Ch3.9 イマジンとファンタジーワールド(2)
「――っああああああああ!」
迫りくる脅威。
友人が間一髪でそれを受け止める。
一瞬の静寂と均衡。
そして。
衝撃音が、遅れてやってくる。
空気が超高速で振動し、熱波が全身の皮膚を灼く。
それでも。
直撃を受け止めたカケルはそれでも態勢を崩さない。
強く、重く脅威を押しとどめる。
「――震脚、斬」
それどころか。
カケルは前へ踏み込み、刀を振り抜いた。
――腕、肩、そして胸部。
連鎖的に炎の巨体を、その振り抜きは断ち斬った。
「ナイス英雄」
「……」
――ずいぶんくすんだ色になったみたいけど。
それだけであなたの行ってきたすべての行いを否定させはしないわ。
「後は、私の仕事ね」
断ち切られた断面が、メラメラと燃え盛り、癒着しようとしているのを阻止する。
がっしりと掴み――。
――からのリリース。
「――やっぱりね」
おもわず微笑がこぼれる。
音速で投げ飛ばした胸部から上部分の身体パーツは、瞬きする間もなく再生していく。
しかし先ほどよりも、膨れ上がった体積が減っている。
――炎の精霊は、斬った端からくっつけさせなければ攻略できる。
スキル:カリスマ、発動。
「負け犬ども! 復讐のチャンスよ! 私がいれば勝てる。……片っ端から、削っていきなさい!」
とても単純な指示だが――。
ギラリ、と闘争者たちの目の色が変わる。
すでに提示されたお手本。
それをなぞることなど簡単。むしろ自分こそが一番上手に闘ってみせよう。
そんな、ありきたりな遊び心が彼らの闘争心に入り込む。
「――ふふ。なんて単純な奴らなの。……でもそうね、単純さとは強さよ」
さあそこの物言わぬ精霊とやら。
その暴力を味わいなさい。