Ch2.1 エルフの願いごと(1)
「おお、勇者様方! どうか我らをお救いください! あの邪悪な女神に仕える悪しき醜い魔族の手から、我らをお助けくださいな!」
「――アキヒト、くん。どーする?」
「……うーん」
そう。僕は今名前を呼ばれた。この世界を一緒に旅するパートナーから。
後ろをちらりと見やると、現実と変わらぬ美しさを持った銀髪の女性がそこにいる。服はデフォルトの冒険者用の服ではなく、僕と同じ白を基調としたデザイン性の高い近代的な全身着用スーツを身にまとっている。
転入生のケイさんだ。
今回のチャプター2からは、ソロプレイではなく、仲間と協力してのゲームプレイとなる。しかしまだ全員のプレイヤーと一斉にプレイするのではなく、今回は2人プレイ。
最近までこのゲームを再開するかどうかを迷っていた僕は、カケルからこのパートナーの誘いを一度断ってしまっていた。そのためカケルは友人であるエミリと組むことになり、僕はパートナー不在のままチャプター2のリリース日を迎えた。
そうして、ランダムな人と組むのかと、と少し複雑な気持ちでいた僕は、偶然にもまだパートナーを見つけていなかった転入生から集会所で話しかけられコンビを組むことになったのだ。
まあ、正直うれしいはうれしい。エミリからは歯ぎしりされながらにらまれたけど。
ただまだこの人の性格はつかみかねている。一体、どうなることやら。
「――勇者様方?」 しまった。ぼーっとしてた。
「……あ。えーっと。はい。喜んで?」
……うん、どうせ強制イベントだろうし、適当に請け負っちゃおう。
「……アキヒトくん、それは――」
「なんと素晴らしい! ……では勇者様。とっても心苦しいのですが、先ほどの願いを聞き届けて頂ける前に、ひとつ、本当に勇者様かどうか確かめさせていただいてもよろしいかしら?」
「……え?」 「サモン/コール:――」
「――オルガタートル」
――亀だ。暗闇を凝縮したかのようなエフェクトが現れ、虚空から亀が出現した。それも相撲力士のような大きさで、なぜか甲羅の部分から砲身が何丁も突き出ている。
……とても物騒な見た目ではないか。まさかとは思うが、コイツを――。
「――討伐、していただけますか? 勇者様方なら簡単でしょう?」
おいおい! 美人だからって、許されるレベルじゃねーぞ!