Ch3.9 イマジンとファンタジーワールド(3)
友人の声が遠くで聞こえる。
「――さあ、一斉攻撃よ!」
「地烈斬!」
「ギャリックキャノン!」
「空蝉落とし」
「炎獄波!」
「氷結砲!」
揺蕩う。
思考が定まらない。
現実味がない。まるで夢の中をさまよっているようだ。
景色が変わっていく。
暗い地の底から、我が好む眩い闘気溢れる場所へ。
僕の体が僕の意思と関係なく高速で動いていく。
揺蕩う。
『「――水鏡」』
迫りくる何かを、全て弾き返す。
弾き返した先だろうか、多くの悲鳴がそこかしこに聞こえてくる。
フハハ。
「――! ……そこで何してくれてんのよ。アキヒト」
魔法の発動をきっかけに、意識が沈んでいく。
友人の声が聞こえなくなっていく。
代わりに、はっきりと――。
『アキヒト? 誰じゃソイツは。我の名はウンディーネ。……なるほど。ノームめ、悪趣味なことをする』
身体の節々を触り自らの状態を認識する。
……いや。もっと悪趣味なのは――。
『『『――サラマンダー、ノーム、そして君。戦争中の我らがここに仲よく勢揃いしていること、だろう?』』』
となりをいつの間にか気持ちの悪い顔ぶれが揃っていた。
『ふん。してやったり、という顔じゃな。……というかお主、多いな』
『『『ああー! 気づいてくれたぁ? そうなんだよ大変だったのさあ! この波乱万丈な我ちゃんのハッキング劇場、君にも見せたかったよ~』』』
『興味ないわ。して、あのうずくまっているヤツはなんて様じゃ』
少し離れて、徐々に闘気をしぼませていっているサラマンダーの姿が見て取れる。
すでに原初の姿形に大きさ共々近づいてしまっている。
我が着く前にすでに大分削られていたようだ。
片膝をつき、なんとも情けない。
『……あー、だってまだ意識を目覚めさせていないからねぇ。寝ぼけまなこで戦っていたようなものだよ? 攻撃だって、ただ煩わしいから寝返りをうっていたような程度の反撃だったし』
『そうか』
『そうそう、じゃあ今からサラマンダーの意思も呼び起こして異世界人たちを――』
『要らん』
――首を断ち切り、浄火する。
水龍を地面から召喚し、サラマンダーの全身を飲み込ませた。
同時に空中に渦巻きを起こし、気持ちの悪い顔ぶれをまとめて洗浄する。
『――ッ』
『う、はは? 何してくれちゃってんの!? 水の堕女神!』
『キサマの計画には従わん。その底意地の悪さ、移ったら叶わんからな。
……代わりに我は、遊ぶ。貧弱だが、久しぶりに動かせる体じゃ。
――異世界人ともども、まとめてかかってこい。ここは……なんというのじゃ? 闘争の場、なのじゃろう?』