Ch3.9 イマジンとファンタジーワールド(1)
3日目。
世界が変遷していくのを目にする。
『散らばられても面倒だし、まずは1つにまとめちゃうおうか』
一仕事終えた青髪のノームは、世界を編集していく。
『火の世界、水の世界、そして土の世界を全て削除。参加者の位置情報を全て風の世界へ転送、と』
……全く。今回は予想以上に精霊が多すぎる。
観察者という立場から、今回は手を出せないが――。
「現代人と幻想世界、か。……ただのシャレのつもりだったんだが、まさかこんなにも早く目にすることとなるとはな」
まがい物から、より幻想的に、本物に。
世界が変遷していく。
――――――
人が死ぬ様は見慣れている。
ただ、状況が違う。
暗殺者は奪われることには慣れていない。
「……全員仲良く復活か」
景色は違う。砂漠から緑豊かな平原へ。
しかし続々と復活していく周りの面子は変わらない。
ということは全員等しく殺されたということ。
あの巨大な炎の化物に。
その巨大さはもはや災害級。
緑の世界を焦がし、浸食していく炎の大嵐。
いまやその全貌は天まで届き、計り知れない大きさとなっている。
「……ハ」
周りの闘争者の絶望に染まった顔が、なおも明るく照らされる。
またも私たちは無惨に殺されるのか、と。
そんなみじめな闘争者たちを、龍人は静かに睥睨し、踏み潰すべく片足をあげた。
常識的にあんなものは殺せない。
そうだ。
これは私の仕事の範疇ではない。
「……英雄よ。私をこれ以上働かせるな」
そろそろ交代の時間だ。
そう割れた内側へと語りかけても反応はいまだない。
全く。意固地なやつだ。
暗殺者の言葉は聞かないと?
……ハ。ならばこそ。
――ひときわとどろく大轟音が地面を揺らす。
「そこのこっ恥ずかしい英雄! 待ちに待った、仕事の時間よ! ……羞恥も内省も後悔も、全て後にしなさい。今は――、
私を、助けて!」
突如として飛び出し、炎の巨人と組み合うは脚の長い巨人。
頭上には友人。
その澄んだ轟音が、――友人の言葉が脳を反響する。
――。
……。
聞きたい言葉は聞けたか?
そうだ。
これは私の仕事の範疇ではない。
……。
ああこれは。
英雄の仕事だ。
――再び轟音。
組み合った姿勢から、炎の化身が全身から大爆発を起こす。
吹き飛ばされるゴーレム。
守り手を失った友人は一人空中に取り残される。
地上から迫りくる竜神の拳。
そうして――。
飛び立つは健脚。
空に踏みこみ、空想のようにフワフワと。
昇れ、昇れ。脚よ――心よ――そのまま湧き続けてくれ。
人助けをするために。
「――スキル:変化、発動」
この軽さは駆けつけるために。
そして。
この重さは受け止めるために。
「――っああああああああ!」
迫りくる竜神の拳を次元刀で受け止める。
――思い出せ。
自らの悪事を。返り血を。惨劇を。
そのヘドロのような体験で心を満たせ。
落ちろ。落ちろ。心を固く、重く、質量を増せ。
人助けをするために。