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Ch2.4 魔都アンダイン(2)

 ――魔物が跋扈する狂気の魔都、とは思い違いなのかもしれない。


 ピグモン族の色んな住民に紹介されるたび、何人かは僕らを驚きの目でこちらを見つめるが、それもすぐに優しい笑顔に変わる。どこからきたんだい、だとか、このご飯がおすすめだよ、だとか。ポジティブな言葉とイメージしかテレパシーからは伝わってこない。


 本当に、ここはあの女神に統治されているのか? 自由に、気ままに、それでいてのびやかに彼らは生活している。


 なんというか、やさしさにあふれている空間だ。夜も暗いのに、人々は笑いあい、だれもがなにも恐れていない。

 平和だ。


「……いつもこんな感じなの?」


「ん? ここに住む住人のことか? ……()()()はそうだな。お、見えてきたぞ。あれが冒険者の宿だ」


 石畳の通路をぐるっと小一時間ほど歩いただろうか。建物の量と幅は大きいためか、遠くからは大きく見えていたこの都市もそこまで生活圏は広くないらしい。


「俺たちは()()()だからな。この時間には寝ないんだ。おまえらは旅をしてきたからか、疲れてるんだろう? 悪いこと言わねえ。今夜は奢ってやるからそこで寝とけ寝とけ」


 なんと、まあ。 「アキヒト。早くねよう」  急かすようにこちらを見つめてくるケイ。ケイさんアンタ警戒心というものはないのかい?

 ――まあ長旅で疲れてるしなあ。


「……いいの?」 「おう」 鷹揚にうなずくピグモン族の男性。


 聞いていた情報と違う。魔族、とエルフたちは言っていた。悪しき醜き魔族だと。


 ……そうだ。僕が起きてればいいのか。一旦ケイは寝させて、僕だけ襲撃を警戒しておこう。


 そう決心して、部屋に上がらせてもらう僕ら。


 まだだ、まだ警戒心を捨てるんじゃない。宿の女将さんがこの都市の中でもひと際優しく接してくれたとか、別れ際のピグモン族の男性がやけに澄んだやさしい瞳をしていたとか、今は忘れるんだ。


 そうして、部屋に入り、ベットに座って、一息つこうとため息を吐く。


 ――そこからの記憶がない。



「……」 


 チュンチュンと小鳥が鳴いている。朝だ。隣のベッドでケイがまだ、ぐーっ、と可愛い顔で寝入っている。


「……二人とも寝ちゃったじゃん」


 襲撃のしの字もなく、平和な朝を、いやもう昼過ぎてんなこれ。太陽が真上だもん。――平和な昼を迎えたのだった。

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