Ch3.8 Hack完了(4)
『――あの死ぬ間際の一瞬で作戦を以心伝心して、実行に移すなんてよくやるなあ』
断ち切られた青髪の半身は、地面に横たわりながら今だ元気そうに話を続ける。
『その前の次元魔法も、まだ荒いけど見事な物だったし……、ほんとすごいねアキ君。異世界人だとは思えないよ』
――何故だろうか。
『ショチョウも見事なもんだね。音速のレールガンをパリィしたって言うのかい? そしてそのまま変身魔法で身をくらますなんて、全くもって器用なもんだ!』
――怖気が止まらない。
「……口をパクパクして、相変わらず何を言っているのか分からないけど。……バグよねこの敵性生物。この場所といい、一体なんだっていうのよ」
気味が悪いわ、と所長は辺りを見回す。
見回してしまった。
『サモン/コール:……ヒューマン:タイプノーム。言ったろう? ハッキングは完了したって』
黒い次元の裂けめから、先ほど斬られた青髪の青年が五体満足な状態で現れ出ていく。
それも同時に何十体もの数が。
増殖バグとでも言おうか。
同じ姿の青髪の青年たちはひっきりなしに出現し続けていく。
これじゃ――。
『攻撃を避けるスペースもない、だろう? ……さて終了だ』
「――Shit」
そうして。
所長は大波に飲み込まれるように、断末魔を上げる間もなく姿を消していった。
同時に僕の意識も閉じていく。
スリープモードに移行していく。
こうして。
僕と所長の冒険は終了していく。
『しかしよくもやってくれたねアキ君。キミの以心伝心のせいで、ショチョウちゃん全く我ちゃんのこれが聞こえなくなってしまった。1つ計画がとん挫してしまったよ。それに……。何故かウンディーネの姿が感じ取れない。運命予測的にすでに顕れてるはずなんだけど……。……ああそうだ』
アキ君。キミ、確か魔法耐性が高かったよね。なら依代に――。
――プツンと。
そこで僕の意識の電源は完全に落ちた。