルも戻ってきた。


「二人とも、調子はー?」


 カケルは明るく、しかし心配げに声をかけてきた。


「大丈夫」「多分大丈夫」


「そうか。良かった。すげえぞ、この空間。思った通りの動きができる」


 そういうと、カケルはシャドーボクシングを始めた。シュッシュッと、こぶしの空を切る音が聞こえる。いやリアリティーがすごい。


 この真っ白い空間にいるから、ここがVR空間なのだと認識できるが、なんというか、現実味がありすぎる。体に違和感がなさすぎる。


「これがオーバーテクノロジーVRゲーム……」


 正直、興奮よりも驚きと恐怖がまさる。まるで初めて一人で渡米したときみたいな感覚だ。


「よし! こうしよう。おーい!」


 パンっと手を叩き、親父が僕らを呼ぶ。


「今から1つだけ、このゲームにユニークスキルを好きに使ってもいいぞ! どれにする?」


 え? マジ? やったー!


 恐怖が一瞬で吹き飛んだ。興奮してきたな!

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