表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/136

Ch2.2 伝説の槍

「もちろん、討伐のあかつきには報酬をお渡しします。1つは前払いという形で、我らの悲願達成のためにどうかお使いください」


 コロン姫がマロンに指示を送る。慌てて立ち上がり、部屋を出ていくマロンさん。

 

 少し経つと駆け足でなにやら布に覆われた長物を持って帰ってきた。


「無論、女神は強大な存在。しかしそれに対抗するため、エルフ族に伝わる伝説の武器をお渡しします。


 先ほどお見せいただいた力と合わせれば、まさに女神殺しの武器となりましょう」


 そうして、マロンが僕たちの目の前で布を床に広げ、持ってきた長物の正体を見せる。


 それは、へんぴな槍だった。

 しかしこの独特な文様が刻まれているこの槍には、どこか見覚えが――。


 ――ぁえ?


「これぞ、あの女神に唯一傷をつけたとされる、世に伝わる伝説の種族にして伝説の勇士、ゴブリンの()()()()()()です」


 思考が止まる。瞳孔がかっぴらいているのが自分でも分かる。

 ……心が熱を帯びてくる。


「一見この槍はどこか古ぼけた普通の槍に見えるかもしれませんが、この槍には不思議な効果があるのです」


 コロン姫はおもむろに指を上げて、ライターのように火を一瞬で生み出す。すると槍の刃先にも同じように、いやむしろより激しい勢いの火が展開されて、くるまれていた布を燃やしだした。


「あやべ――。ゴホン。マロン。火を消して」


「あ、は、はいお姉さま」 慌てて別の布をもってぱんぱんと火を消すマロン。


「コホン。このように、女神の血が一度ついたこの槍は、周囲の魔法に強く感応します。もちろん槍先にのみ魔法を集中したら、これ以上に爆発的な威力で魔法が展開されるでしょう」


 ――女神の血は純粋な魔法の触媒になるからです。それこそ彼ら魔族、ピグモン族が短い期間で栄えた理由でしょう。彼らはその魔力でこの地をのさぼり、支配しているのです――。


 暗い顔で意気消沈してゆきながら説明を終える姫様。


 その意気消沈ぶりに連動するかのように、眼の前で燃えていた火は完全に消えた。


 多少の煙が彼女の半身を隠す中、気を取り直したコロン姫はこちらに向き直り、改めて彼女らの願いをこちらに告げる。

 

「勇者様方。どうかこの槍を用いて、女神の討伐し、我らの土地を取り戻してはくれませぬか」


 さて、僕たちはどうするべきか。

 ――そんなことは説明を受ける前から、腹が決まっている。


 ――――――――――――――――――

 ――――――――――――

 ――――――――

 ――――

 ――


 

 僕たちは、()()()()()先ほどいた建物を後にする。


 周囲を見ると、農作物を耕すための畑と、住居のためのテントがちらほらと展開されているのが見える。


 それらの畑を見ると、見たことのない七色のネギのような草が生えた農作物もあるが、ほかは根菜やら麦などの普通の食料用の畑のようだ。


 ……あまり豊作のようには見えない。


 先ほど僕たちが召喚された建物を除けば、どこか急造で作られたかのような印象を受ける。魔族に村を追われて、慌てて出奔してきたのだろうか。

 

 ……身に着けている服もそうだったが、このエルフたちは思いのほか貧しく、質素な暮らしをしているのかもしれない。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。


「マロンさん、その女神たちがいる場所の方角は?」


「ここより東に三日ほど向かった場所にあります」 ……遠い。いや近いのか? 移動手段のない中、徒歩で三日とはどれぐらいの距離だろうか。えーっと、一時間で4㎞歩けるから、うーんざっとぉ――わからん。


「じゃあ早速、出発しますか」 大丈夫。行けば分かるさ。


「らじゃー」「はい。どうぞこれからよろしくお願いします!」 気の無い返事と、気持ちのいい返事が返ってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ