Ch2.07 けじめ(1)
「――エルフはいつ出「次のチャプターで出るわ。はい次の質問」
エミリのエルフ狂いはもう開発側にもバレてる様子。狂喜の笑みを浮かべるエミリの次に、カケルが質問する。
「……他のアドバンススキルの入手条件はなんですか?」
「あら。ホットな良い質問ね」
複合スキル。そう、最近発表されたというチャプター2での新要素。
2つの初期スキルの習熟度を極めると、習得できる可能性が増えるというスキル。正直それ以上は僕も知らない。
「瞬間完全防御に、好感度表示と分身魔法。どれも面白そうなスキルなんですが、オレはそれに対応するスキルはどれも持っていないので」
「そうね。あなたの持っている戦闘技能向上は一番人気だったから、あえてそれに対応する上級スキルは伏せておいたわ。そういうのを見つけるの、楽しいでしょう?」
ゲーマー心をくすぐる発言だ。「……確かに、そうですね」 カケルも納得した様子。
「でも答えてあげる。そうね。戦闘技能向上から派生するであろうスキルは今のところ2つ。予測演算と、不動切り。……条件も知りたい?」
「――いえ、それは後の楽しみに取っておきます」
よろしい、とその答えに満足気な所長。
「ただ、付け加えておきたいのが、現時点の複合スキルはただの一例に過ぎないっていうこと。……そこに例外のユニークスキルを習得した子もいるしね。あともし対応するアドバンススキルがシステム的に無かったとしても応用は聞くし、他のアドバンススキル相当の恩恵は受けられるはずよ」
だから可能性は無限大、らしいわよ。受け売りだけど。
……一体だれだろうね、そんなセリフを言うのは。ガハハと声が聞こえてきそうだ。
「はい、じゃあ最後に今回の立役者、アキヒト君。質問は?」
はよ、はよと質問を急かす所長。底意地が悪そうなのは今回判明したけど、相変わらず可愛らしいのでどこか憎めない。――質問かあ。
「…………。所長、その質問権、取っておいてもいいですか?」
はあ!? あんたバカァ? と聞こえてきそうなほど表情を崩す所長。いや、すんませんって。
だって、今はI.F.ワールド続けるかどうかはわからないのですもの。
――――――――――――――――――
帰り道、僕は一人でトボトボと歩いている。
流石にあの騒動のあとに遊園地には行くのは断念した。あれだけの珍道中だったし、僕はもう最高に疲れて切っている。
しかし、ある1つの埋めがたい感情が、僕の胸中に生まれてしまった。
どこか熱く心が燃えている。正直この感情がなんなのか、僕には完全に理解できないし、むしろ意識するのが怖い。
それは後悔や怒りも差し置いて、僕の心を温かくも大きく占領している。
一体、これはなんなんだろう。
僕は、この感情を受け入れてもいいのだろうか。
「――アキヒト君」
「……ケイさん」
今日の騒動を僕たちにもたらした張本人。悪ぶれもなく進行方向上の自販機の前に立っている。先回りしてきたのか?
「今日は、ごめんね? 本当ならもっと早く手を出そうと思ってたんだけど……」
ほう、言い訳かい。いいだろう、聞かせてもらおうじゃないか。
「――カッコ、よかったから。全部任せちゃった」
……。え?
「かっこよかったよ。キミ。あんなに、動けるとは、思いもしなかった。どこかで訓練でも受けてたの?」
……顔が熱い。かっこいい、だなんて。ま、まさかそんなチャチな言葉で。
「いや、く、訓練なんて受けたことないよ」 ま、まずい。
「そうなの? それは、スゴイね。ぜひ色々と、参考にしたいな」
まずい。転入生がキラキラと輝いて見えてくる。
「……そしたら、今度は、二人で遊びにいこっか」
この転入生、危険だ。僕の心の導火線に火をつけるつもりか! ほ、惚れてまうやろー!